じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 11月26日の岡山は冬型の気圧配置となり、朝方、雪雲の中にうっすらと虹が見えていた。また夕刻にはよく晴れ、マスカットユニオン(岡大・北福利施設)に夕日が反射する「偽太陽」が出現した。なお、この日の夕刻にはアルデバラン食があったが、夕食後の散歩時にはすでに月とアルデバランはかなり離れてしまっていた。アルデバラン食は来月12月24日の早朝、月の入りの直前に見られるようである。

2015年11月26日(木)


【思ったこと】
151126(木)理論心理学会公開シンポ(10)心理学の将来の方法論を考える(1)坂入氏の話題提供(1)

 昨日の続き。

 公開シンポ2日目は、「第二部 心理学の将来の方法論を考える」というテーマのもと
  • 企画菅村玄二(関西大学)>
  • 「アウトカムを重視した応用科学独自の研究法〜個人差と複雑な要因を無視しないための包括的媒介変数の活用」 坂入洋右(筑波大学)
  • 「一人称の方法論の可能性:Process Modelと認知意味論の視点から」 村川治彦(関西大学)
  • 「複雑系の方法論の可能性:非線形力学系から東洋的心理学へ」 鈴木平(桜美林大学)
  • 「ベイズ的アプローチと心理学」 繁桝算男(帝京大学)
  • 指定討論「生理心理学の立場から」 福島宏器(関西大学)
という、4件の話題提供と1件の指定討論が行われた。

 前日と異なり、数学のモデルや哲学系の専門的な論考があり完全に理解することは困難であったが、11月15日に述べたように、いくつかの新しい視点の必要性を実感できた。

 1番目の坂入氏の話題提供ではまず、スポーツ選手養成の現場において、法則の一般性を追求する“科学的”研究と、現実に役立つ研究のあいだに乖離があること、また、現場では複雑な要因が関与しているため、「メカニズムの解明」を目的とした基礎科学的研究の視点とは異なり、「アウトカムの向上」を目的とした応用科学的研究という視点から、個々人の状況の多様性に焦点をあてる必要があると論じられた。

 実際、スポーツの練習法においても、理想的な技術の習得を目的とした西洋的な「モデル習得型学習」よりは、選手自身の活用祇受納の向上をめざした東洋的な「感覚体験型学習」のほうが重視されるようになってきているという。私自身は本格的にスポーツをしたことがないので実感できないが、例えば卓球を例に取ると、利そうなスウィングや最善の打撃パターンを反復練習で習得することよりも、「打球感の豊かな体験」を身につけることが重視されてきているというお話であった。

 こうした視点からは、ある一般的な指標のスコアを向上させることではなく、選手個人ごとに、心身空間上において現状がどこにあるのかを座標でとらえ、それが、どういうベクトルをもってどう変化するのかに焦点が当てられる。そのさい活用されているのが、「心のダイアグラム」であり、スライドでは、「覚醒度」の高低と「快適度」の高低の直交軸からなりたつ二次元空間と、「心の安定」の高低と「心の活性」の高低の直交軸が45°回転している図が描かれていた。このあたりのご研究は2015年の科研の課題にも採択されており、今後いろいろな成果が公開されることになると期待される。

 なお、この「心のダイアグラム」によく似た四象限図形として、理化学研究所・片岡洋祐氏による「KOKOROスケール」というのがある。【2012年11月22日の日記および翌日以降を参照】。但し、パッと見た限りでは、直交軸が45°回転しているようにも見えるが、どういう議論・検討がなされているのかは不明。

 次回に続く。