じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 近隣のドラグストアで、ブルーレイディスク(BD-RE、5枚入り)とDVD-R(10枚入り)を4割引で売っていた。学生時代からの貧乏性が抜けきれない私は、4割引商品というとついつい手を出してしまう癖があり、あまり深く考えずに購入してしまった。帰宅後に1枚あたりの値段(税別)を計算してみると、
  • BD-RE:(1298円ー519円)÷5=155.8円
  • DVD-R:(1087円ー435円)÷10=65.2円
であり、ネット通販ではもっと安い商品もあったが、以前ホームセンターで買っていた価格よりは割安になっていた。
 もっとも最近は終活の一環として録画していたBD-RやDVDを大量に廃棄しており、いまさら新しいディスクを買うのは矛盾しているようにも思える。じっさい最近は、私自身ダビングすることはすっかりなくなった。某家族がハードディスクの残量が無くなるほど大量に録画するのでその残量を空けるためにやむなくダビングしている程度である【←せっかくダビングしても、録画再生でもう一度視ることは殆ど無いはずなんだが】。
 実はまだ戸棚には未使用のBD-Rが70枚前後、BD-REが20枚前後、DVD-Rが100枚前後保管されている。今回は4割引につられて衝動買いしてしまったが、これをもって私の人生で最後の購入ということにするつもり。
 なおブルーレイディスクはすでに過去の商品になりつつあるようだ。ウィキペディアによれば最近の動きは以下の通り。
  • 2023年1月23日、パナソニックが同年2月末をもって、2006年に開始した録画用Blu-rayディスクの生産・出荷を完了すると発表。
  • 2024年7月1日、ソニーが録画用Blu-rayディスクの生産・出荷を段階的に終了することを発表。

 こちらの記事によれば、「録画したものをディスクで残す」という市場は、いまや日本くらいにしか存在しないという。実際、私自身もダビングしたBDやDVDの殆どは再び再生することなく廃棄してしまった。今になって気づいたことだが、テレビ番組はハードディスクへの「見て消し」だけで十分という気がする。



2024年11月26日(火)






【連載】あしたが変わるトリセツショー『がん対策』(18)ナッジの応用(11)厚労省公開資料からナッジを学ぶ(8)ナッジの活用の補足/効果検証の議論

 昨日の続き。放送内容に関連した話題として、ネット上で公開されている、

溝田友里(2021).ナッジ理論等の行動科学を活用した健康づくりの手法についてー具体的事例を交えてー

というパワーポイント・スライドをもとに、ナッジについて考察をしていく。今回が最終回。

 上掲のスライド資料の終わりのところには、『その他、ナッジを活用した運用の工夫』という補足説明が記されていた。ナッジをひとまとめに説明するのではなく、

●ナッジについての代表的な活用例→別の話題(ソーシャルマーケティング)→ナッジについてのその他の活用例

という構成で2段階に分けてナッジについて説明しているのは、聴衆の関心を維持するためではないかと思われた【1つの話題についてあれもある、これもあるというように長々と説明すると飽きられてしまう恐れがある?】。もしくは、講演時間が足りなくなった場合に、省略できるような配慮かもしれないが。

 スライド資料で挙げられたその他の活用例は以下の通り【要約・改変あり】。なお「→」以下は私のコメント。
  1. 選択肢を広げすぎない:ある程度日程を絞る。受診期間、予約期間を区切る。
    →アイエンガーのジャム実験の話かと思ったが、そうではなく、期間を長々と設定してしまうと「いつでも受けられる」と受け止められ、申し込みを後回しにしてしまう人が出てくるためのようだ。なので、「選択肢を広げすぎない」というよりは、締め切りを過ぎると無効になるというタイプ(テレビ通販で言えば「この放送終了後30分以内のお申し込みの方に限ってお得な価格で提供します)というような手法に準じたものと考えられる。
  2. コミット(宣言)の利用>申込み時に受診予定を自分で書き入れてもらう/職場や家族に受診日を伝える
    →コミットについては11月21日に引用したナッジの基礎知識でも説明されている。1970年代に刊行された行動分析学の本の中では『セルフコントロール』の手法の1つになっていた。このWeb日記に「今年は○○に取り組んでいきたい」と記すのもコミットメントの1つと言える。
  3. タイムリー:節目年齢、引越し、結婚、出産、定年退職(職場の健康組合から国保に変わる)等、それぞれの人にとって節目となるタイミングに重点的にアプローチ。他の疾患での受診時などに声かけする。啓発イベントやキャンペーンを単発で終わらせず、連動して「その場で申し込めるように」
    →タイムリーの時期は個人によってバラバラなのでそれに合わせるのは難しいように思う。また出産とか「他の疾患での受診時」などは、自治体の検診を受けなくても必要に応じて保険診療の範囲で検査を受けられるように思う。
  4. デフォルトの利用:健康診断受診時にがん検診をセットで受けられる場合などを活用。「オプションで申し込む」ことを強調するのではなく、「セット受診であること」を強調。【受けるかどうかをチェックしてもらうのではなく】、デフォルトは「受ける」として、いつにするかなどを選択。
    →私の現職時代もそうだったが職員の定期健診では受診項目はセットになっていて、何らかの事情が無い限りは全項目を機械的に受けるようになっていた。岡山市の検診は、肺(レントゲン)、胃(バリウム、もしくは胃カメラ)、大腸(便潜血検査)はバラバラになっていた。


 スライド資料の最後の頁には、『効果検証結果のまとめと資材利用のポイント』というまとめが記されていた。

 まず、『効果検証結果のまとめ』については、

提供している資材を用い、検診実施体制を整えることにより、コール・リコールにより、数〜5倍程度の受診率向上が可能

と記されていた。
 また、『資材利用のポイントー成功・失敗の要因からー』としては、
  1. 紙の大きさ、紙質(厚さ)など資材の仕様を変えずにそのまま使う
  2. コール・リコールに合わせ、集団検診や個別検診の受け皿を十分に確保しておくことが必要(断ることがないように、日程、人数など確保する)
  3. まったく受けるつもりのない「無関心者」よりも、「関心者」や「意図者」のほうが受診率を上げやすい⇒ 予算が限られる場合は、まったく音沙汰のない人よりも、一度申し込んだものの受診していない 人や過去に受診経験のあるがその後受けて人などを優先したほうが効果が出やすい
  4. 検診の案内を受け取ったらすぐに申し込める体制が必要(日を空けないで受付)
  5. 一度の通知の効果は3か月程度⇒ 一年に何度も受診の山をつくると効果的(コール、リコール、年度の締切間際など
といった経験談が記されていた。

 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、まず、私のような実験心理学の立場で研究に取り組んできた者としては、上掲の「効果検証」にはやや不満が残る。要するに、この種のタイプの実践活動では、

●「あれもいい、これもいい」というように、とにかく役に立ちそうなことを何でもやってみたところ、受診率の向上が得られた。

という「パッケージ」の効果が示されただけで、その中のどういう要因が有効でどういう要因が無駄であったのかは確認できない。このあたりの議論は、
  • 2000年9月27日園芸療法・園芸福祉を考える(2)「園芸療法に関する公開講演会」
  • 長谷川芳典(2001).スキナー以後の行動分析学(10): 高齢者福祉におけるセラピーの2つの役割 〜心理学はどう関われるのか〜
  • 2006年8月23日「学習療法」認知症に効く?(4)セラピーは手段か目的かという議論
  • 2006年8月27日「学習療法」認知症に効く?(5)「お墨付き」よりも大切なこと
などで考察したことがあった。ま、限られた予算の中でよりよい施策を実施していくためには細かい要因分析まで手が回らないことは確かであるし、また、個々の要因の働きは独立的ではなく複数の要因の相互作用として効果をもたらしている可能性があるので、「パッケージ効果では効果検証にならない」とは必ずしも言えないかもしれない。但し、パッケージがうまく働かなかった時や伸び悩みが生じた時には、個々の要因に立ち返ってその原因を探る必要があるだろう。

 今回取り上げたナッジの手法は、

行動科学の知見(行動インサイト)の活用により、「人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法

というように特徴づけられており、親子の象の喩えにあるように、リバタリアニズムやパターナリズムとは区別され、公衆衛生政策や保健政策との相性がいいとされている。但し、この手法だけで100%の人の行動を変えられるのは難しいように思われる。このWeb日記にも何度か書いたことがあるが、有効性という点だけから言えば、がん検診の受診率を高める最善の方法は、

●自治体の定期健診を受けた人(何らかの疾患に罹っている人が治療の一環として同一内容の検査を受けた場合を含む)に対しては、国民健康保険料もしくは共済組合等の保険料を5%割り引く。

ということになるだろう。この場合、「検診を受けない人の保険料を割り増しする」というと何だか罰金をとられたみたいで強制されたように感じるが、「検診を受ければ保険料が割り引かれる」というと何となくお得感が出てきて自分の選択として受診しようという人が増えてくるかもしれない。検診で早期発見をすることは医療費の削減にも繋がるので合理的とも言える【←早期発見で医療費の少ない治療を受け、最終的にポックリ死や老衰で亡くなる人が増えれば、全体的な医療費は削減できるが、早期発見できずに手遅れで亡くなる人が多いほうが医療費がかからない可能性もある。とはいえ、お金ではなく人の命の問題なので、多くの人ができる限り健康寿命を延ばし天寿を全うできるような施策をとるべきであろう】。

 余談だが、岡山市の特定健診は40歳以上75歳未満の人(500円)となっている。10月に72歳となった私自身としては、75歳になったらもはや健診は受けられず見捨てられてしまうのかと思っていたが、こちらによれば、75歳以上の人には『後期高齢者等健診』というのがあるようだ(がん検診も別に受けられる)。検診内容は以下の通りで500円。
問診、診察、身体測定、血圧測定、血液検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、AST、ALT、γ-GT、空腹時血糖又はHb A1c、血清アルブミン)、尿検査(尿糖、尿たんぱく)
となっている。いっぽう75歳未満の特定健診の検診内容は、
問診、身体測定(身長、体重、腹囲、BMI)、血圧測定、血液検査(中性脂肪、HDL、LDL、総コレステロール、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)、空腹時血糖(食後10時間以上のみ)、HbA1c、血清クレアチニン、尿酸)、尿検査(尿糖、尿蛋白)、医師が必要とした場合は、詳細な検査(貧血検査、心電図検査、眼底検査)を追加することがあります。
となっていて若干違いがあるようにも見えるがよく分からない。ま、75歳にもなれば体のどこかに異状が生じ、保険診療の範囲でくわしい検査を受けることができるとは思うが。