じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



07月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

クリックで全体表示。



 【インドネシアその11】おにぎりは182円。
 ジャカルタの空港(国内線)で売られていた「Onigiri」。1個16000ルピアなので1ルピア=0.0114円で計算すると182円となる。日本のコンビニおにぎりとほぼ同価格か。

2025年07月03日(木)



【連載】チコちゃんに叱られる! 「赤ちゃんが生まれてすぐに泣く」ことについての胡散臭い説明

 昨日に続いて、6月27日(金)に初回放送【但し岡山地域は別番組】された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. なぜロケットを打ち上げるときたくさん煙が出る?
  2. グリンピースってなに?
  3. 【罰ゲーム】LEDは何の略?
  4. なぜ赤ちゃんは生まれてすぐに泣く?
という4つの話題のうち、最後の4.について考察する。

 放送によれば、赤ちゃんが生まれてすぐに泣くのは「二足歩行になったから」が正解であると説明された。

 この話題の解説者は霊長類や人類の進化に詳しい山極壽一さん(総合地球環境学研究所)であった。ちなみに山極さんは第26代の京大総長をつとめておられたが2020年9月に任期満了。現在のご所属は総合地球環境学研究所となっているようだ。山極さん&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 人間の赤ちゃんは生まれてすぐに泣くが、動物の観点から言えばこれは危険な行為。大きな声で泣くと肉食獣に見つかってしまう。
  2. 人間以外の動物は出産時には泣かない。放送では京都市立動物園で飼育されているいくつかの動物の出産シーンが紹介された。
    • キリン→泣かない
    • バク→肺呼吸に切り替わる際に咳き込むことはある
    • 京都市動物園で飼育されている哺乳類36種のすべてが誕生時には泣かない。
    • ゴリラも泣かない。
  3. 人間の赤ちゃんが泣くのは、お母さんから離されるため精一杯自己主張する。ゴリラ、チンパンジー、オランウータンは出産してからずっと赤ちゃんを抱いているが、人間の出産の場合は時間がかかる上にふつう他者の手を借りて出産するためお母さんはすぐには赤ちゃんを抱っこできない。そこで赤ちゃんは抱っこしてとアピールしている。
  4. およそ700万年前、人類の祖先は直立二足歩行になった。それにより骨盤が皿状に変化し、産道が狭くなり、第三者の助けがないと出産できなくなった。
  5. 人類が難産になった理由はもう1つ、脳が大きくなり始めたことにある。人類の脳の大きさは、約440万年前には300〜350cc、約200万年前には600cc、約40万年前には1400ccというように大きくなり、さらに産道を通るのが難しくなった。
  6. 赤ちゃんが生まれてすぐに大きな声で泣くのは、安全な場所で仲間に手伝ってもらいながら産むという条件が整ったため。
  7. 犬や猫は生まれてすぐに泣くがその理由はよく分かっていない。菊水健史さん(麻布大学)によれば、人間に飼われて安心感があることと、鳴き声を出すことで母親の母性を呼び起こしているが考えられるという。


 ここからは私の感想・考察を述べる。
 まず、私が理解した範囲で山極さんの説を簡単に要約すると、
  1. 人類は二足歩行や脳の発達と引き換えに難産となった。
  2. そのため仲間の助けを借りて出産するようになった。
  3. ほかの類人猿と異なり赤ちゃんは母親にすぐに抱いてもらえなくなったため、大声で泣くことで保護、ぬくもり、授乳を得られるようになった。
というようなことになるかと思う。しかし1.や2.は納得できるものの、3.については、
  • よく泣く赤ちゃんのほうが泣かない赤ちゃんよりも長時間抱っこされ、たくさんのおっぱいをもらえる。
  • 泣かない赤ちゃんは保護されず、おっぱいをもらえず栄養失調、最悪の場合餓死してしまう。
というような厳しい淘汰の条件が働かないと説明にはならないように思う。
 もしツバメのように5〜6個体ほどが同時に生まれてきたのであれば、その中でよく泣く赤ちゃんほどお乳がたくさん貰える(←ツバメの場合は給餌)ので、より早く成長できる可能性があるが、じっさいの人間は1回に1人出産が原則であり、泣いても泣かなくても母親や家族からの注目度はそれほど変わらないように思う。山極さんの説明のうち人間が難産になったという経緯はよく理解できたが、それゆえに人間の赤ちゃんだけが大声で泣くようになったという部分は少々胡散臭い。ま、何か不快な事態に陥った時に情報発信のために泣くということ自体は納得できるが。

 ところで今回の話題では、赤ちゃんが
  1. 生まれた直後に「オギャー」と第一声を上げる。
  2. 生まれた後、毎日繰り返し泣く。
という2つの現象がごっちゃになって説明されていた。
 このうち、「オギャーの第一声」についてはこちら
赤ちゃんの肺はお母さんのお腹の中では肺水という液体で満たされています。生まれてくる時に産道で圧迫された肺は産道の外に出ると再び膨らみます。赤ちゃんは生まれた後に第一呼吸をし始め肺胞に空気が入りますが、その時、肺の中にある水をギューと外側に押し込んで肺の方に吸収し、肺の中を水から空気に置き換える必要があります。
そこで必要なのがオギャーという泣き声です。【以下略】
と説明されていた。
 しかしここで、人間以外の哺乳類の赤ちゃんはなぜオギャーと泣かないのかという新たな疑問が生じる。さっそくChatGPTに以下のような質問をさせていただいた。

人間の赤ちゃんは生まれた時に肺の中の水を空気に置き換えるためにオギャーと泣きます。しかし人間以外の哺乳類の赤ちゃんでも肺水を空気に置き換える必要があるはずです。にも関わらずオギャーと泣かないのはなぜでしょうか?

回答は以下の通り。
とても鋭い疑問です。たしかに人間の赤ちゃんは「オギャー」と大きな声で泣くことが多く、それが肺呼吸の開始を象徴する行動として知られていますが、人間以外の哺乳類の赤ちゃんもまた、肺の中の羊水(肺液)を排出して空気を取り入れる必要があります。それにもかかわらず、「泣かない」ように見えるのはなぜなのか、以下に詳しく解説します。
  • ### ■ 結論から言うと:
    **他の哺乳類の赤ちゃんも肺呼吸を始めるために声を出すことがありますが、必ずしも人間のように大きく泣くわけではありません。**
    また、**泣く以外にも肺を広げる方法があり、種によって異なるメカニズムが使われています。**
  • ### ■ 胎内から出生時の肺の変化(共通の生理現象)
    人間を含む哺乳類では、出生時に以下のような変化が起こります:
    1. **肺内に満たされていた羊水や肺液が排出される**
    2. **初めて空気を吸い込み、肺が膨らむ(膨張)**
    3. **肺の毛細血管が開き、肺でのガス交換が始まる**

    これは人間に限らず、犬や猫、馬、牛などあらゆる哺乳類で共通しています。
  • ### ■ なぜ人間は「泣く」のか?
    人間の赤ちゃんが「泣く(cry)」のは、以下の理由があります:
    • **肺を強く膨らませるための大きな呼吸の一環**
    • **産声によって空気を通し、肺と声帯を一気に活性化させる**
    • **医療的にも「元気に泣く」=「自発呼吸している」ことのサイン**
    つまり、**「泣くこと」自体が肺呼吸開始のメカニズムの一部かつ確認方法として使われている**のです。
  • ### ■ 他の哺乳類ではどうなのか?
    他の哺乳類も呼吸を開始しますが、人間のように「産声」を重視する文化や医学的チェックがないだけで、次のようなことが起こっています:
    • #### ● 音声を出す場合もある:
      * 犬や猫の赤ちゃんも生まれてすぐに「キャン」「ミャー」など小さな鳴き声を出すことがあります。
      * 羊やヤギの子は「メェー」と鳴くことがあります。
      → つまり**泣かないわけではない**のです。人間のように大声で長く泣かないだけです。
  • #### ● 呼吸を始める別の刺激方法:
    • * **母親が舐めることで刺激し、呼吸を促す**
    • * **急激な温度変化や重力刺激で肺呼吸が始まる**
    • * **出産時の圧迫や胎道通過時に肺液が押し出される**

    → 人間のように泣くことに頼らなくても、**他の刺激や動きによって呼吸がスムーズに始まるようになっています。**
  • ### ■ 人間の泣き声が目立つ理由(文化・構造)
    • **喉頭や声帯が発達しており、声が大きく出る**
    • **医療現場では産声が生死や異常の判断基準とされてきた**
    • **社会的にも「泣いて元気」が期待されている**
  • ### ■ まとめ

    | ------ | 人間 | 他の哺乳類 |
    | ------- | -------------- | -------------------- |
    | 肺呼吸の開始 | 泣くことで開始することが多い | 舐める・動く・軽く鳴くなどで開始 |
    | 泣く(鳴く)か | 大声で泣く(産声) | 小さく鳴く場合あり、目立たないことも多い |
    | 医学的意味 | 泣く=正常呼吸開始の証拠 | 人間ほど「泣く」に依存しない | ---
    もし特定の動物についての例(例えば「イルカの赤ちゃんはどうやって呼吸を始めるのか?」など)にご興味があれば、さらに詳しくご紹介できます。


 あと赤ちゃんの泣き声はなぜやかましく不快に感じるのかという疑問が残る。いまの時期、外を歩けばクマゼミなどの猛烈な鳴き声が聞こえるがそれほど不快ではない。またスズムシ、マツムシ、コオロギなど秋の虫の声は心地よく聞こえる。いっぽう電車車内などでの赤ちゃんの泣き声は、少なくとも心地よいとは言えない。おそらく、赤ちゃんの泣き声が不快刺激(嫌子)となるのは、その音を消失させるような行動(=嫌子消失の随伴性、逃避の随伴性)が強化されることが子育ての理にかなっているためであろう。もし赤ちゃんの泣き声がスズムシのように聞こえたとしたら、泣かせっぱなしで誰も構わなくなり赤ちゃんにとっての不快状態がずっと続くことになってしまう。

 次回に続く。