じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大構内の彼岸花(4)時計台前 昨日の続き。最終回は、時計台前に咲く紅白の彼岸花。このうち赤花は少なくとも10年前からここに咲いている【右側に再掲。時計台は改修工事前】。白花のほうは、何者かによってこちらの花壇から移植されたものと思われる。 なおこの芝地は定期的に芝刈りが行われるため、花後の葉っぱも一緒に刈り取られてしまい光合成が不足するため球根が殖えることはなさそう。 |
【思ったこと】 150912(土)『嫌われる勇気』(55)「関係フレーム理論」、「ACT」との比較(14)世界仮説、機能的文脈主義 9月12日の続き。本題から脱線して、「関係フレーム理論」、「ACT」との比較について記してきたが、最後に、これらの哲学的背景となる、機能的文脈主義についてふれておき、『嫌われる勇気』の本題に戻ることにしたい。 ●ヘイズ,S.C.、ピストレッロ, J. (著) 木下奈緒子(訳) (2009). ACTとRFTにおけるカッティング・エッジ(最先端)の探究. ころのりんしょうa・la・carte, 28(1), 77-86. によれば、ACTはCBT(認知行動療法)における憂慮すべき点:
ここから先のところは、 ●武藤崇(編著)(2006)『アクセプタンス&コミットメント・セラピ−の文脈 臨床行動分析におけるマインドフルな展開』ブレーン出版 の第1章「機能的文脈主義とは何か」に詳しく解説されている。残念ながら2015年9月時点では「絶版重版未定」となっているが、加筆修正される前の元の論文: ●武藤(2001).行動分析学と「質的分析」(現状の課題).立命館人間科学研究, 2, 33-42. は無料で閲覧することができる。 さて武藤(2006)によれば、文脈主義はPepper(1942)の世界仮説、ルートメタファ・メソッドに由来している。しかし、 ●Pepper, S. C. (1942)World Hypotheses. は、日本語版が作られていないことからみて、日本ではごく一部の哲学・心理学関係者以外にはあまり知られていないようである。ちなみに、この本自体は今でも購入可能であり、私の手元にもあるが、本文348頁に及ぶ難解な哲学書であり、読破できるかどうかこころもとない。 ということで、もっぱら武藤(2001,2006)からの孫引きになるが、世界仮説によれば、
世界仮説ではトートロジーを避けるため、ルート・メタファーという考え方、つまり「自分の身の回りに存在する事象を比喩的に利用して世界観を構成する」という方法が採用される。上記の4つの主義のルート・メタファーと真理基準は以下の通り(武藤, 2001)。
でもって、とにもかくにも、文脈主義は、文脈中に生じている進行中の行為をルート・メタファーとしており、「恣意的なゴールの達成」を真理基準としている。 この世界仮説に対しては、ヘイズらのリビュー: ●Hayes, S.C., Hayes,L.J., & Reese, H.W.(1988).Finding the philosophical core: A review of Stephen C. Pepper's World Hypotheses: A Study in Evidence. (Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 1988, 50, 97-111.) があり【無料で閲覧可】、「関係フレーム理論」や「ACT」の哲学的基盤となったことは確かである。 ちなみに、スキナーの徹底的行動主義は、特に初期の著作には機械主義と文脈主義が混在していると指摘されているが、全体としては行動分析学は、文脈主義の特色を有すると結論されている(武藤, 2001、37〜38頁)。このあたりは、
この世界仮説で留意すべきなのは、以下の格率とそれに基づく主張である(武藤, 2006、17頁)。 こうした主張は、ある意味で、主義・思想の「棲み分け」を促すとも言える。いろいろな考え方の1つにこういう考え方もありますという形で、既存の理論から否定されることなしに新たな理論を提唱することもできるが、その一方、賛同者を増やすためにはそれを採用することのメリットを強調しなければならない。文脈主義の場合は、「恣意的なゴールの達成」という真理基準によって、その存在価値が問われることになるのだろう。 次に、文脈主義はさらに、機能的文脈主義と記述的文脈主義に分かれる。このあたりは、武藤(2001).(38頁)を参照されたい。 武藤(2006、27頁)によれば、機能的文脈主義の重要な点は、質的データであれ量的データであれ、ゴール達成に有用であるなら意味を持つ(有用でなければ何ら意味を持たない)という考え方である。機能的文脈主義においても、従来の科学的方法論を捨てることはないが、その方法論を採用する機能が機械主義などとは全く異なる。【要約改変】
こうした考え方は、臨床場面で個別対応する場合にはきわめて有効と思われるが、仮説検証の積み重ねで一般性のある法則を導き出す研究には不向きであろう。関係フレーム理論自体は、より効率的な外国語学習法の開発にも役立つと思うが、そのためには機械主義的アプローチもある程度必要ではないかという気もする。 なお、世界仮説や機能的文脈主義は、行動活性化療法の本の中でも同様に議論されているが、ここでは省略させていただく。 ●マーテル・アディス・ジェイコブソン (著)、熊野宏昭・鈴木伸一 (監訳) (2011).うつ病の行動活性化療法: 新世代の認知行動療法によるブレイクスルー. 日本評論社. 不定期ながら次回に続く。 |