Copyright(C)長谷川芳典 |
【連載】太陽系の基本知識を更新する(6)金星(3) 昨日に続いて、NHK「コズミックフロント: ●「冒険者たちが語る 太陽系のヒミツ」 についての備忘録と感想。引き続き、金星を取り上げる。 放送の後半では、金星のスーパーローテーションについて、さらに詳しい解説がおこなわれた。 アメリカの探査計画がなかなか進まないなか、2005年11月にヨーロッパがビーナス・エクスプレスと名づけられた金星用の気象衛星を打ち上げられた。およそ5カ月後、ビーナス・エクスプレスはスーパーローテーションの複雑な動きや不思議な渦を観測した。 2010年5月に打ち上げられた「あかつき」は、金星の大気の様子を時々刻々と観測することに特化した探査機であり、紫外線カメラ、中間赤外線カメラ、近赤外線カメラ、雷カメラを装備し、大気の動きをいろいろな角度から観測した。もっともこの計画はメインエンジンの噴射直後にトラブルに見舞われた。しかしウィキペディアにも記されているように、5年後、金星と探査機が再び接近するタイミングを狙って姿勢制御エンジンで周回軌道への投入に成功。その後の再度の軌道修正により、2000日に及ぶ観測が可能となった。 あかつきの観測データから、金星のスーパーローテーションには熱潮汐波が重要な役割を果たしていることが明らかになった。熱潮汐波というのは、太陽の光で温められた金星の雲がしだいに膨張し、自転の向きとは逆の方向に移動する。その時の動きによって、自転と同じ向きにスーパーローテーションが生じるというような仕組みであった。あかつきは、一部のカメラが故障したものの、この放送がおこなわれた時点ではまだ観測を続けているということであった。 放送ではこのほか、金星の大気にホスフィンが観測されたこと【8月7日に関連記事あり】、金星のテラフォーミングの研究などが紹介された。 さて、今回の放送に関連して、私が子どもの頃に読んだSF冒険小説をいくつか探してみた。 まずは、『宇宙船アルゴー号の冒険』(岩崎書店、1960)であり、金星を初めて訪れたアルゴー号の冒険を綴ったものであることは覚えているのだが、小学校の図書室から借りて読んだだけで手元には原本が無かったため内容は殆ど忘れてしまった。 もう一冊は『消えた惑星の謎』(岩崎書店、1962)であり、こちらのほうは手元にあるので全文を閲覧することができる。ここで「消えた惑星」というのは金星ではなく、火星と木星のあいだにかつて存在したとされる第五惑星のこと。そこに住んでいたファエトン人の生き残りが金星に移り住み、爬虫類のような姿の金星人と暮らしたものの次第に高齢化し、いくつかの遺跡や記録映像を残して消え去ったというような話であった。 いまの子どもたちが読んでも、ストーリー自体は十分に面白いと思うのだが、舞台となった金星の真実の姿が明らかになったことで、100%「空想の小説」となってしまったことは少々残念。なお、岩崎書店発行の少年少女宇宙科学冒険全集は、いずれ著作権が消滅した時点で無料で閲覧できるようになるはずだが、残念ながら私が生きている間には消滅しそうもない。ネット上のオンライン古書販売では1冊4000円〜10000円程度で取引されているようだ。 次回に続く。 |