じぶん更新日記1997年5月6日開設Y.Hasegawa |
【思ったこと】 _10114(日)[心理]論理療法と行動分析(3)推奨できる3つの特徴 10日の日記の続き。論理療法について推奨できる特徴として、次の3つの特徴を挙げた。
カウンセリングやセラピーは多種多様であるが、自力で習得できるものはきわめて限られている。医師や専門のセラピストのための理論や技法を素人が勝手に弄ぶのは非常に危険。巷には精神医学や臨床心理の入門書が多数出回っているが、それを読んだだけで諸々の心の問題が解決するならば専門家は要らない。 現実にはその逆で、例えば「アダルトチルドレン」とか、「アスペルガー症候群」という言葉が一人歩きすることによって、自分や他人の問題行動を「こころモデル」に閉じこめて、安易に納得、思考停止してしまう。昨年12/28の日記でとりあげた「こころ主義」は、それらを社会的問題まで敷衍して、「差し当たりの社会の安全圏」を確保しようとするものだ。 ともあれ、素人の生兵法は、固定観念を助長し、まさに論理療法が言うところのイラショナルなビリーフを形成してしまう。我々は、自分の力でどこまでできるのか、何は他者に頼らざるを得ないのかをもっと謙虚に受けとめていく必要がある。 ところで、現実に、大学の学生懇話室などの相談内容を見てみると、精神科の医師がいちいち面談しなくても何とかなりそうな問題が多く含まれていることに気づく。この点に関して、文献【3】のまえがきは次のように述べている。 .....今の時代は健常者でもカウンセリングを求める時代である。精神疾患の人たちだけが求める心理療法とちがい、カウンセリングは人生途上で誰でもが遭遇する問題を解くのに役立つ理論をもたねばならない。ふだんちょっと風邪を引いたときにとりあえずは医者にかからず養生するのと同様、ちょっとした悩みや怒りを自力で解決するノウハウを身につけておく必要があるというわけだ。 このほか、「学生のコミュニケーション不足」を補うためにも「自立的解決」は必要になってくる。今回の教員研修プログラムの分科会でも話題になったことだが、いまの学生は、携帯で気楽に連絡をとっているようで結構孤独なところがある。例えば2つのクラスで別々の日に行われる試験に同一の問題など出そうものなら、我々が学生の頃なら直ちに情報が流れてあとから受けたクラスのほうが有利になってしまう。ところが今の時代、そういう伝え合いは殆ど起こらないなどと聞いた。このほか、本来は友達同士で教えあえるような生活上の相談事をいちいち教員に申し出てくる学生もいるとか。文献【3】のまえがきでは .....、今の時代は周りに相談相手がいない時代である。家族主義・ミウチ主義が薄れてくるにつれ、自分のことは自分で分別をつける能力が必要になる。そのとき自己分析・自己説得に向く論理療法になじみがあると助かる。ふつう人が半年ほど悶々とする問題でも、論理療法なら二日ほど思考をめぐらすだけで悩みが半減する。というように、「自立的解決」の意義が強調されていた。論理療法がすべての問題を解決できるとは思えないが、行動分析で言うところのルール支配、一般に言われるところの強い思い込みを自力で是正する手段として、大いに参考にすべき点があるように思う。次回はクリティカルシンキングとの関連について考えてみたい。 引用文献
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