Copyright(C)長谷川芳典 |
※クリックで全体表示。 |
認知症予防のため、毎日Gパークの中の「詰将棋」、「日本の歴史クイズ」、「クロスワードゲーム」、「記憶ゲーム」、及び別会社の運営する「リバーシ(オセロ)」で遊んでいたが、このうちの「リバーシ」が1月17日の午前11時をもって閉鎖されてしまった。
このリバーシは持ち時間に制限があり、1日10回まで参加できた。最後まで残った石の数と消費時間の少なさによって得点が与えられ、その日の最高得点順のランキングもあった。また相手の石を全部取ってしまうとパーフェクトのボーナス点が加算された。 毎日10回遊ぶのは時間がかかりすぎるので、私の場合、15000点を超えたあたりでその日のゲームは終わりにしていたが、私自身が定石を知らないこともあって、なかなか得点を増やすことができない。最終日は結局14360点、参加時の順位で192位で終わってしまった。 なおこの順位のランキングを見ると、最上位の何人かの人たちは4万点以上を獲得していた。このような高得点を獲得するためには、ほんの10秒程度の間に相手の石をすべて取ってしまう必要がある。おそらくAI側の方略の弱点を解析し、必勝法を発見したためではないかと思われるが、私にはそのようは必殺技を見つけることは到底できなかった。 |
【連載】チコちゃんに叱られる!「展望台にのぼって高いところからの景色を見たがるのは『いいことがある』と遺伝子が記憶しているから」という非常に胡散臭い説明 昨日に続いて、1月13日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
人が展望台に登りたがる理由について、放送では「「いいことがある」と遺伝子が記憶しているから」と説明された。人間が好む環境や風景について研究している竹田直樹先生(兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科)によれば【表現は一部改変】、
ここからは私の感想・考察になるが、今回の説明は、少なくとも以下の2点で、非常に胡散臭い説明であると言わざるを得ない。 まず「遺伝子が『いいことがある』と記憶しているから」と説明されたが、遺伝子はUSBメモリではない。遺伝子というのは、本来、「塩基配列にコードされる遺伝情報」であって、細胞分裂の際に形質などの特徴を伝えることはできるが、「○○すればいいことがある」というような具体的な情報を記憶する装置ではない。リンク先にも 遺伝子やDNAという言葉は、科学的・神秘的といったイメージが先行し、一般社会において生物学的定義から離れた用いられ方がされていることが多い。それらの大半は通俗的な遺伝観を言い換えたものに過ぎない。一般雑誌などでは疑似科学的な用法もしばしば見受けられる。と記されているように、科学的根拠の無い説を権威づけするために用いられることがあり注意が必要である。本当に「遺伝子が記憶」というなら、塩基配列のどこにそのような情報が蓄えられているのか、証拠を示してもらいたいものだ。 第二に、上記5番目の 例えばライオンやチーターの狩りは、草陰に隠れながら獲物に近づき、猛スピードで走って捕まえる。しかし人間は動物に比べて足が遅いため、走って追いかけても獲物に逃げられてしまう。そこで人間は獲物が逃げた足跡をたどって、逃げられても逃げられてもひたすら追いかけ、獲物が疲れて弱ってきたところを捕まえるという方法をとっていた。つまり、獲物を見つけることさえできればたとえ逃げられてもかまわない。獲物を見つけることが最も重要なので、高いところにのぼるのは「いいこと」だった。というのはかなり無理がある。人間には「逃げられても逃げられてもひたすら追いかけ、獲物が疲れて弱ってきたところを捕まえる」というほどの耐久力はないし、また足跡をたどって追いかけるというのであれば、高い木に登る必要はない。地上で新鮮な足跡を見つけてから辿れば済むことである。 さらに、獲物を見つけるために高い所に登るというのは、せいぜい10mくらいの高さから遠くを監視するという場合であって、時間をかけて山の上まで登ったところで獲物が見えるわけではない。要するに、数百メートル以上の高さの展望台に登る行動は、獲物の発見には何の役にも立たない。しかも、そういう場所は「隠れられる景色」を兼ね備えた場所とは言いがたい。 ということで、この話題に関する説明は非常に胡散臭いものであると言わざるを得ない。なお、ジェイ・アップルトンが言う「「眺望」と「隠れ場」は生きていくために必要不可欠なもの」という記述自体は別段、胡散臭いわけではない。但しそれは、大昔の人類が生き延びていくために必要な条件について述べたものであり、それが個々人の経験や伝承を通じてどう受け継がれていくのかについては慎重に証拠を積み重ねる必要がある。安易に「遺伝子が記憶」というような疑似科学的表現を使うべきではない。 なお、念のため、今回の解説を担当された竹田直樹先生のご経歴を拝見したが、ご専門は「パブリックアート研究、景観研究、美術批評、ランドスケープデザイン、美術作品制作など」とのことで、遺伝子、、あるいは行動科学の研究をされているわけでは無さそうであった。今回のように「なぜ人は展望台にのぼりたがる?」というような人間行動の謎を解明しようというのであれば、少なくとも心理学や行動科学の専門家により放送内容の信憑性についてチェックを入れる必要があるように思う。 チコちゃんの番組では、おそらく特定の制作会社が関与しているためと思われるが、時たま、胡散臭い説明がそのまま放送されることがある。「何でもかんでも遺伝情報」で「進化心理学」的?に「説明」することが横行しないように監視を続けていく必要がある。 [※追記] 1月22日にBPO宛てに以下のような意見書を送信した。 この日の3番目の疑問「なぜ人は展望台にのぼりたがる?」に対して「『いいことがある』と遺伝子が記憶しているから」が正解であると説明されましたが、遺伝子はUSBメモリではありません。何かをすればいいことがあるというような情報は記憶できません。解説者は大学の准教授ですが、遺伝子や行動科学の専門家ではありません。いくら娯楽番組であるとはいえ、青少年の視聴者が多いことへの影響を考えますと、このような疑似科学的な表現を用いることには問題があります。 また百歩譲って、「遺伝子が記憶」が比喩表現であることを受け入れたとしても、大昔の人々が「高いところに登って獲物を見つけてから追いかけた」とか「人間は足が遅いのでひたすら追いかけ、獲物が疲れて弱ってきたところを捕まえていた」というのは標準的な狩りの方法ではなく解説者の空想に過ぎません。いずれにせよ、獲物を見つけるために山の上まで登る意味はなく、山頂にある展望台に登りたがることの説明にはなっていません。 |