【連載】英雄たちの選択(4)徳川光圀(1)
昨日に続いて、最近視聴したNHK-BS:
●英雄たちの選択 日本の運命を決めた「選択」に迫る!
についてのメモと感想。いずれも録画・再生で視ているため初回放送日が相当古いものも含まれている。
- 【2024年4月17日初回放送】黄門さまの野望!? 〜徳川光圀・国史編さんプロジェクト〜
水戸黄門として知られる徳川光圀は、ドラマでは諸国漫遊で知られているが、実在の光圀は人生の大半を江戸と水戸藩で過ごしており、そもそも全国行脚はしていない【但し、変装セットがあったという記述もあり、お忍びの小規模な旅行をしていた可能性はあるらしい】。また、諸大名200人以上の評価を記した『土芥寇讎記』では、光圀は文武両道で「身ヲ正シ道ヲ以政道ヲ行ヒ仁勇セ専家民ニ施シ」と好評価されたいっぽう、「女色ニ耽リ給ヒ潜ニ悪所ヘ通ヒ且ツ又常ニ酒宴遊興甚シ」という悪評価も併記されているという。
今回の放送では光圀による国史編さんプロジェクトに焦点があてられた。神武天皇から南北朝合一まで、年代ごとではなく、天皇や人物ごとに記した人の歴史での通史を我が国で初めて作ろうとした。磯田さんによれば、この偉業は、「日本の『歴史』と『時間』の支配者になる」という光圀の野望を反映したものであるという。
ここまでのところで一言感想を述べさせていただくが、私は大学入試【←共通一次より前の一期校・二期校の時代】の受験科目として日本史を選択していたが、単に合格するための手段として選んだだけであり、受験時に持参した日本史の参考書は試験終了直後にビリビリに破って宿泊先のゴミ箱に廃棄していた。今回の「人の歴史」重視ということで思うのは、もし日本史や世界史がもっと人物本位、つまり「○○という時代には××という人物が登場し△△を達成した」というような個人の歴史として綴られていたら、多少なりとも興味を持てたのではないかと思われる。じっさい、個人に焦点をあてた放送であるからこそ、『英雄たちの選択』を楽しく視聴させていただいているとも言える。
もちろん、歴史というのは個々人の活躍だけでは説明できないところがあり、長い目で見れば個々人とは無関係の環境要因や生産技術に関わる歴史的必然もあるだろうし、バタフライエフェクトが作用することもあるの。歴史小説を何冊集めても歴史を学んだことにはならないとは思うが。
放送では、国史編さん紹介の前に、光圀が行ったこととして、
- 藩内の寺院改革。1000を越える寺院を破却。神社については神仏分離を徹底させた上で保護。
- 長崎から『阿蘭陀茄子(トマト?)』や『ジャガタラ蜜柑 (ザボン)』を取り寄せ藩内での栽培を試みる。
- 禁教令にもかかわらずカトリック教会の教理本を取り寄せる。
- 寝る時にはパジャマに似たオランダ装束を着用。
- 徳川綱吉の生類憐れみの令に反発し、鷹狩りや肉食を続けた。
- 巨大な船の建造が禁じられていたにもかかわらず快風丸を建造し蝦夷地を探検。
- 家庭用の医学書『救民妙薬』の作成を命じる。「ネズミの小便が目に入った時はネコのヨダレがいい」といった医学的根拠の無いものも多いらしいが、当時の医者が高額な薬を売りつけるなか、簡単に手に入る生薬などを紹介した点では意義があった。
さて本題の国史編さんプロジェクトであるが、その目的は「事宜書勧懲自見(事に拠りて直書すれば勧懲自ら見はる)」、すなわち、「過去を明らかにすることではなく将来の見通しを立て、将来にどう役立てるか」というところにあったという。
上記でも言及したが、光圀が目ざしたのは「紀伝体」による国史であった。
- 編年体:歴史を年代順に記す形式
- 紀伝体:人物の伝記を中心に記す形式
放送によれば、紀伝体はアナログで主観が入りやすい。いっぽうスタジオゲストの冲方丁さんからは、
- 編年体は小説の資料としては最も使いづらい。理由は“なぜ(Why?)”が無いから。
- 下手をすると“Who?”もない。どこから歴史的な動きのうねりがきたのか分からないと指摘された。
不定期ながら、次回に続く。
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