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ウォーキングコース沿いのヒメツルソバ。最低気温が12月21日から24日まで4日連続で氷点下を記録したことなどから、地上部がすっかり枯れてしまった。2022年1月11日の日記で比較したように、北九州ではヒメツルソバが寒さで枯れることはまずない。岡山のほうが北九州より寒いことを示す証拠になっている。 |
【連載】ヒューマニエンス「“植物” 支配者は周りを動かす」(5)ポリフェノールのウソホント 昨日に続いて、12月11日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス』、 ●「“植物” 支配者は周りを動かす」 についてのメモと感想。 放送で最後に取り上げられたのは、「ポリフェノールはなぜ“体にいい”?」という話題であった。ポリフェノールは、肥満、動脈硬化、がん予防などに効果がある物質として注目されており、
●ポリフェノール(polyphenol)は複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)を分子内に持つ植物成分の総称。 というように定義されている【このほか023年3月26日の日記にも関連記事あり】。 さて、植物にとってポリフェノールは、紫外線を吸収したり、昆虫の消化を阻害したり、病原菌から身を守ったりするなど、生存のために欠かせない防御物質になっているという。 ポリフェノールは体にいいと言われるが、じっさいは人体にとって危険な側面を持っている。ポリフェノールの大きな特徴はたんぱく質にベタベタとくっつくことであり、もし仮にポリフェノールを注射や点滴で体内に大量に取り入れたとすると、体を作るさまざまなたんぱく質と結合してさまざまな機能障害を引き起こす恐れがあるという。にもかかわらず「健康にいい」と言われるのは、ヒトの腸の働きによるという。私たちの腸はポリフェノールを異物として認識しており、ごくわずかしか吸収しない。但しごく一部は体内に入りそれがたまたま、抗肥満作用、抗アレルギー作用、抗がん作用といった特定の作用を示す、と説明された。 緑茶カテキンの1つEGCGは、ごく僅かしか吸収されないが、その吸収されうる微量を培養したがん細胞に振りかけたところ、がん細胞の細胞膜にEGCGが結合することが分かった。これはがん細胞の表面にカテキンの受容体があるためであった。EGCGがより多く結合するとがん細胞の遺伝子にスイッチが入り、アポトーシス(細胞の自然死)を引き起こす。いっぽうEGCGは正常な細胞にもくっつくが、その場合はアポトーシスは起こらず、代わりにマクロファージ(炎症にも関わる免疫細胞)にカテキンが作用した場合は過剰な炎症を抑える効果があるという。このようにいいことずくめではあるが、お茶を飲むという程度の量ではがんを殺すのは難しいと説明された。もっとも何種類ものポリフェノールを組み合わせて摂取すると、良い効果が増幅される場合もある。例えばお茶のカテキンと柑橘類のポリフェノールを一緒に取ると、カテキンの抗肥満作用を3倍に上げることができるという報告があるという。研究ではどうしても1つの物質の単独の効果が検討されがちであるが、食品の場合は、複数の物質の食べ合わせの効果にも目を向けるべきであるという指摘があった。 なお、カテキン以外のポリフェノールにも抗がん作用があることは分かっているが、そのメカニズムはまだ解明されていない。カテキンに抗がん作用があるといっても大量に摂取すれば弊害が出てくるので、カテキンががん細胞にくっつきやすいという性質を活かしつつ、他の抗がん作用を高める薬剤を同時に投与することで、難治性のがんの治療に役立てようという研究が行われているという。 ここからは私の感想・考察になるが、ポリフェノールが体にいいという話は以前から聞いていたが、だからといって緑茶を何杯も飲んだり、ブルーベリー、大豆、チョコレートなどを大量に摂取しても癌が防げるというわけではなさそうだ。もし通常の摂取量程度でカテキンの抗がん作用が発揮されるというなら、疫学調査でもっと顕著なデータが得られているはずである。 放送では全く言及されなかったが、ポリフェノールには、アルツハイマーやパーキンソン病の予防や進行を遅らせる効果があるとも言われているようだ。しかし、これまた、過剰摂取は弊害をもたらすようにも思われる。 けっきょくのところ、最善の対応策は、いろいろな野菜・果物をいっぱい食べるということになるだろうか。 なお、今回の植物に関する放送の概要は、
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