じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 9月7日の早朝、西の空に月の入り直前の月齢14.6の月が見えていた【写真下】。前日に撮影した日の入り【写真上】に比べるとかなり左方向(南方向)にズレていた。
 ところで9月8日早朝は皆既月食が見られる(皆既食は02時30分〜03時53分で全国どこでも同時刻)。このことでふと思ったが、皆既月食は地球の影に月が入る現象であるゆえ、「地球の影」が西の地平線に沈む方位は月の入りとほぼ一致するはずである。いっぽう太陽は「地球の影」と180°反対の位置にあるので、日の入りの方位が270°+αであるなら「地球の影」の方位は270°-αとなるはず。皆既月食が月の入りの瞬間に起こった場合は「地球の影」と月の入りの方位は一致するはずだ。

 というような仮説を立てて9月7日、9月8日のの日の入りと月の入りの方位をこちらこちらで調べたところ、
  • 日の入りの方位
    • 9月7日:277.8
    • 9月8日:277.3
  • 月の入りの方位
    • 9月7日:255.0
    • 9月8日;263.3
    となっており、
    • 日の入りの方位を、270°+αとすると、7.3<α<7.8
    • 月の入りの方位を、270°-βとすると、6.7<β<15.0
    となってαが増加しβが減少する途中でα=βとなる瞬間(皆既月食)が存在することが分かった。

 但し実際の皆既月食は月の入り以外の時間帯にも起こりうるし、また月の公転軌道が赤道とズレていることなどから、このαとβの値だけで月食の時間帯を予想することはできない。【もしそうであるなら満月のたびに月食が起こるはずだ】。

2025年09月7日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「ドライクリーニングってなに?」/「ドライ」の語源をめぐる2つの説(ウィキペディアもあてにならない)

 昨日の続き。9月5日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日の話題は以下の通り。
  1. 女の人が腕時計を内向きにつけるのはなぜ?
  2. ドライクリーニングってなに?
  3. 野球の「ショート」は何がショート?
本日はこのうちの2.について考察する。

 放送では「ドライクリーニングは有機溶剤で洗うこと」が正解であると説明された。大手クリーニング会社で洗濯の研究をしている長谷川千恵さん&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. ドライクリーニングの「ドライ」とは水を使わないという意味。
  2. 水の代わりに使っているのは有機溶剤。石油などから作られる液体で、除光液、灯油、シンナーなども含まれる。水にぬれたという意味の「WET」の反対語として「DRY」という言葉が使われる。
  3. 洋服にはそれぞれ正しい洗濯方法がある。服の裏のタグにその方法が書かれてある。クリーニング店では、その表示だけでなく、汚れの種類や服の素材を見て洗い方を決めている。
    • 汚れの種類
      水に溶けやすい汚れ(ジュースや醤油など、水溶性のシミ)。油に溶けやすい汚れ(口紅や揚げ物のシミなど)がある。油性の汚れは水で洗っても反発しあい汚れは落ちないが、油と同じ性質の有機溶剤で洗うと油性の汚れと溶け合い汚れを落とすことができる。
    • 洋服の素材
      水で洗うと形が崩れやすいものがある。例えばウールは繊維の表面がウロコ状になっている。これを水に浸すとウロコが開き、この状態で揉まれると繊維同士がひっかかって密になる元に戻らなくなる。これが縮む原因。絹、綿、麻なども水を吸収すると形が変わりやすいのでドライクリーニングがオススメ。
  4. 実際に綿と同じ構造でできているティッシュで折った折り鶴を水、有機溶剤でそれぞれ洗うと、有機溶剤では形が崩れにくいことが示された。
  5. 但し、同じ綿でも、シーツ、シャツ、ズボンなどは引っ張ったりアイロンをかけたりして元の形に戻しやすいので水で洗える。
  6. 同じ綿でもコート・ジャケットは立体的だったりいろんな種類の布を重ねて作っているのでアイロンでは戻りにくい。
  7. 家庭用洗濯機では有機溶剤は使えない。ドライクリーニングには専用の機械と専門の国家資格を持った人の操作が必要。
  8. 【補足説明】ドライクリーニングが始まったきっかけは、一説には19世紀頃のヨーロッパで汚れた洋服の上に偶然ランプの燃料をこぼしてしまった部分がきれいになったことで思いついたと言われている。

 ここからは私の感想・考察を述べる。
 まず今回の放送ではドライクリーニングの歴史については「一説」が紹介されただけであった。ウィキペディアの説明は以下の通りであった。
ドライクリーニングは1825年に、フランスでジョリー・ブラン(Jolly Belin)が商業ドライクリーニングの始まりとされる。アメリカでは、1821年に Thomas L. Jennings が、「dry scouring」という名で特許を得た。 これを1855年のパリ万博に、Jolly Belin の娘婿がドライクリーニングショップを出展して、一気に広まった。
なお、ドライクリーニングの語源は、珪酸アルミナ(粘土質)に去勢牛の胆汁(界面活性剤)を混ぜたものをシミに塗り、海綿(天然のスポンジ状のもの)で乾くまで(ドライイング)擦って綺麗にしたしみ抜き用語から転化したもので、現在の洗浄方法を表すものではない。
 上記の説明では「ドライクリーニングの語源は、...現在の洗浄方法を表すものではない。」となっており、今回の放送の「水にぬれたという意味の「WET」の反対語として「DRY」という言葉が使われた。」という説明とは異なっていた。さっそくChatGPTに以下のように尋ねてみた。
【質問】
「ドライクリーニング」の「ドライ」の語源は、
●水にぬれたという意味の「WET」の反対語として「DRY」という言葉が使われた。
という説と、
●ドライクリーニングの語源は、珪酸アルミナ(粘土質)に去勢牛の胆汁(界面活性剤)を混ぜたものをシミに塗り、海綿(天然のスポンジ状のもの)で乾くまで(ドライイング)擦って綺麗にしたしみ抜き用語から転化したもので、現在の洗浄方法を表すものではない。
という2つの説があるようですが、どちらが正しいですか?

 いただいた回答は以下の通り。

結論から言うと、**正しいのは前者(WET の反対語としての DRY)** です。
  1. 一般に認められている「DRY」の由来
    • 「ドライクリーニング (dry cleaning)」は、**水 (water) を使わない** という意味で「ドライ」が使われています。
    • 19世紀半ばにフランスで石油系溶剤(灯油など)を使って衣類を洗ったのが始まりとされます。
    • ここで「dry」といっても「完全に乾いている」という意味ではなく、**「水を使わない(=wet ではない)」** という相対的な意味です。
      英語の専門辞典(Oxford English Dictionary など)にも *dry cleaning = cleaning with an organic solvent rather than water* と説明されています。
    • 後者の説(胆汁+珪酸アルミナ+スポンジ説)について
      • この説は、日本のクリーニング関係の一部資料や伝聞的な解説に見られますが、**語源学的にも歴史的にも裏づけはありません**。
      • 胆汁や粘土質を使ったシミ抜きの民間的な手法は古代から存在しましたが、それを「ドライ」と呼んだ記録は確認されていません。
      • 「drying(乾かす)」と「dry cleaning」が混同された結果、生まれた民間語源(folk etymology)の可能性が高いです。
    • ### まとめ
      • 「ドライクリーニング」の「ドライ」は、**水洗い (wet cleaning) ではなく、溶剤洗浄である**ことを示す用語。
      • 「胆汁や粘土を塗って乾かす方法」から来たという説は、裏づけがなく民間語源の一種と考えられます。


 ではなぜ「後者の説」が広まったのだろうか。さらに質問させていただいたところ以下のような詳細な回答をいただいた。

結論から言うと―正しいのは前者、「水(wet)洗いではなく“水を使わない”=dry だから」という語の成り立ちです。英語辞書や技術系の基礎資料は “water の代わりに溶剤で洗う方法” を “dry cleaning” と定義しており、語の初出も19世紀まで遡ります(OED は名詞の用例を1778年、M-Wは「dry cleaning」の初出年を1855年とします)。つまり “dry” は wet の対概念で、乾燥(drying)作業を指すわけではありません。 ([Encyclopedia Britannica][1], [メリアム・ウェブスター][2], [オックスフォード英語辞典][3])

一方で「珪酸アルミナ+去勢牛の胆汁を塗って海綿で“ドライイング”した染み抜き用語が転化した」という説は、裏付けのある一次資料が見当たりません。現在ウェブで流通している文言は、日本語版Wikipediaの無出典記述がそのまま転載・派生したものと見られます(DBpediaの日本語ページにも同文が機械反映されています)。英語圏の辞書・百科、業界史ではこの語源説は確認できません。 ([ウィキペディア][4], [DBpedia Association][5])

なぜこの話が広まったのか
推測できるルートは次のとおりです。

* 日本語版Wikipediaに、典拠のない「胆汁・海綿・ドライイング」起源説が書かれ(出典欄にも根拠なし)、それを各種サイトが引用・再利用した。DBpediaの記述一致がその痕跡です。 ([ウィキペディア][4], [DBpedia Association][5])
* もともと「胆汁石けん(Gallseife)」のように牛胆汁を使う“染み抜き”製品は欧州で古くからあり、日本でも紹介・販売されています。おそらくこの実在の染み抜き技法と「dry=水を使わない」という意味が混同され、もっともらしい“民間語源”として定着した可能性があります(ただし “dry cleaning” の語の成立とは別物)。 ([FREDDY LECK][6], [ハンズ][7])

補足(日本での説明の主流)
日本のクリーニング業界や一般向け解説でも、「ドライ=水を使わず有機溶剤で洗う」という説明が基本線です。起源については、19世紀フランスでの“ランプ油こぼし”に端を発するという通俗史観がよく紹介されます(語源の是非とは別の“発見”エピソード)。 ([東京都クリーニング生活衛生同業組合][8], [ウェザーニュース][9])

## 結論
* “dry cleaning” は「水を使わない(=wet の反対)」が語の核で、前者の説が正しい。 ([Encyclopedia Britannica][1], [メリアム・ウェブスター][2])
* 後者の「胆汁・粘土・海綿・ドライイング」説は信頼できる典拠が確認できず、日本語版Wikipedia→各種サイトへと拡散した民間語源と考えるのが妥当です。 ([ウィキペディア][4], [DBpedia Association][5])
出典
[1]: https://www.britannica.com/dictionary/dry-cleaning?utm_source=chatgpt.com "Dry cleaning Definition & Meaning"
[2]: https://www.merriam-webster.com/dictionary/dry%20cleaning?utm_source=chatgpt.com "DRY CLEANING Definition & Meaning"
[3]: https://www.oed.com/dictionary/dry-cleaning_n?utm_source=chatgpt.com "dry cleaning, n. meanings, etymology and more"
[4]: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0?utm_source=chatgpt.com "ドライクリーニング"
[5]: https://dbpedia.org/page/Dry_cleaning?utm_source=chatgpt.com "About: Dry cleaning"
[6]: https://www.freddy-leck-sein-waschsalon.jp/products/gallseife?utm_source=chatgpt.com "ガルザイフェ ? FREDDY LECK"
[7]: https://hands.net/hintmagazine/clean-laundry/2407-stain-clothes.html?srsltid=AfmBOor7ARbU1nxnu3QI8EQicPQaWgvcww5jf65g6CduKIsNa9ow8NKA&utm_source=chatgpt.com "【汚れ別】衣類の染み抜き方法!必要な道具や出先での応急 ..."
[8]: https://www.tokyo929.or.jp/column/washing_cleaning/2.php?utm_source=chatgpt.com "ドライクリーニングとは【組合が解説】"
[9]: https://weathernews.jp/s/topics/202303/070205/?utm_source=chatgpt.com "ドライクリーニングのメリットとデメリットは?"


 上掲のChatGPTの調査は1分56秒の「思考時間」を要していたが、それでも人間が図書館で何時間もかけて調べるよりは遙かに短い。AIの進歩には改めて驚かされる。またウィキペディアの解説は必ずしも正確ではない場合があることにも驚いた。

 続いて日本でドライクリーニングが広まった歴史を尋ねてみた。回答は以下の通り。

いいご質問です。日本におけるドライクリーニングの普及には、洋服の普及史・戦前戦後の業界制度・溶剤規制などが関わっています。整理すると次のようになります。
  1. 明治時代(洋服の普及とともに伝来)
    • 19世紀後半、開国に伴って洋装が官吏・軍人などを中心に広まります。
    • 洋服の布地は和服と違って水洗いに不向きなものが多く、ヨーロッパ由来の「溶剤洗い=ドライクリーニング」の必要性が生じました。
    • 東京・横浜などに西洋人経営のクリーニング業者が出現し、これが日本でのドライクリーニングの始まりとされます。
  2. 大正〜昭和初期(都市部で定着)
    • 洋装が中産階級にも広まり、クリーニング業が職業として成立します。
    • 当時は石油系溶剤(ベンジン、灯油など)が使われていました。可燃性が高く、火災事故もしばしば起きました。
    • 大正末期には「クリーニング屋」が街に登場し、1930年代には全国に普及していきます。
  3. 戦中・戦後(業界再編と規制)
    • 戦時中は統制経済で溶剤が入手困難となり、業界は縮小。
    • 終戦直後は闇市などで石油溶剤を使ったクリーニングが復活しますが、火災事故が多発しました。
    • 1950年代:業界育成のため「クリーニング業法」(1956年制定)が施行され、営業許可・衛生管理などのルールが定められました。
    • 同時期から、火災リスクの低い「塩素系溶剤(パークロロエチレン=パークロ)」が普及し、安全性・効率が飛躍的に向上しました。
  4. 高度経済成長期(1960〜70年代)
    • 洋装が完全に一般化し、ドライクリーニングは日常サービスとして定着。
    • チェーン店方式が登場し、家庭の近所に「○○クリーニング」があるのが当たり前になります。
    • この頃から「シミ抜き」や「特殊加工」など付加価値サービスも広がりました。
  5. 1980年代以降(多様化と環境対応)
    • パークロ溶剤が主流ですが、環境負荷や健康リスクが問題視され、より安全な石油系溶剤や代替技術が研究されます。
    • 日本でも一部で「ウェットクリーニング(水系だが繊維に優しい技術)」が導入されるようになりました。
    • バブル期以降、衣服の使い捨て化や家庭用洗濯機の進化でクリーニング需要は頭打ちに。
  6. 現在
    • 依然として「ドライクリーニング=パークロ洗い」が主流ですが、環境対応として石油系溶剤や二酸化炭素を使う技術も登場。
    • 大手チェーンのほか、地域密着の個人店が高級衣料・特殊品のクリーニングで差別化を図っています。
    • 日本独自の「ワイシャツ1枚いくら」などの均一料金制や、コンビニ受け渡しなどのサービスは世界的にも珍しい形態といわれます。
  7. **まとめ**
    • 日本では **明治期に洋装とともに伝来 → 大正昭和で定着 → 戦後の業法制定と溶剤改良で安全化 → 高度成長期に全国普及 → 現代は環境対応と多様化** という流れで広まりました。


 最後に私自身とドライクリーニングについて述べる。
  • まず、私が子どもの頃、近所に個人経営のクリーニング店があり、自前で洗濯やアイロン掛けをしていた。湯気が店の外まで漂い、活気があった(ドライクリーニングについては不明)。
     この店には小学校の時に同学年だった女の子がいた。直接口をきいたことは無かったが、私が大学に通っていた頃には赤ちゃんを背負っている姿を見かけたことがあり、ずいぶん早くから結婚していて羨ましいと思ったことがある。その後、この店は姿を消したが、事情はよく分からない。
  • 大学に入った頃、節約のため一張羅の背広を下宿の洗濯機で洗って大失敗をした思い出があった。上述のウールの特徴を知らなかったためで、干したあとの背広はケバケバになり縮んでしまった。
  • 学生時代に染みついた貧乏根性が残っていることもあり、定年退職後の私は原則として洗濯機で洗える衣類しか着ないことにしている。日常生活でも旅行先でも、水で洗えるポロシャツやベスト、ズボンなどなど。また退職時にクリーニングが必要となるような背広・ズボンは、お腹が出てきて着られなくなったこともあり殆ど処分した。同様の理由で、ドライクリーニングが必要となるようなセーターやカーディガンも着ない。唯一、真冬に外出する時のジャンパーは適宜クリーニングに出している。
  • 現在でも近隣には複数のクリーニング店があり、コンビニより多いような気がする。といっても取次店ばかりで、その場で洗っているわけではない。コインランドリーも複数あるが、ちゃんと棲み分けができているようだ。


 次回に続く。