じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡大七不思議(←長谷川が勝手に選定)の1つの「落ちないアメリカフウ(モミジバフウ)」が今年も目立ってきた。
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2016年12月6日(火)



【思ったこと】
161206(火)関係反応についての講義メモ(24)手続的定義と機能的定義(1)

 昨日の続き。

 佐藤(2007)の最後の部分では、弁別刺激の手続的定義と機能的定義について論じられていた。【この論文では「手続的」ではなく「手続き的」というように送り仮名がつけられていたので原文のまま引用。】
  • 手続き的定義:A stimulus in the presence of which a response is reinforced and in the absence of which it goes unreinforced(Ferster and Skinner, 1957, p.726).
  • 機能的定義:A stimulus that controls the performance of instrumental behavior because is signals the availability (or non availability)of reinforcement (Domjan, 2003, p.250).
  • 心理学において刺激という概念を用いる際には、物理的刺激と機能的刺激とを明確に区別しなければならない。物理的刺激とは客観的に測定することのできる刺激であり、一方、機能的刺激とは有機体の行動の何らかの側面を制御することのできる刺激である。機能的刺激は、有機体の行動に対する効果をみることなしには特定することはできない。
  • 正と負の手続き的弁別刺激にはS+とS−、正と負の機能的弁別刺激にはSとSΔという記号を用いることによって、この区別を明示させねばならない。
  • 行動分析学の目標は、行動の制御変数を同定することであり、弁別刺激は主要な制御変数の一つであるから、機能的弁別刺激がより重要であることは言を俟たないであろう。

 以上の主張に基づき、佐藤(2007、7頁)では最終的に弁別刺激を以下のように定義している。
弁別刺激とは、オペラント行動の自発を制御する先行刺激である(Discriminative stimulus is an antecedent stimulus that controls the emission of operant behavior.)。

 なお、手続的定義については、杉山ほか(1998、186〜187頁)でも取り上げられている。佐藤(2007)でも杉山ほか(1998)のいずれにおいても、

Reynolds,G.S. (1961). Attention in the pigeon. Journal of THe Experimental Analysis of Behavior, 4,203-208.

が引用されているが、「手続的定義」と「機能的定義」ではなく、「手続的定義」と「制御変数的定義」として区別されているが、「制御変数的定義」と「機能的定義」はここで取り上げられている限りにおいてはほぼ同義といってよいだろう。
 杉山ほか(1998、186〜187頁)の展開編では、
我々の弁別刺激の定義は、a)その刺激がある時には b)特定の行動が強化されたり弱化され c)その刺激がない時 には d)その行動が強化も弱化もされない刺激、だったよね。ところがここでいう「刺激」をどう考えるかには少なくとも2つの違う見方ができる。1つは客観的存在としての刺激−−物理的刺激だよね。そしてもう1つは、分析の対象となっているある個体の行動を制御している刺激−−機能的刺激だ。弁別刺激を物理的刺激と考えて定義すれば手続的定義になるし、機能的刺激と考えて定義すれば制御変数的定義になる。行動分析家の多くは、弁別刺激を手続的に定義しているし、我々の定義もどちらかというと手続的定義だが、制御変数としての定義の方も忘れてはいけない。そしてどっちの意味で弁別刺激という言葉を使っているのかを常にはっきりさせることだ。
と述べていて、どちらが重要であるとは主張されていないが、佐藤(2007)では上掲のように、「弁別刺激は主要な制御変数の一つであるから、機能的弁別刺激がより重要であることは言を俟たないであろう。」と、機能的定義重視の立場が表明されている。なお、私自身は、電子版教科書第1章1.6.及び第3章3.7のところで「制御変数的定義」の重要性を強調する立場をとっている。

 次回に続く。