じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
 朝霧につつまれるソメイヨシノと時計台(4月1日撮影)。4月2日からは新学期開始。桜の開花に合わせてキャンパスは一気に賑わいを取り戻してくる。


4月1日(日)

【ちょっと思ったこと】

新年度始まる

 いよいよ2007年度が始まったが、初日が日曜日ということでイマイチ実感が湧かない。しかし、私のような仕事をしている者にとっては、新年度の始まりは、お正月以上に重要な意味を持っている。ポータブルディスクのファイルも、Web日記の年月など少数の例外を除けば、すべて、暦年ではなく年度別に分類管理し、バックアップをとっている。

 そんな時期ではあるが、数日前から喉が痛く、微熱があるようだ。1999年1月23日以降、風邪で寝込んだことが一度も無い私には珍しい現象である。先日の京都出張の際にうつされたか、その後の長時間会議でエアコンの悪い空気に当たったのがいけなかったのか分からないが、とにかく、あまり無理はできない。4月9日締切の紀要論文は、執筆時間不足で提出断念に追い込まれそう。

【思ったこと】
_70401(日)[心理]心理療法におけるエビデンスとナラティヴ(8)能智氏、武藤氏、松見氏の話題提供(2)

 3月21日に立命館大学衣笠キャンパスで開催された特別公開シンポジウム:

心理療法におけるエビデンスとナラティヴ:招待講演とシンポジウム

の感想の8回目。

 武藤氏は話題提供の中で、西洋と日本の文化それぞれにおいて、プレモダン、モダン、ポストモダンがどのように浸透し相互に影響し合ったのかということを動画で表示された。これは武藤氏ならではのユニークな視点であり、注目に値する。

 これまでにも書いてきたことだが、私個人は、プレモダン、モダン、ポストモダンという分け方は日本の文化には当てはまらず、生産的な議論を生み出さないと考えている。そもそもポストモダンと言ったところで、一部のインテリがそのように標榜しているだけであって、世の中の基本は相変わらずモダンで動いていると思う。但し、心理学の世界に限っては、ポストモダンに同調する動きが徐々に台頭していることは確かであろう。

 日本の心理学というのは、日本プロ野球と米国大リーグみたいなところがあり、米国心理学会(APA)の学術誌に論文を載せることや、米国で学位をとったり、有名教授のもとに1年間程度留学することが日本人・心理学研究者としての優秀さの証しであるとみなされる傾向がある。また、通常、留学経験者は帰国後、師匠の著作を翻訳したり米国から師匠を呼び寄せて講演会を開くなどして「恩返し」をする。帰国後に師匠と真っ向から対立するような新理論を発表し師匠から破門されたなどという話は、あまり聞かない。

 日本の心理学がそういう師弟関係で培われている限りにおいては、モダン、ポストモダンの考え方も、それぞれの大学の人事構成、留学者の影響力に応じて、変則的に浸透せざるを得ないという宿命を持っているように思う。




 武藤氏はこのほか、認知行動療法の「Re-authoring」に関連していくつかのユニークな視点を披露された。備忘録代わりにメモしておくと、
  • Pepper(1942)のThe Root Metaphor method.→ネットで検索したところ、どうやらこちらで情報を入手できるようだ(出典はこちら)。
  • 行動療法の第三の波(Functional Analystic Psyhchotherapy、Dialectical Behavior Therapy,Acceptance and Commitment Therapy.
 スキナーは初期にはメカニズムの立場を取っていたが後にコンテクスチャリズムに変わっていったというようなことも言っておられたが、いつ頃の著作にそれが反映していると考えておられるのかは分からなかった。

 話題提供のテーマでもあり、結論でもある

●The Ethics of Close Outsider.

については十分に理解できないままに終わってしまった。

 話題提供の終わりのほうで、武藤氏は、エビデンスは権威づけに使うものではなく、目的達成のため、サービス提供者(プロバイダー)の倫理として使うべきものであると強調された。このことがタイトルの意味に含まれているのだと理解したが、Outsiderとは何であったか、聞き逃してしまった。

 次回に続く。