じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



09月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 北大構内のナナカマドの赤い実。講義室の窓から撮影。こういう風景を眺めながら授業を受けられるのがうらやましい。



9月18日(木)

【思ったこと】
_80918(木)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(6)「橋本メソッド」とは何か?(3)/e-Learningシステムの活用

 橋本勝氏の話題提供、

●「橋本メソッドと学生の主体的学び−150人ゼミの有効性−」

に関する感想の最終回。今回は2つほど疑問点を述べさせていただく。

 まず、橋本メソッドがどのような授業科目において有効であるのか、という点である。教養教育科目で、課題探究型のグループ研究を行う場合は大いに有効であろうが、専門科目や、体系的知識を学ぶ必要のあるような科目ではどうだろうか。橋本氏のお話では、従来講義形式で行われていたような統計学の授業でも適用可能ということであったが、心理統計学を担当している私としては、これはちょっと信じられないことであった。いずれ機会があれば、「橋本メソッドによる統計学」の授業を参観させていただこうと思っている。

 第2の疑問は、「橋本メソッドの3つのポイント」:
  1. 競争原理
  2. ゲーム感覚
  3. 自由度の大きさ
のうち、1.の「競争原理」が本当に働いているのかという点である。授業に競争場面を持ち込んだ場合、金メダルや銀メダルを争うような上位チームは、熱心にグループ研究に取り組むであろう。反面、あまり勝ち目のないことがわかった下位チームでは、しらけムードや、「できるだけ労力を節約して最低限レベルの単位獲得を目指す」という省エネ型の受講態度が出てくることは無いのだろうか。9月17日の日記でも述べたが、グループ学習・研究では、「フリーライダー(=他のメンバーに任せっきりで何もせず、単位だけもらう学生)」と「リタイア(グループ活動に馴染めず離脱してしまう学生)」が出るという問題がしばしば指摘されているようだが、これが本当に解消できるのだろうか。橋本氏の話では、期末試験である程度チェックできるということであったが、ここにも何か、橋本氏の名人芸(あるいは、秘伝)が関与しているような気がする。なお、2006年11月20日の日記にも書いたように、別の大学のプロジェクト学習では、各グループあるいは個人に対して
  • 週報:毎週提出
  • 最終報告書:個人単位で執筆箇所を明記。
  • 欠席をしない:欠席した場合は欠席理由を担当教員に報告し、週報に理由を明記。
  • 週2回 合計6時間の活動時間確保
  • 自己評価、教員による評価、共同作業者によるコメント記載による適切な評価
といった工夫が紹介されていた。併せて参考にしていただければ幸いである。




 さて、午前の特別講演者お二人のほか、午後の分科会では、山口晴久氏から

●岡山大学e-Learningシステムを活用する方法

という話題提供もいただいた。e-Learningシステムのインフラが十分に整備され、試行段階から本格導入段階に入ろうとしているが、インフラの存在そのものの認知度が低く、これを学内にどう普及させるかが課題となっているというお話であった。時間の関係で詳しい言及は避けるが、私自身が考えるには、普及の初期の段階では、「システムを活用する」行動を付加的に強化する手段がやはり必要である。具体的には、活用を希望する教員へのサポート体制(たとえばTAやGAの配置)、また、そのような取り組みを行う教員に対する、何らかの負担軽減策(他のの授業の担当コマ数の軽減など)が求められる。ある程度の支援を行えば、そのあとの活用行動は、付加的な強化無しで「自走」できるのではないかと思われる。




 以上、勝手な感想をいくつか書かせていただいた。まだまだ書き足りないことはあるが、日本心理学会72回大会が9月19日からのまったこともあり、これをもって最終回とさせていただく。