【連載】チコちゃんに叱られる! 野球のショートの役割
昨日の続き。9月5日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日の話題は以下の通り。
- 女の人が腕時計を内向きにつけるのはなぜ?
- ドライクリーニングってなに?
- 野球の「ショート」は何がショート?
本日はこのうちの3.について考察する。
放送では、「野球の『ショート』はピッチャーとの距離がショート」が正解であると説明された。解説は野球の歴史に詳しい鈴村裕輔さん(名城大学・外国語学部)で、この番組にはこれまで5回登場している。
- 2018年11月2日:エースってなに?
- 2019年4月19日:なぜ始球式で空振りする?
- 2021年3月26日:なざ野球は“ストライク”って言う?
- 2023年3月3日:野球の監督だけがユニフォームを着るのはなぜ?
- 2025年5月9日;永久欠番ができたのはなぜ?
ということで、鈴村さん(名城大学・外国語学部)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- そもそもショートは二塁と三塁を守るポジション。外野に抜けそうな鋭い打球をキャッチして一塁に投げてアウトにしたり、セカンドと連携してダブルプレーをとるなど、内野守備の花形。
- 野球のショートは「ピッチャーとの距離が短い」ことで名前がつけられたと言われている。
- ショートを初めて守ったのはダニエル・アダムスで、1840年代アメリカにあったニューヨーク・ニッカボッカーズのメンバーであった。
- 1840年代は野球のルールがまだ統一されておらず、7〜11人でプレーしていた。ピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、サード以外はポジションが定まっていなかった。
- そんななか1845年にニューヨーク・ニッカボッカーズが現在の野球ルールの原型を作った。
- チームの人数は9人。
- 相手チームの攻撃中は散らばって守備に就く。
- 守備のうちピッチャー、キャッチャー、ファースト、セカンド、サード、ライト、センター、レフトの8人は守備位置がほぼ決まっていたが、あと1人は決まっていなかった。
- ダニエル・アダムスが守っていたのは二塁手のやや左後方、外野と内野の間であり今のショートのポジションとは異なる第4の外野手的な存在だった。現在と異なっていたのはボールの特徴にあった。
- 当時のボールは馬の革を縫い合わせた粗いつくり。軽くて遠くまで飛ばなかった。
- 現在のボールはコルクとゴムでできた芯を羊毛で巻き、牛革を縫い合わせて作られている。その重さは141.7〜148.8グラムであり、馬革で作られた100グラム前後のボールとは異なっていた。
- 当時の軽いボールでは遠くから投げることができなかった。当時のルールでは捕球されたボールをピッチャーに戻さなければならなかったため、ショートは、野手からピッチャーへの送球を中継する役をつとめた。
- さらに、プレー中、外野手がホームに返球する際の中継役もつとめた。
- その後、ボールが進化し、またグローブが登場したことでショートが中継役をしなくてもダイレクトに投げられるようになりショートの役割が変わった。ショートの進化には2人のスーパースターが貢献した。
- ディッキー・ピアース:1850年代に活躍。小柄で瞬発力が高く機敏な動きが得意だった。そこで前に出て速い打球を捕球した。
- ジョージ・ライト:体が大きく強肩。あえてレフト寄りの後ろで守り、捕球してダイレクトに一塁に送球した。
放送ではさらに鈴村さんから大リーグの歴史に残る名ショートのスーパープレーが紹介された。
ここからは私の感想・考察を述べる。以上の説明の中で私がよく分からなかったのは、「外野手が捕球したボールはピッチャーに戻さなければならない。その中継のためにショートが必要。」という部分だった。単に試合の進行のためにボールを戻すということであれば、ショートはボールパーソンになってしまう。このあたりのことをChatGPTに尋ねてみた。
【質問】かつて「ショート」は、外野手からピッチャーにボールを戻す際の中継役をつとめたと聞きましたが、これはルールではなく、試合の進行のためだたのでしょうか?
いただいた回答は以下の通り。
はい、その理解で正しいです。
- ### ショートの役割の起源
- 「ショートストップ(shortstop)」という守備位置は、19世紀の野球創成期に生まれました。
- 当時の野球は今よりもボールが重く【←AIの勘違いで軽かったのでは】、外野から直接内野(特にピッチャーやキャッチャー)に投げ返すのが難しかったのです。
- そこで、**外野手から返ってきたボールを中継してピッチャーやキャッチャーに渡す役**として「ショートストップ」が置かれました。
- * つまり、本来は **中継専門のポジション** だったのです。
- ### ルールか?習慣か?
- これは「ルール」で決められたものではありません。
- あくまで「試合をスムーズに進めるための工夫」でした。
- 実際、ボールが軽量化【←重量化では?】・改良され、外野から内野に直接投げられるようになると、ショートは「中継役」から「内野守備の要」へと役割を変えていきました。
- ### まとめ
- **ショートは外野からの返球を中継するために生まれたポジション。**
- これはルールではなく、試合の進行上の必要から発達した習慣。
- その後、現在のようにゴロ処理や併殺プレーを担う「内野の要」へと進化した。
上掲の回答ではボールの重さについて勘違いがあったようなので、さらに、
●当時のボールのほうが軽かったのではありませんか? つまり、軽いほうが遠くまで投げられない。
と尋ねたところ、以下の回答をいただいた。
とても鋭いご指摘です。実はそこに学説の揺れがあります。
- ## 19世紀の野球ボールの重さ
- 公式ルールにボールの規格が定められるのは1840年代後半〜50年代以降です。
- 初期(1840年代)のボールは、現在より **軽くて柔らかい** 傾向がありました。
- 直径が小さく(今より一回り小さい)、重量も現在の142〜149gより軽かったと記録されています。
- 当時のボールは手縫いで、ゴムや綿、糸巻きなど芯の素材が一定していませんでした。
- そのため「軽すぎて勢いが出ず、遠投に向かない」=外野から直接ホームやマウンドまで届かない、という事情がありました。
- ## ショートストップ誕生の背景
- こうした事情から、外野からの送球を「中継」するために置かれたのが **short stop(短い距離で止める役)**。
- ルールで定められたわけではなく、選手配置の工夫です。
- 1850年代には「外野からの返球の中継役」という役割で定着しました。
- ## その後の変化
- ボールが **重く、硬く、規格化** されるにつれて、外野から内野への直接送球が可能に。
- すると「中継専門」ではなく、「二遊間の守備」「併殺プレー」など現在のショートの役割が拡大していきました。
- まとめると
- 初期のボールは **今より軽くて柔らかい → 遠投に不向き**。
- だからショートが「中継役」として必要だった。
- ボールの進化とともに、ショートは「内野の要」に変わった。
もう1つ、
●「ショート」はもともと中継役だったとすると、「短い」という意味の「ショート」ではなく、「relay」など別の呼称が使われてもよかったのではありませんか?
と質問したところ、以下の回答をいただいた。
いいところに着目されました。
実は「ショートストップ(shortstop)」という言葉は、英語としては **「中継」よりもむしろ“短い位置に立って止める人”** というニュアンスなんです。
- ## なぜ「relay」ではなく「shortstop」?
- **stop** = ボールを止める人
- **short** = 本来の「野手の守備位置(外野と内野の間など)」より **手前(短い距離)に構える**
つまり、「shortstop」は
◆「外野からの送球を、手前でいったん止める(short で stop する)人」
という意味合いになります。
- ## 「relay」との違い
- 「relay(中継)」はもっと抽象的で、役割を表す言葉。
- 一方で、当時の野球用語は「キャッチャー(捕る人)」「ピッチャー(投げる人)」のように **人の役割を直接表すシンプルな英語** が好まれていました。
* その流れで「shortstop(短い位置で止める人)」が自然に採用されたのだと考えられています。
- ## 歴史的補足
- 1840年代の記録では、最初「short fielder」と呼ばれた例もあります。
- その後「shortstop」という言い方が広まり、19世紀半ばには定着しました。
* これは野球がクリケットから独立して用語を整えていった過程の一部です。
- まとめると
- 「ショート」は「短い距離でボールを止める人」という意味。
- 「relay」よりも直接的・人間的な表現だったため、この呼称が定着した。
- 初期には「short fielder」と呼ばれることもあり、徐々に「shortstop」に落ち着いた。
ということで、以上の回答を見る限りでは、放送の「ピッチャーとの距離がショート」という説明には言及されていなかった。
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