じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月5日放送のNHK「驚き!地球グレートネイチャー」で

「天空に現れた謎の湖〜南米 アルティプラーノ」【2017年3月31日初回放送】

を取り上げていた。もっとも真っ赤な色のハユクタ湖などはごく短時間紹介されただけで、メインはウユニ塩原の中にあるインカワシ島(Isla de Pescado、もしくはインカワシ島Isla Incahuasi)の話題であった。

 インカワシ島は山頂まで登ったり、島の「湖岸」を「湖面を歩きながら」半周してみたりしたことがあるが、この島がどうやってできたのかについては何も知らなかった。今回の番組によれば、
  • ウユニ塩湖よりも古い火山であった。
  • 頂上付近には藻の化石がある。
  • 4万年前には、この島の頂上近く、今の塩原から120mの高さまでの水位の巨大な湖があった。
  • 当時の巨大な湖は東西200km、南北300km、琵琶湖の75倍。
  • 湖の西側に列をなす火山から大量のナトリウムと塩素が湖に流れ込み塩原となった(←海の水が干上がってできた塩原ではない)。
という、地質学者オスカル・チャベス博士の説が紹介された。


2019年2月6日(水)



【連載】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(36)「関係フレーム」とは何か?(24) いろいろな関係フレーム(19)Comparison(4)比較とジャンケン

 昨日の続き。

 「比較(Comparison)」フレームと複合的相互的内包(複合的内包、Combinatorial mutual entailment)に関するもう1つの疑問は、ジャンケンのような3すくみの関係をどう説明するのかという点であった。この問題は昨年の1月24日にも取り上げている。リンク先で述べたように、「後出しじゃんけん」の例が分かりやすい。後出しとは、グー、チョキ、パーのうちのいずれかが呈示され、それに勝つ手を選ぶというゲームである。分かりやすくするため、呈示された手と同じ手は選ばないこととする。(選んでもアイコになってしまう。)順序尺度型に配置されたA、B、Cであれば、

A<B、B<Cという条件のもとではA<C

が成り立つが、後出しジャンケンのような3すくみ型の強弱関係では

A<B、B<Cという条件のもとではC<A

となって、推移性は成り立たない。

 これについてはまず、以下のような説明が考えられる。

●幼児は先に推移性型の関係反応を派生させるようになるが、その後、ジャンケンのようなゲームを体験することで、これとは別に、「ジャンケン」という文脈のもとで、3すくみ型の関係反応を派生させることができるようになる。

というものである。例えば、3すくみの関係フレームを確立した子どもは、ジャンケンで遊んでいるような文脈のもとで、

●大蛇はヒキガエルより強い。ヒキガエルはナメクジより強い。

という話(児雷也参照)を聞いた時に、「ナメクジは大蛇より強い」という関係反応を派生させるかもしれない。

 もう1つの説明は、アナロジーに基づく理解である。ウィキペディアにも記されているように、少なくとも、日本国内でのジャンケンは、
  • 紙(パー)>石(グー):石は包まれてしまう。
  • 石(グー)>鋏(チョキ):石には刃が立たない。
  • 鋏(チョキ)>紙(パー):紙は切られてしまう。
というように喩えられており、これは子どもでもきわめて分かりやすい。要するに、ジャンケンを初めて教わった子どもは、「パーはグーより強い」、「グーはチョキより強い」から「3すくみ型の複合的相互的内包」によって「チョキはパーより強い」を派生させるのではなくて、単に、紙は鋏で切られてしまうことと等位の関係として、チョキのほうが強いという関係反応を生じるようになるという考え方である。

 どうやら、この2番目の説明のほうが妥当であるように思える。というのは、3択の代わりに4択、5択、...といったゲームでは、アナロジーなしに強弱関係を把握することは格段に困難となるからである(4択以上のジャンケンについての考察はこちらの連載にあり。但し、20年以上のコンテンツのため、殆どがリンク切れになっている。)

 経験的に言って、順序尺度型の強弱であれば比較対象が3、4、5、...というように増えても任意の2者の強弱を判定することはそれほど困難ではない。これはおそらく関係フレーム(もしくは順序尺度上の配置についての視覚的把握)が貢献しているためと考えられる。しかし、こちらに紹介されているような、5すくみ、7すくみ、11すくみのジャンケンの強弱関係はそう簡単には覚えられない。これは、「すくみ」関係においては関係フレームが形成されにくく、上掲の「紙」、「石」、「鋏」といった具体物とのアナロジーを利用せずにはいられないことを示しているように思われる。

不定期ながら、次回に続く。