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2021年も3カ月が過ぎ、早くも新年度を迎えた。岡大構内の生協食堂前では、校友会の腕章をつけた部活動のメンバーが新入生向けの宣伝活動を行っていたが、新入生の数はそれほど多くないように見えた。 4月2日には入学式が行われるが、新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、出席者を制限し、入学生の代表者と学内関係者のみということで、お気の毒なことだ。 |
【連載】ダーウィンが来た!「かわいいのに最強!? テントウムシ」 3月28日に放送された表記の番組を録画・再生で視た。この番組は、タイトルによって視たり視なかったりしているが、今回は、テントウムシの生存戦略が科学的根拠に基づいて解説されており、なるほど!と納得できる内容であった。 番組によれば、テントウムシは日本だけでおよそ200種類が生息している。私が子どもの頃は、星が7つあるテントウムシは益虫だが、それ以外は害虫だと教わったような記憶があるが、必ずしもそうではないようだ。ウィキペディアにも、肉食、菌類食、草食があり、害虫とされているのは、ナスやジャガイモの葉を食べるオオニジュウヤホシテントウなどの種であるようだ。いっぽう、益虫とされているナナホシテントウは7つ星(黒い紋)だが、同じようにアブラムシを捕食するナミテントウはいろいろな斑紋をつけているという。 番組によれば、テントウムシは少なくとも2つの生存戦略により身を守っている。 1つめは、体液に強い異臭と苦味があり、その苦さを経験した鳥は、それを口にしなくなる。テントウムシが派手な模様をしているのは、警戒色を発しているためと考えられる。番組の中ほどでは、この警戒色を似せたアオバセセリ幼虫、クモの仲間のツシマトリノフンダマシの擬態が紹介されていた。 もう1つの戦略は、丸くてツルツルした体型にある。これにより、カマキリや蟻の攻撃から身を守ることができる【昆虫は捕食時の苦さの体験を学習しないと思われるが、物理的な形態は防御に有効であろう】。 続いて、棒に乗せると上の方向に向かうという習性【←但し、生得的な行動傾向という意味】が、シーソー実験によって紹介された。 番組の「第2章 波瀾万丈!幼虫はつらいよ」では、卵から先にかえった幼虫が、まだ孵化していない卵を食べてしまうという行動が紹介された。かえったばかりの幼虫はエサとなるアブラムシに比べると体が小さく捕食することができない。大澤直哉先生の説明によれば、卵を食べた幼虫のほうが食べない幼虫よりも遙かに大きく成長することができ、結果的に生き残る確率が高まるという。また、まだ孵化していない卵は、未成長あるいは無精卵のため、食べられなくてもそのまま羽化しない可能性が高いという。こういうタイプの共食いが他の種でも見られるのかどうかは確認していないが、孵化直後の摂食が困難な状況にある動物で、卵を食べたほうが生き残る確率が高い場合は、結果的にこういう生存戦略が定着することは大いに考えられると思う。 番組の最後「第3章 ゾンビ!?操られるテントウムシ」では、テントウハラボソコマユバチがテントウムシの体内に幼虫を寄生させ、繭を作った段階でも生きたまま繭の上に覆い被さるように固定され繭を守るという現象が紹介された。興味深いのは、ゾンビ化されたテントウムシの何割かは、足のマヒが治り、再び動き回り、卵を産めるまでに回復できるという。テントウハラボソコマユバチの側から見れば、繭が羽化した時点で宿主は用無しとなるが、だからといってテントウムシが全滅してしまったら自分たちも繁殖できなくなる。少しでもテントウムシが生き延びてテントウムシ自体の繁殖を可能にするほうが有利になるのだろう。同じ寄生でもイモムシに寄生するヒメバチとポリドナウイルスの話に比べると、まだまだ穏便な寄生であるように思われた。 ということで、この回ではテントウムシの生存戦略がエビデンスに基づいて分かりやすく解説されていた。「ダーウィンが来た!」という番組では、時たま擬人的な説明があり、それは違うだろうと感じることがあるが【こちらやこちらに関連記事あり】、今回のテントウムシの内容はそのような解釈はなく、科学的な説明に徹しているように思われた。 |