【連載】あしたが変わるトリセツショー「軽度難聴・突発性難聴」(6)補聴器
8月16日に続いて、2025年7月10日に初回放送された、NHK『あしたが変わるトリセツショー』
●改訂版・耳のトリセツ「軽度難聴・突発性難聴」
についてのメモと感想。
放送の終わりのあたりでは、すでに聞こえづらくて困っている人のための対策の1つとして補聴器の適切な使用法が紹介された。
じっさいに登場した51歳男性の場合は、以下のような手順で補聴器の装着に至った。
- 【補聴器については】50歳でつけるのはちょっと早いかなという抵抗があった。
- 【自覚症状】低い声というかボソボソ声は一切聞こえない。
- 【調整】認定補聴器技能者により、聞こえづらい音の高さに合わせた音量調整が行われた。この男性の場合は1000Hz以上の高い音が聞こえづらいのでその部分だけ音量を大きくするように調整された【←本人が「低い声が聞こえない」と言っていたことと矛盾するようにも思うが】。
- 補聴器使用から2か月後の取材では、葉っぱや風の音が聞こえてくるようになり、仕事上の打ち合わせでも聞こえるようになったぶん、たくさん発言できるようになった。
このほか、日常雑音が無い条件でも聞き間違いが多かった男性(65歳)の事例でも補聴器使用により聞き取りや記憶が大幅に改善していた。
補聴器使用は生活の質の改善をもたらすばかりではない。補聴器をつけなかった人に比べて、認知症リスクが2割減る、うつのリスクが1割減るといった報告もあるという。
なお補聴器は専門店に通い、調整を繰り返す必要があり、期間の目安は3か月と言われている。
ここからは私の感想・考察を述べる。まず補聴器の話題が取り上げられたことに関して、ChatGPTに、
●日本では義歯やインプラントの治療は保険診療となりますが、難聴者が補聴器を購入する際には全額自己負担となります。なぜ保険が適用されないのですか?
と尋ねてみた。回答は以下の通り。
とても良いご質問です。
確かに、歯の欠損に対する **義歯(入れ歯)やブリッジ、インプラントの一部**は保険診療でカバーされるのに対して、難聴に対する **補聴器** は原則として健康保険の対象外で、全額自己負担です。この違いは「医療行為」と「福祉用具」の線引きに由来します。
- 医療保険の対象は「治療行為」
日本の健康保険制度は、
- 病気やけがの **治療**
- 体の機能を回復するための **医療行為**
にかかる費用を対象としています。
歯の義歯やインプラント(保険適用の範囲に限る)は、歯科医が行う外科的・補綴的治療であり「医療行為」です。したがって健康保険でカバーされます。
- 補聴器は「治療」ではなく「補助具」と位置づけられている
補聴器は、聴力を「治す」ものではなく、残っている聴力を活用して音を聞きやすくする **補助機器** とされます。
眼鏡と同じく、医師が処方するのではなく、販売店や認定補聴器技能者が調整することが多いため、制度上は **医療行為ではなく福祉用具** に分類されています。
そのため健康保険の枠組みでは対象外となっています。
- 現在の補助制度
ただし、全く公的支援がないわけではありません。
- **身体障害者手帳(聴覚障害)を取得した人** → 自治体を通じて補聴器の給付や補助を受けられる(公費負担)。
- **高齢者向けの自治体独自補助** → 一部市区町村で、高齢難聴者に対して購入費用の一部助成制度がある。
- なぜ見直されにくいのか
- * 補聴器は「治療」よりも「生活の質(QOL)改善」の要素が強いとみなされている。
- * 個人差が大きく、精密調整や機種選びの自由度が高いため、医療保険で一律に給付するのが難しい。
- * 高齢化で難聴者数が膨大であり、保険適用にすると財政負担が非常に大きくなる。
- ? まとめると:
**義歯は医師が行う治療行為なので保険対象、補聴器は生活補助具とされているので保険外** という制度上の違いです。
ただし近年は「補聴器を使わないことが認知症リスクを高める」などの研究もあり、医療保険に含めるべきではないかという議論が広がっています。
なお、補聴器やメガネの公的補助が受けられる国についても尋ねたところ以下のような回答をいただいた【以前にも一度質問したような?】。
- | 国・地域 | 補聴器の公的補助 | 眼鏡の公的補助 |
- | --------- | -------------------- | ----------- |
- | オーストラリア | 無償提供(基本)+有料アップグレード可能 | ― |
- | カナダ(州) | 最大500ドルの支援 | ― |
- | イギリス(NHS) | 無償貸与(基本) | ― |
- | フランス | 全額補償バスケットあり | 全額補償バスケットあり |
- | 台湾 | 小児に全額補助 | ― |
- | イスラエル | 小児全額補助/成人は一部補助 | 小児に補助あり |
- | ドイツ | 特定条件下で補助あり | 同上 |
- | リトアニア | ― | 小児に最大70%補助 |
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