じぶん更新日記1997年5月6日開設Y.Hasegawa |
ヒヤシンス。水栽培よりやや遅れて鉢植えの球根の花が開き始めた。 |
【思ったこと】 _10120(日)[教育]センター試験の英語問題に今年もケチをつける:好みの偏りと強さは別物 センター試験の英語では、毎年、行動科学系の実験・調査を紹介する記事が出題されている。英語の試験としては妥当だが、実験計画や結果の解釈には難点のある場合が多い。この日記では
さて今年の問題は、こちらのような髪型のいろいろな人物写真を16〜19歳、36〜39歳、56〜59歳という3つの世代600名に示し、いちばん好きなものを選ばせるという調査。その結果、それぞれの世代において、最も好まれる髪型の分布は下図のようになった。 多少疑問に思ったのが設問C。「本文またはグラフの内容と合っているものを次の文の中から1つ選べ」というのが問題になっており、各種新聞によれば、正解は、 (2)People in the oldest age group have the strongest preferences.とされている。確かに、円グラフを見ると50代後半の分布には偏りがある。しかしそれは、単に、髪型(Y)とCrew cutを好む比率が多かったというだけであり、それらの人々は、もしかしたら、「髪型にはこだわらないが、しいて好みを挙げるなら...」という理由選び方をしたかもしれない。いっぽう、16歳から19歳の人たちは5種類の髪型に好みが分かれている。しかし、もしこれらの人たちがそれぞれ「他の髪型はゼッタイに嫌いだ」と表明していたならば、そちらのほうが好みのこだわりが強いと言えないこともない。 あるいはこんなことも考えられる。たとえば、ある調査で、日本人一般の朝食の好みを調べたところ、37%がみそ汁、29%は納豆、トーストとシリアルが各12%、卵焼きが10%であったとしよう。この分布を円グラフに描けばちょうど、50代後半の髪型の好みの分布と同一になる。ところが、ある学生寮で同じ調査をしたところ、いま挙げた5種類の食事の好みが19%から21%でほぼ互角に分かれたとしよう。この時、日本人一般と学生寮の住人のどちらが「have the strongest preferences」と言えるだろうか。通常は、学生寮の住人の好みは、日本人一般の好みに比べて偏りがあると結論されるはずだ。 要するに、「いちばん好きなモノ」の分布データだけでは、個体レベルでの好き嫌いの強さは推測できない。仮に比率が均等でないとしても、母集団全体の比率はどうなっているのか、「偏りでない」基準をどこに置くのかを明確にしなければ判断はできないと思う。 「※]問題全文は河合塾から読むことができます。pdfファイルによる提供もあり。 |