じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 130722(月)選択のパラドックスと選択の技法(3)満足者(satisficer)と追求者(maximizer)の区別(3)追求者(maximizer)の行動特徴(1) 昨日の日記では、Schwartzらが2002年に発表した「マキシマイゼーション尺度」(Journal of Personality and Social Psychology, 83, 1178-1197.)を取り上げた。また、磯部ほか(2008)の日本語短縮版の質問項目の一部を紹介した。
であるからして、上掲の日本語短縮版において、追求者尺度で高得点をとったからといって、その人が実際に、「何かを選ぶ時はいつでも,もし違うものを選んだら,どういう結果になるかという情報を集めようとする」という行動をとるかどうかは分からないし、「商品を選ぶ時,二番目に気に入ったもので満足したことはない」人なのかどうかも分からない。また、元のSchwartz et al.(2002)にあった、「一番の映画,一番の歌手,一番の俳優,一番の小説など,何でもランク付けするのが大好きだ.」という質問項目は、磯部ほか(2008)の調査では、いずれの因子にも高い負荷を示さなかったということであったが、だからといって、追求者が、ランク付けを好まないというわけでもない[※]。要するに、質問紙というのは、対象者に、一連の言語的刺激を提示し、統計的手法によって、同じ回答傾向を示す質問項目群にカテゴライズし、その合計得点の高低によって、人間の何らかの行動傾向(もしくは、ある種の状態)を測ろうとする手法であって、それ以上でもそれ以下でもない。残念ながら、卒論研究などでは、「○○尺度」を実施したあと、個別の質問項目の意味内容をそのまま、回答者の行動特徴にすり替えて考察をするという間違いをおかしているケースが見受けられる。別の例でもう一度繰り返せば、例えば「新聞の社説を毎日は読まない」という質問は、自分をよく見せかけようとしているかどうかを測る尺度の項目として採用されているが、それにNOと答えた人が実際に毎日、社説を読んでいるかどうかは別問題である。 [※追記]例えば追求者の68%、そうでない人の66%がYESと答えれば、天井効果によって質問項目自体の弁別力が無くなるので除外される可能性がある。 ではどうすればよいか。オーソドックスな心理学であれば、上掲の「マキシマイゼーション尺度」で高得点をとった人たちと、低得点をとった人たちに対して、詳細な行動観察や、面接などの手法による十分な聞き取りを行う。その上で、共通して見られる行動特徴が確認できれば、追求者(maximizer)、あるいは満足者(satisficer)の特徴として改めて確認できることになる。 次回に続く。 |