じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 火曜日、近隣のスーパーに買い出しに行った。購入したのは結果的にすべて20%〜半額の割引商品ばかりだった。
 最近YouTubeで年金生活をしている高齢者のインタビュー動画を好んで視聴しているが、私の生活はこの画像の通りの「割引人生」。

2025年02月5日(水)





【連載】あしたが変わるトリセツショー『100歳×100人徹底取材!1万年の健康パワーSP』(4)高齢者調査研究の留意点、喫煙所に代わる交流の場

 昨日に続いて、2024年12月26日初回放送【私自身が視聴したのは1月8日の再放送】された表記の番組についてのメモと考察。今回からは
  1. 食   “100歳の島”で見つけた「老化を防ぐ食生活 〜食物繊維〜」
  2. 運動  運動が続かない人におすすめ「ちょこ活 〜日常の中でちょこちょこ動く〜」
  3. 究極  世界中の研究機関も注目する「究極の健康法 〜つながりを持つ〜」
という3つの秘けつのうちの、3番目の「究極の健康法 〜つながりを持つ〜」について考察する。

 放送では30万人以上の論文データ【148 件の研究、308,849人の参加者】から導かれた『寿命に影響を与える生活習慣ランキング』が紹介された。なお、出典は
Julianne Holt-Lunstad 1 , Timothy B Smith, J Bradley Layton (2010).Social relationships and mortality risk: a meta-analytic review.
という論文であり全文を無料で閲覧することができる。

 上掲の論文に基づき、放送では以下のようなランキングが紹介された。
  1. 【社会的】つながり
  2. タバコ
  3. お酒
  4. 運動
  5. 肥満


 ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、まず、高齢者を対象とした研究では、以下のような点に気をつける必要があるように思う。
  1. ちゃんとした比較が行われているのか?
     ある地域の百寿者だけを調査して何らかの特徴的な習慣が見出されたとしても、それが百寿者だけ特異的な習慣なのか、それともその地域のあらゆる人の習慣であるのかは区別できない。「この行動は百寿者がやっている」だから「この行動をすれば長生きする」ということには必ずしもならない。Aという行動を行っている集団と行っていない集団に対して追跡調査を行い10年後や20年後の生存率を比較した、というような分析をしないと確かなことは言えない。
     例えば百寿者の多くがお酒を飲んでいたからといって「飲酒をすれば長生きできる」ということにはならない。もう少し若い人たちを飲酒群と禁酒群に分けた上で10年後、20年後の生存率を比較しないと何とも言えない。
  2. サンプリングが適切に行われているか?
     まず、どの国・地域で調査されたものなのかに留意する必要がある。国・地域によっては医療体制や衛生環境が悪いために平均寿命が短い場合がある。また先進国においても医療費が高額で健康保険が使えないような場合は、高度な先進医療を受けられない人が増える。逆に【日本のように】医療が充実して高齢者が増えれば、がんになる確率も高まったりする。
  3. 男女の比率に留意しているか?
     百寿者をまんべんなく調査すると、女性の比率が圧倒的に高まることは間違いない。となると、調査の結果「百寿者の特徴」が見出されたとしても、それは「高齢女性の特徴」であって男性には当てはまらない可能性がある。例えば「友だち同士で集まって会話を楽しむ」というのは高齢女性ではありがちだが、高齢男性は一人の時間を好むかもしれない。というか、例えば高齢者施設内では女性が9割、男性は1割というケースも珍しくない。となると女性同士では会話は弾むが、男性では会話をしたくても気軽に喋れる同性の相手がそもそも居ないという可能性もある。

 上掲の30万8849人の論文データに関しては、
北米が51%、ヨーロッパが37%、アジアが11%、オーストラリアが1%であった。すべての研究において、初期評価時の参加者の平均年齢は63.9歳で、性別は均等であった(女性49%、男性51%)。【訳はGoogleによる】
と記されており、男女の比率は均等と言えるが、「北米とヨーロッパの合計が88%」に対して「アジアは11%」ときわめて少なく【日本11560人など、中国946人など、台湾4049人など】、この研究で得られた結論を日本人にそっくり当てはめることができるかどうかは慎重さが必要かと思う。

 リンク先の論文の図6には放送内容と同様のランキングのグラフが掲載されていたが、より詳しく見ると、「社会的つながり」は「Social Relationships: Overall findings from this meta-analysis」、「Social Relationships: High vs. low social support contrasted」、「Social Relationships: Complex measures of social integration」に分けて集計されている。また放送で2位にランクされた「タバコ」も「Smoking < 15 cigarettes daily」と「Smoking Cessation: Cease vs. Continue smoking among patients with CHDB」に分けられていた。タバコを吸わないことも重要だが、吸っている人が吸うのを止めることもまた重要なファクターになる。
 このタバコの危険性に関係するが、最近、YouTube動画などで有名人ががんになったことを公表したり、またがんで亡くなったというニュースを耳にする機会が多くなったように思う。その大半がヘビースモーカーであったことを見ると、本来は80歳、90歳まで長生きできたはずの人が喫煙が原因で60歳代、70歳代でお亡くなりになったケースも多いのではないかと思う。
 そんななか、興味深い、といっては失礼だが、山田五郎さんの動画の中で、先日がんでお亡くなりになった森永卓郎さんと原発不明がんで治療を続けておられる山田五郎さんが放送局の喫煙室でたびたび顔を合わせて会話をしていたというエピソードが語られていた。このケースに限らないが、大学構内の敷地内全面禁煙を実施した際にも、「喫煙所は交流の場になっている」という理由で喫煙所撤去に反対した喫煙者が複数おられた。たしかにこれも一理あり、それまで喫煙所で会話を交わしていた常連たちは、全面禁煙実施により交流の機会を失うことになる。とはいえ喫煙所を存続させることは喫煙者への禁煙支援を妨げることになるし【せっかく禁煙を決意しても喫煙所があることでついついタバコを吸ってしまったり、喫煙所での交流が好子となってたびたび喫煙所に通うようになる】、喫煙者の友人の非喫煙者までが喫煙所に同行させられて受動喫煙の被害を受ける恐れもある。ということで、喫煙所に代えて、何らかの社会的つながりの場を設けることが望ましいとは思うのだが、現職中には何も実現できなかった【あくまで私の趣味からの発想だが、花壇を増やしてボランティアに世話をしてもらうようにすれば花好きの人たちが集まってきたとは思う。】


 次回に続く。