じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 バルコニーで栽培しているホウキギ(コキア)7鉢が順調に育っており、1鉢は玄関先に展示した。今年になって栽培のコツがつかめてきた。
  • 鉢でも花壇でもそうだが、前年と同じ土は使わない。連作障害というより、肥大に必要な栄養素が不足するためと考えられる。
  • 鉢皿に水が溜まるくらいまで灌水したほうが大きく育つ。逆にコンパクトに仕立てるのであれば乾燥気味にする。但し一度でも葉っぱが萎れると復活しない。


2025年07月9日(水)



【連載】サイエンスZERO「ヒトの豊かな声」(その2)声帯膜/鳥の物真似/カラスはなぜ喋らない?

 昨日に続いて、7月6日に初回放送された、NHK・Eテレ『サイエンスZERO』、

のど研究最前線!ヒトの“豊かな声”の秘密

についてのメモと感想。

 昨日の最後のところにメモしたように、ヒトが発する声には、他の動物には見られない特徴がある。
  • 安定した音を長く出し続けられる。
  • 音の高さを繊細にコントロールできる。
では、どうしてそれができるようになったのか?

 西村剛さん(大阪大学)の研究室に保存されているサルの「のど」の標本やCT画像から示されているように、
  • 40種類以上のサルののどには、声帯の上に『声帯膜』という突起が存在する。
  • 『声帯膜』というのは声帯についている膜状のピラピラとした小さい付属物みたいなもの。
  • 他のサルと違って、ヒトには生体膜が無い。
 西村さんとともに声帯膜の機能を調べた徳田功さん(立命館大学)&ナレーションによる説明によれば、
  • シリコンで声帯膜がある模型と無い模型を作って発声を再現する実験を行ったところ、音が出始めた時の空気の強さは、声帯膜が無いヒト型の模型では1.2、声帯膜があるサル型の模型では0.5となり、サル型の模型では半分以下の強さで音を出していた。
  • つまりサルののどは小さな力で大きな声を出す「省エネなのど」であり、森の中で遠く離れた仲間に呼びかけるのに適している。
  • 声帯膜の有無により音の出方がどのように異なるのかコンピュータ上で再現したところ、声帯膜のあるサルのほうが音の乱れがあることが示された。声帯膜と声帯が影響し合い、不規則に振動して雑音になるため。
  • ヒトは声帯膜を失ったことで安定した声を出し続けられるようになった。

 西村さんによれば、(遠方の仲間に合図を送るというような)サルのコミュニケーションにとっては声帯膜があることはメリットとなっている。しかし声が不安定化するので、ヒトのコミュニケーションとしてはあまり良くない。ヒトは安定した声で話せることで、言葉やいろいろな声の表現ができるようになった。ヒトだけが声帯膜を失った理由を探る上で注目しているのはヒトの「子育て」における声のやりとりである。西村さんは、ヒトが声帯膜を失ったのは私たちの脳が大きくなったタイミング、つまり人類の進化の過程で脳が大きくなった時期であったと考えている。脳が大きいと母親の産道を通れないため、脳や体が未成熟な状態で生まれる。そうするとヒトの赤ちゃんは周りの大人が養育してあげないといけない。赤ちゃんに注目してもらいたいとかおとなしくしてほしい時に、おだやかな長く続く子守歌的な声が子どもの養育に役に立ったのではないか、またおだやかな声が生まれるシチュエーションが言葉が生まれた礎ではないかと指摘された。

 放送ではさらに、ヒトの声帯がサルより低い位置にあること、これによりのどの奧の空間が長くなることが指摘された。これによりヒトは空間の形を変えやすくなり、「あいうえお」や「かきくけこ」がスムーズに言えるようになったという。

 放送の終わりのところでは、声を出す機能を失った人に科学の力でもう一度声を取り戻すという研究が紹介された。何らかの事情で人工呼吸器を装着された人は、肺からの空気で自力で声帯を振動させることが困難になる。マウスピース型の装置を口に装着し、スマートフォンや小型のスピーカーと連動し、口の中の動きに対応した音を出せるようになった。スピーカーが口の中にあるため、自分の体から声を出しているという実感も生じる。

 ここからは私の感想・考察を述べる。
 まず今回の放送では声帯膜の有無が声の出し方に違いをもたらした、ということがヒトとサルの比較により解説されていたが、そのことで思い浮かぶのが、ヒトと同じような声を出すことのできる鳥である。他の鳥と異なり、オウムやインコや九官鳥はなぜヒトと同じような声を出せるのだろうか。さっそくChatGPTに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。


  オウムやインコ、九官鳥が**人間の声に似た音を出せる理由**は、以下のような**生理的・認知的な特徴**によります。
  1. 【 発声器官の構造が特殊】
    鳥は人間のような「声帯」を持っていません。その代わりに、「**鳴管(シリンックス)**」という器官を使って発声します。
    • * \*\*シリンックス(鳴管)\*\*は、気管の分かれ目(気管支の起点)にある鳥特有の器官。
    • * 構造が複雑で、人間の声帯よりも**精密で多彩な音の制御**が可能。
    • * 一部の鳥では**左右の気管支で異なる音を同時に出せる**こともある(人間には不可能)。

    そのため、人の声に似た**抑揚や母音・子音のような音**まで再現できるのです。
  2. 【高い模倣能力と知能】
    • * オウムやインコ、九官鳥は**非常に知能が高い鳥類**で、音のパターンを記憶し、模倣する能力があります。
    • * 特に**社会性が高く、仲間とのコミュニケーション**のために音真似を使います。
    • * 人間の声を「仲間の声」だと認識して、模倣するようになります。
  3. 【音の聞き取りと分析能力】
    • * 人間の音声を**細かく聞き分ける聴覚**を持ち、音の特徴を取り出して学習します。
    • * 特に九官鳥(ムクドリ科)は**非常に多様な音声模写が可能**で、環境音や機械音まで真似することがあります。
  4. 【補足:言葉を理解しているわけではない】
    • * たとえ「こんにちは」や「おはよう」としゃべっても、その**意味を理解しているとは限りません**。
    • * ただし、ある言葉が出たときに人間が反応するなどの**条件反射的な学習**はしている可能性があります。
  5. ### ??まとめ
    | 要因 | 内容 |
    | ------- | ------------------- |
    | ?? 発声器官 | 鳴管(シリンックス)で多彩な音を出せる |
    | ?? 知能 | 社会的動物で、模倣能力が高い |
    | ?? 聴覚 | 音を分析・再現する能力に優れている |

 そこでさらに、

声帯は食べ物が気管に誤嚥しないためのフタとして肺魚の時代から進化したと聞いています。鳥の鳴管は全く別の形で進化したのでしょうか?

と質問したところ以下のような回答をいただいた。


 とても鋭いご質問です。はい、**鳥の鳴管(シリンックス)は、声帯とは全く別の起源を持つ独立した発声器官**であり、進化の道筋も異なります。以下、順を追って解説します。
  • ## ?? 声帯とその起源(哺乳類)
    哺乳類の声帯は「**喉頭(こうとう)=ラリンックス**」にあり、\*\*気管の上端(咽頭に近い位置)\*\*にあります。主な進化の流れはこうです:
    • * 原始的な魚類(たとえば肺魚)では、**喉頭周辺の構造**が食道と気道の交差点で進化し、誤嚥を防ぐフタ(喉頭蓋)などの機能を持つようになります。
    • * その部位に筋肉とひだ(=声帯)が発達して、空気の流れで振動して**音を出す発声器官**になります。
    • * これは**咽頭由来の構造**です。

    つまり、声帯は**誤嚥防止機構に由来する副次的な発声装置**といえます。
  • ## ?? 鳥の鳴管(シリンックス)の進化
    一方、**鳥の鳴管(シリンックス)は進化の起源がまったく別**です。
    • * 鳴管は\*\*気管が左右の気管支に分かれる直前(=肺に近い位置)\*\*にあります。
    • * 鳥類の共通祖先である**獣脚類の恐竜**の時点ではすでに、鳴管のような構造が形成されつつあったと考えられています。
    • * 鳴管の構造は、**気管・気管支の壁が変形・進化してできたもので、咽頭や喉頭とは無関係**です。
  • ### ? 進化の特徴
    | 構造 | 起源 | 発声場所 | 機能の発達 |
    | 声帯(哺乳類) | 喉頭由来 | 気管の上部 | 誤嚥防止からの派生 |
    | 鳴管(鳥類) | 気管分岐部 | 気管の下部 | 発声特化(誤嚥とは無関係) |
  • ## ?? なぜ鳥だけが鳴管を持つのか?
    • * 鳥類の祖先である恐竜の一部(獣脚類)では、すでに**肺と気管の構造が複雑化**していたことがわかっています。
    • * 鳴管は恐竜時代後期(白亜紀)には存在していたとされ、実際に**化石(Vegavis)から鳴管の痕跡**が見つかっています。
    • * 鳥は飛翔にともなって呼吸システムも独特に進化し(気嚢など)、その結果として**肺の奥に近い位置で音を出すというスタイルが発達**したと考えられます。
  • ## ?? まとめ
    • * ? \*\*声帯(哺乳類)\*\*は、もともと食物と空気の通り道を切り分けるフタの役割から進化。
    • * ? \*\*鳴管(鳥類)\*\*は、**肺に近い気管分岐部で独自に発声器官として進化**。誤嚥とは無関係。
    • * ?? 両者は**全く別の進化的起源を持つ「収斂進化(convergent evolution)」の例**です。つまり、機能は似ていても進化の道筋は異なる、ということです。


 最後にもう1つ、

知能の高い鳥としてはカラスが挙げられますが、カラスはオウムやインコや九官鳥のようにヒトの声のモノマネができません。なぜでしょうか?

と質問したところ、以下のような回答をいただいた。

とても鋭い視点です。
カラスは知能が非常に高いにもかかわらず、**人の声をオウムや九官鳥のようにリアルに真似ることはできません**。これは主に以下のような**解剖学的・進化的な違い**に起因します。
  1. **鳴管(シリンックス)の構造の違い**
    カラスも鳥類なので当然**鳴管(シリンックス)**を持っていますが、その**構造や可動性**がオウムや九官鳥に比べて**単純で制御の幅が狭い**のです。
    * \*\*オウムやインコ、九官鳥(ムクドリ科)\*\*などは、鳴管の筋肉が非常に発達していて、音の高さ・音色・タイミングを細かく調整できます。
    * \*\*カラス(スズメ目・カラス科)\*\*の鳴管は比較的単純で、再現できる音の種類や音質に限界があります。
    つまり、カラスは**知能的には音真似が可能でも、物理的に精緻な人の声の音質を出すのが難しい**ということです。
  2. **模倣への進化的な圧力がなかった**
    オウム・インコや九官鳥などは、**模倣をコミュニケーション戦略として強く進化させてきた**グループです。
    * これらの鳥は**非常に社会性が高く、声による個体識別や群れ内のコミュニケーション**が重要な役割を持っています。
    * 仲間の声を真似て関係性を築いたり、音声で状況に反応したりすることが、**生存戦略の一部**となっています。
    * 人間と一緒に暮らす環境では、その\*\*「社会的模倣能力」が人間の声の真似へと拡張\*\*されました。
    一方で、カラスは確かに社会性の高い鳥ですが、**複雑な音声模倣を必要とする生態的圧力が比較的少なかった**と考えられています。カラスは**道具の使用や空間記憶など、他の方向に知能を進化させてきた**のです。
  3. **音真似はできるが限界がある**
    実は、**カラスも簡単な音声模倣はできます**。特に人に飼われている個体では、「こんにちは」や笑い声、電子音などを**それらしく真似る**ことが観察されています。
    * ただしその声は、九官鳥のようにクリアな人間の声というよりは、「カラスっぽいしゃがれ声の人間語」です。
    * これはやはり**鳴管の性能や口腔構造が人間の声の再現に最適化されていない**ためです。
  4. ## ?? まとめ
    | 観点 | オウム・インコ・九官鳥 | カラス |
    | 鳴管の構造 | 高度・柔軟 | 単純・制限あり |
    | 模倣の進化 | 強く発達 | 弱め |
    | 知能 | 高い(音模倣型) | 高い(道具・記憶型) |
    | 人間の声真似 | 明瞭に可能 | 一部可能だが不明瞭 |
  5. ### ??補足:模倣能力 ≠ 知能の高さ
    音声模倣は知能の一形態ですが、**知能全体を代表するものではありません**。 カラスは**道具を使う、問題を解決する、死者を悼むような行動をする**など、他の面で突出した認知能力を持っています。

 なおChatGPTによれば、「人の声に近いモノマネをする種ベスト5」は1位から順番に、九官鳥、ヨウム(グレーインコ)、オオバタン(モモイロインコ)、セキセイインコ、ミヤマオウム(カカポ)またはヒインコであるという。

 元の話題に戻るが、今回の放送ではもっぱら発声器官からみた「豊かな声」について解説されたが、声が多様化し音声言語として進化していくためには、聴覚機能や言語処理能力の進化も不可欠。じっさい、オウムにいくら話しかけても会話としては成立しない【ヨウムのアレックスの研究などもあるにはあるが再現性がイマイチ】。