じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] ヒヤシンスの鉢植え。水栽培に比べると花つきが良いようだ。


3月10日(金)

【思ったこと】
_00310(木)[心理]キャッチフレーズを読み解く(3):戦後に押しつけられたもの?

 1月26日の日記の続き。今回は、「押しつけ」をめぐるレトリックについて考えてみたい。ちなみに、この連載の目的は「レトリック」でなく「キャッチフレーズ」にあるのだが、実例を拾っていくと前者の話題が中心にならざるをえないのは皮肉なことである。

 さて、3/10の朝日新聞に、「憲法調査会 下:制定過程を巡って」という記事があった。いわゆる「押しつけ憲法論」をどう受け止めるかという議論。記事に紹介されていた各党の主な意見は以下の通り。
  • 自民・中川昭一氏「占領軍が欧米的民主主義を押しつけ、日本の文化、伝統、教育の相当部分を排除していた当時の日本は、そもそもまともな国家ではない。形式的に民主的手続を経ていても、独立後に間接統治に基づかない憲法を作るべき」
  • 民主・江田五月氏「制定過程に問題があるというのは、木を見て森を見ない議論」
  • 公明・平田米男氏「なぜ半世紀にわたり国民から強く支持されてきたのか、掘り下げた論議が必要」
  • 自由:野田毅氏「私学助成、環境、プライバシー保護、国際的役割など制定時には想定できなかった問題が生じている。」
  • 共産:佐々木陸海氏「改憲論が展開された歴史的経緯を掘り下げる調査が必要。米政府は1948年に日本再軍備の方針を検討していた。」
  • 社民:大脇雅子氏「明治憲法がどのように制定されたのかも見るべき」
この論争では、

押しつけられたものはよくない。だから変えるべきだ。

というキャッチフレーズに対して
  1. 成立や誕生の経緯よりも、その後の効果によって評価すべきである。
  2. 成立の経緯を云々するなら、関連する別の経緯も同等に議論しなければならない。
という2種類の反論が提示されている。上記の発言から読みとる限りでは、江田氏や平田氏が1.のタイプの反論、佐々木氏や大脇氏が2.のタイプの反論を展開しているように見える。個人的には、「成立過程に問題がある」という主張の一般性には、やはり限界があると思う。それを突き詰めていけば、例えば、(神話ではなく歴史科学としての)大和朝廷の成立過程まで遡らなければならない。土地の私有制だって起源を辿れば、奪い合いの喧嘩や権力者による強奪の不当性に行き着くことになるだろう。

 もっともそれはそれとして、戦後のGHQ統治下、もしくは戦後の混乱期に十分に意見を集約できないうちに決められた諸制度について、功罪両面を歴史的に検討していくことには意義があると思う。いくつか例を挙げれば、
  • パン食を主体とした学校給食(給食自体は戦前からあったはずだが)
  • 現代仮名遣い、当用漢字
  • 「漢字+カタカナ」から「漢字+平仮名」としたこと
  • 文字を左から右に書くこと
 いずれも「押しつけ」ではなく、日本人の専門家が集まってが独自に決めGHQが追認したものであろうと思うけれども、そのさい、資料の検討は十分であったか、純粋に学問的見地からの主張ではなく、「こうすればGHQが認めやすい」という御機嫌伺い的な主張のほうが優先されることは無かったか、個別に検討していく必要がある。

 そういや、いま全国の国立大学で行われている改革についても、文部省筋からの「押しつけ」であろうとの反対論が根強い。大学が独自に決める建前にはなっていても、「そうは言ったって、文部省がそんな案を認めるわけないじゃないか」とか「そんなことばかりしていると、予算の重点配分から外されてしまう」といった外圧を論拠にする主張が受け入れられやすいことは確かかもしれない。
【ちょっと思ったこと】
  • 「てるくはのる」は、容疑者(死亡)が所有していた『名言名句』の辞典の索引の特定箇所の末尾の文字を抜き出したものである可能性が高まった[3/11NHKニュース]。これまで、被害者家族の心情を無視して繰り広げられてきた言葉遊びはすべて不正解。テレビ画面からは出版社名までは読みとれなかったが、結局、「風が吹けば」最後に儲かるのはこの出版社ということになるのか。
    <3/12追記>3/12朝日新聞によれば、この辞典は『すぐに役立つ名言名句活用新辞典』(あすとろ出版)。

  • 大阪水上署は10日、京大総合情報メディアセンター助手(40)ら4人を児童福祉法違反の疑いで逮捕。同容疑者らは約1500人の会員をもつ「日本裏本研究会」のメンバーで、会のHPを通じて撮影会に参加。当時中学2年生だった少女にわいせつな行為をし、その光景を撮影した疑い[以上3/11朝日新聞からの要約]だというが、メディアセンターという勤務先と、逮捕内容から連想されるメディアとのコントラストがあまりにも空しい。
【今日の畑仕事】
多忙につき一度も立ち寄れず。
【スクラップブック】