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【連載】ヒューマニエンス「“イヌ” ヒトの心を照らす存在」(5)大きさの多様性、イヌの白目 昨日に続いて、10月21日に初回放送された表記の番組についての感想・考察。 番組の終わりのあたりでは、イヌの大きさの多様性について言及された。イヌの大きさには著しい差があり、人工授精などでかけあわせることで400〜800の犬種ができているという。その背景には、イヌがヒトに守られているため、多少病気に弱い遺伝子があっても交配するチャンスがあり、遺伝子が変化しやすい方向に広がっていったという。 このイヌの大きさについては、2021年4月24日に放送された「チコちゃんに叱られる!」でも取り上げられていた。その時も、今回と同じ菊水先生(麻布大学)が登場しておられて、 イヌの大きさを決める遺伝子はIGF1(アイジーエフワン)だが、イヌのIGF1がヒトやネコより突然変異しやすい。まだ研究中だが、イヌのIGF1は遺伝子のかたまりが緩んでいて外部の刺激により変化しやすい構造になっている。また、人間がイヌを連れて世界各地に拡散していくなかで、その土地の環境や、狩猟などの目的に応じて交配したことが、さまざまな種類をもたらした。という説明をしておられた。もっとも、イヌの品種改良は当然弊害ももたらす。イヌを無理やり小型化すると、頭蓋骨が小型化されることで歪みが生じ、水頭症の確率が高まるという。 続いて取り上げられたのは、白目の話題であった。野生動物の大半は目に黒い部分が多く視線から行動を悟られないようにしているが、ヒトとイヌは白目が多く、相手の視線を読んで行動することができるという利点がある。イヌの上目遣いは眼輪筋によるものだが、これはオオカミにはなく、人間と生活するようになってから獲得したものであるという。菊水先生によれば、ヒトとイヌは同じ環境で過ごすことで同じような能力が備わってくることがあり、対ヒトが重要な環境になるとそこでイヌが獲得する遺伝子もヒトに似てくる(=共進化)、というお話であった。 この白目の話題も、2020年11月20日放送の「チコちゃんに叱られる!」でも取り上げられており、感想・考察を述べたことがあった。 番組の最後のところでは、イヌの研究を通して分かってきたのは、人間の根幹は共同体にあり、協力する社会の一員にイヌを選んできたという点が指摘された。 ここからは私の感想・考察になるが、まず、イヌの話題と言えばすぐに思い浮かぶのがネコとの対比である。こちらの記事によれば、2017年には、全国の犬と猫の推計飼育数は猫が953万匹(前年比2.3%増)に対し、犬は892万匹(同4.7%減)で、1994年の調査開始以来、初めて猫が犬を上回ったとなっている【但し、飼い主数は猫が546万世帯、犬は722万世帯で、まだまだイヌのほうが多い】。ネコは単に人間を利用して住み着いているだけであって共同生活には至っていないのかもしれないが、ネコの研究から人間を理解していくこともまた必要であろう。 もう1つは、この先、イヌやネコに代えて、どのような動物がペットとして好まれるようになるかという問題。少し前に行方不明で騒動になった、ニシキヘビや大型トカゲを飼う人の心理、さらにペット型ロボットがどこまで普及するのかという問題がありそう。 |