じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

クリックで全体表示。




 10月12日(土)の夕刻はよく晴れ、双眼鏡で紫金山・アトラス彗星を眺めることができた。じっさいの見え方は写真左上のような感じ。ヘール・ボップ彗星ほどの明るさには達していなかった。
 10月13日はさらに条件がよくなりそう。晴れてくれるとよいのだが。


0

2024年10月13日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 歌の『サビ』の語源、足を回すと字が書けない

 昨日に続いて、10月11日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. なんで秋になると紅葉するの?
  2. なんで曲の一番盛り上がる所をサビっていうの?
  3. 【体にまつわる面白い現象】足を回すのと6を書くのは同時にできない。
  4. 胸がドキドキ 雷がゴロゴロ なんで繰り返すの?
という4つの話題のうち、2.と3.について考察する。

 まず、『サビ』の語源であるが、放送では「音楽業界 最大のミステリー」、つまり、確かな語源は分かっていないと説明された。
 日本語の語源に詳しい飯間浩明さん(国語辞典編纂者)&ナレーション、および研究者2名【言語学を研究している芝垣亮介さん(椙山女学園大学)、ポピュラー音楽を研究している川本聡胤さん(フェリス女学院大学)】を交えた討論による説明は以下の通り【要約・改変あり】。なお飯間浩明さんは、前週の「なんで数えるときに「正」の字を書くの?」でも解説を担当しておられた。前週同様、今回の『サビ』についてもX(旧ツイッター、10月11日付け)にポストしておられた。
  1. 楽曲のセクションは、イントロ、Aメロ、Bメロは、サビから構成されるが、イントロはイントロダクション、メロはメロディーというように英語だが、サビだけが日本語。英語でいうとサビの部分はコーラスと呼バレている。
  2. 飯間さんが編集に参加している『三省堂国語辞典』には8万語が載っているが、その中で唯一「語源は不明」と書かれているのが『サビ』。
  3. 飯間浩明、芝垣亮介、川本聡胤の3氏による討論では有力な3つの説が紹介された。
    • 「錆び声説」:『デジタル大辞泉』(小学館)では語源は不詳としながらも、「「さびのある声」などと同語源か。音楽業界ではかなり早くから使っていたという。」という記述がある。ちなみに錆び声は明治時代、端唄で使われた枯れて渋みのある声。しかし、錆び声が語源であると明確に記した資料はない。
    • 「わび寂びの寂び説」;新選国語辞典では「寂」の項目の3番目に俗語として記されており、「ふるびておもむきのあること。」という第一の意味と並列されている。しかし、寂びは失うことからくる美意識であり曲がいちばん盛り上がる部分とは理念的に合わない。
      日本初のサビが入った曲は1936年、古賀政男が作曲した『東京ラプソディー』。それ以降にサビという言葉が生まれた可能性が高い。
    • 「錆わさび説」。わさびの量が多いと表情に変化が出る。そこから曲に変化を生むというところをサビと呼ぶようになった。1941年に発行された『誰でもわかる合唱の知識』に、多分サビがピリッと辛い、その曲の味を決定するという意味で『わさび』にあたるのではないかという考察がある。1941年以降、このわさびの話は音楽関係の本に頻繁に出てくるが、もとの1941年の本で「多分」と記されていることからみても推測の域を出ていない。
    • 日本初のサビは『東京ラプソディー』ではなく、もっと前に存在した可能性もある。
ということでけっきょく語源不明という結論になった。

 ここからは私の感想・考察。といっても、音楽、特に歌謡曲には全く縁が無い私にはそもそも『サビ』がどういう意味なのかさえ知らなかった。
 放送では『東京ラプソディー』(1936年)が日本初のサビだとされていたが、校歌とか応援歌なども最後の部分が盛り上がるように作られていると思う。例えば早稲田大学校歌『都の西北』(1907年)の「わせだ、わせだ」を繰り返す部分はサビに似ているように思う。外国の国歌でも最後のところで国名を連呼する場合がある(ドイツの歌のDeutschlandなど)。これらもルーツは同じではないだろうか。もっともそのことと「サビ」の語源は別問題。
 「演歌などの聴(キ)かせどころの部分。」をサビと呼ぶのであれば、これはさび声とも一致するし、わさびが効いた料理とも一致する。カラオケの普及により、聴くだけでなく自分で歌う人が増えるなかで、どの部分がうまく歌えたのかを話題にする機会が増えて「もっとわさびを効かすように歌ったらどうか」といった使われ方をしたのかもしれない。


 3番目の体にまつわる面白い現象コーナーでは、利き足を時計回りに回しながら「6」の字を書こうとしても同時にできないという現象が紹介された。私もさっそく試してみたが、「6」を書くことに集中すると、足の動きが逆周りになったりしてうまく回らないことが確認できた。
 坂井建雄さん(順天堂大学)によれば、右手や右足を動かすときは左脳、左手・左足を動かすときは右脳が使われる。手と足が逆の動きをしているので脳が混乱しうまく書けなくなるということであった。但し何度も練習すると体が徐々に覚えてできるようになる。
 浅野ゆう子さんから「トレーニングすることでどういう利点があるのか?」という質問が出されたのに対してチコちゃんは「そりゃもう、人に自慢ができるから」と答えていたが、もう少し実用的な価値があるかもしれない。例えば、
  • 車、重機、飛行物体などを動かす時に、手足を全部使って複雑な操作ができるようになる。普通は右手・右足、あるいは左手・左足が連動しやすいが訓練することで手と足で独立した操作ができるようになる。
  • 大相撲の力士であれば、右手と右足を独立して動かすことで特別の技をかけることができる。
  • このほか体操競技、水泳などでも役に立つかもしれない。


 次回に続く。