じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 数日前、半田山植物園内のベンチで喫煙をしている男性を見かけた。半田山植物園は園内喫煙となっており、ベンチの柱にもちゃんとその掲示があるので、さっそく禁煙を呼びかけた。
 ところが、自分でも理由が分からないのだが、私が発した言葉は、

●Sorry.  Here. No-Smoking!

という英単語3語であった。その男性は「分かりました」といってタバコの火を消して携帯灰皿に収納したが、どう見ても外国人には見えなかった。

 「ここは禁煙ですよ!」という日本語ではなく、なぜ英単語を発したのかは自分でも分からない。交通信号機の配列に違和感を覚えたのも同様だが、もしかするとこれらは認知症の始まりであり、自分がいま外国にいると錯覚したためかもしれない。


2024年11月8日(金)





【連載】あしたが変わるトリセツショー『がん対策』(4)がんの予防・治療と免疫力/『がん防災チャンネル』と『がん情報チャンネル』

 昨日に続いて、10月17日(木)に初回放送された、

がん対策

についてのメモと感想。

 本題に戻る前に、以下のような点について考えを述べておきたい。本日はそのうちの1.を取り上げる。
  1. がんの予防・治療と免疫力
  2. 「がんの原因の何パーセントは××」という表現の確率的な意味
  3. 検査の感度、特異度、陽性的中率

 免疫力とがんについては、昨日の終わりのところで、押川勝太郎先生のがん治療でNK細胞を増やしても意味がないという解説動画をリンクさせていただいたところである。
 押川先生は別段、コピーミスで発生したがん細胞がNK細胞によって排除されている、という意味での予防効果を否定しているわけではなさそうだ。私の理解した範囲で論点を要約させていただくと以下のようになる【改変あり】。
  1. 例えばすでに大腸がんにかかって手術を受けた人の再発予防のための確立した治療法としては抗がん剤と全粒粉の食事療法をやったら良いかもしれないというのがあるが、それらは大人数の臨床試験あるいは観察研究で再発率に有意差があり確認されたものである。
  2. 抗がん剤を使用すれば白血球やリンパ球やNK細胞が減る可能性があるがそれでも抗がん剤を使用したほうが再発率が下がる。
  3. NK細胞についてはガイドラインには記されていないが、マスコミの報道などでは、いろんなことをしたらNK細胞が増えたという記事が出たりしている。
  4. NK細胞が増えたことで再発率や発症率が下がったという直接的な証拠が無い。「NK細胞さえ増えれば良い結果になるはずだ」と推測をしているだけ。
  5. よく笑うことでNK細胞が増えたといった事例は、それ自体は患者さんに精神的に良い影響を与えるかもしれない。しかしそれをがん治療に役立てるとか、がんそのものを抑制する免疫力向上に役立つという方向にもっていくと話がおかしくなる。
  6. 臨床試験を始めるための理由づけとして、理論上これでうまくいくはずだというような基礎研究をやることはありうる。しかし、「基礎研究で理論上いいはずだからがん治療にも役立つ、がん発症抑制できる」というのは理論が飛躍しすぎ。
  7. がん患者さんにとってどれだけ意味があるかをあまり考えずに、単にいろんな研究者がいい結果が出たということをそのまま報道していることが多い。
 じっさい、世間では免疫力をアップするというふれこみでいろいろな健康食品、健康法、代替療法などが宣伝されている。免疫力を上げること自体は悪いことではないと思われるが【但し自己免疫疾患の恐れあり?】、それらが標準治療以上の効果をもたらすと思い込むのは危険ではないかと思う。

 なお私は、押川先生とは別に、がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろというチャンネルもしばしば視聴させていただいている。こちらのほうでは、免疫力向上の効果に肯定的な動画が複数発信されている。ざっと検索させていただいたところ、以下のようなコンテンツがヒットした。



 チャンネル登録者数は、佐藤のりひろ先生の『がん情報チャンネル』が17.4万人、いっぽう最初に挙げた押川勝太郎先生のほうは8.48万人となっている。
 上掲の通り、押川先生のほうは、大規模な臨床試験やそれに基づいた標準治療のガイドラインに基づいて手堅い情報提供をしておられるような印象を受ける。いっぽう佐藤先生のほうも、一流学術誌などに掲載された論文に基づいて情報を提供しておられる。但し、佐藤先生のほうは、

●(がん予防や再発抑制にとって)○○は有効という論文が発表された。

という研究を断片的に紹介しているだけで、

●(がん予防や再発抑制にとって)○○の有効性は認められなかったという論文が発表された。

という否定的な研究がどの程度あったのかは紹介されていない。

 もっとも、研究の宿命として、今までは未確認であったことに関して「○○は有効」という発見は注目を浴びやすいし、論文として掲載されやすいし、さらに研究費の獲得にも繋がりやすい。いっぽう「○○は無効」という否定的な研究は、発見としての意義が認められにくく、論文掲載をリジェクトされてしまう恐れすらある。そういう点では、押川先生のコンテンツのほうが堅実であるように見える。

 しかし、わらにもすがりたいというがん患者の気持ちを察すれば、「○○は役に立たない」という情報よりは「○○が有効であった」という情報のほうが、たとえ1本の論文だけであっても希望を与えてくれる可能性がある。佐藤先生の登録者数のほうが押川先生より約2倍多いというのは、そんなところにあるのかもしれない。また、佐藤先生の提唱している免疫力アップの方法は、誰でも容易に実践できるものである。運次第と言われるがんの予防に100%役立つとは言えないにしても、とりあえずできることはやっておいて損にはならないという考え方もあるかと思う。【←とはいえ、免疫力アップをうたった健康食品等の過剰な宣伝や、末期がんの患者さんの弱みにつけこんだ高額な自費治療の勧誘には注意が必要】。

 次回に続く。