じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



06月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 半田山植物園のロウバイ(蝋梅、写真左)とソシンロウバイ(素心蝋梅、写真右)の実(偽果)の比較。ロウバイの実は真ん中が太く、枝に近い部分と先っぽの部分が細くなっていた。この特徴は園内の10本ほどのロウバイすべての共通していた。いっぽう、素心蝋梅の実は全体が丸っこいラグビーボールのような形になっていた。但し、ソシンロウバイは1本のみであり、この木だけの特徴なのか、ソシンロウバイの一般的な特徴なのかは確認できていない。

2020年6月7日(日)



【小さな話題】サイエンスZERO「新型コロナ論文解析SP」(4)抗ウイルス治療と血管の炎症を抑える治療

 6月6日に続いて、 5月31日に放送された、

●NHKサイエンスZERO「「新型コロナ論文解析SP」の感想と考察。今回は、番組の終わりのほうで取り上げられた「重症化のメカニズム」について考察する。

 2月18日の日記3月10日にも記したように、新型コロナウイルス感染症は、当初は「新型肺炎」などと呼ばれていた。これはより専門的には「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」に相当するようである。しかしその後の研究により、肺だけでなく全身の臓器にさまざまな障害が出て重症化するパターンがあることも分かってきた。

 AIの論文解析によれば、脳梗塞、心不全、肝不全、腎障害、中には足の壊死に繋がる症状を報告したものもあったという。また、人工透析などの対外循環を担当する医師が、血液を濾過する装置に目詰まりが起こりやすくなるという現象を報告したという。これらは、新型コロナウイルスが血管の炎症を起こしやすい特徴を持っていることを示唆している。

 全身の臓器に障害が起こるメカニズムには、免疫細胞がかかわっているらしい。新型コロナウイルスが体内に入ると、免疫細胞は炎症性サイトカインを警告物質を放出し仲間の免疫細胞を活性する。ところがこれが過剰に活性化するとサイトカインストームと呼ばれる暴走状態になることがある。こうなると免疫細胞は、自分の血管を攻撃するようになり、血管の炎症が拡大する。これは、生活習慣病が急速に進行するような状態であるという。そして炎症性サイトカインがたくさんつくられると血小板の粘着性が非常に上がり血栓が起こりやすくなるようになる。

 以上から、新型コロナウイルス感染症では、抗ウイルス治療ばかりでなく、血管の炎症や凝固をどう押さえるのかという治療戦略が注目されるようになった。具体的には、炎症性サイトカインにくっついてそれを無効化する薬「アクテムラ」の投与などが試験的に行われており、臨床的な検証が行われているということであった。

 番組の終わりのところでは、治療薬の現状として、科学的に根拠が強いと言える結果が示されたものは少なく、効果があるとする論文と確認できないとする論文の両方があると報告されていた。




 ここからは私の感想になるが、新型コロナウイルスが話題になり始めた頃は、「単なる風邪のウイルスに毛が生えた程度」としか認識されていなかった【こちらの記事参照】。しかし、その後の研究が進む中で、どうやら、特に免疫系の暴走を引き起こしやすいといったような重大な特徴を備えていることが明らかになりつつある。こうしてみると、免疫系を人為的に操作するようなワクチンの開発は慎重でなければならないし(6月6日の日記参照)、また、免疫システムの個体差(遺伝子型、人種、血液型など)にも注目する必要がある。5月1日5月17日にも述べたように、万人に有効なワクチンや治療薬というのはもしかすると開発できないかもしれない。それよりも、人々それぞれのタイプに分けて有効性を検討したほうがよい。上掲で「効果があるとする論文と確認できないとする論文」があるというのは、万人対象では効き目が無いが、特定のタイプの人に限っては有効性が高いということを示しているのかもしれない。であるとするなら、どういう条件を備えていれば有効になりうるのかという探索こそが次の課題となる。これは、「行動の普遍的法則を発見するのではなく、むしろ、その法則がどういう文脈のもとで成り立つのかといった生起条件を探索する」という行動分析学的な発想に似通っているようにも思われる。