じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 気象庁統計に記されているように、2月1日と2月2日は、寒冷前線の通過と寒波到来により、寒風が吹き荒れ、2月1日には、最大風速15.3m、最大瞬間風速22.8m、また2月2日には、最大風速12.3m、最大瞬間風速17.0mを記録した。強風のせいだろうか、本部棟に掲揚されている学旗が一時的に外されているのを2月2日の夕刻に確認した。学旗は2月3日には再び掲揚されていた。

2月4日(土)

【思ったこと】
_c0204(土)QOL評価・向上のための複合的多項随伴性アプローチ(4)短期的分析(3)行動内在的随伴性と付加的随伴性の違い(2)

 昨日の日記の続き。

 行動内在的強化随伴性と付加的強化随伴性の違いは、働きがいや生きがいにも大きな影響を及ぼす。10年以上前、こちらの論文でも指摘したように、産業革命以降の分業化・機械化の中で、労働はもっぱら給料という好子のみによって強化されるようになった。大工さんや工芸職人たちが手作業の積み重ねの中で獲得できるような「完成」という好子、あるいは、一次産業従事者が得られるような「収穫」という好子は見えにくくなり、給料のみが労働を強化するようになる。しかも、給料なしには生活できないため、好子出現による強化ではなく、好子消失阻止の随伴性によって義務的に働かざるを得なくなる。脱サラで一次産業に転職する人が居たり、余暇の時間に趣味としての手作業を楽しむ人たちが少なく無いのはこのためである。前掲の論文では、このことについて
スキナーは、産業革命以後、仕事が細分化されてその1つ1つが別の人たちに割り当てられるようになったために、金銭以外の強化子が何もなくなってしまったことを問題視している(Skinner, 1979)。産業革命以前の職人たちには、仕事のどの段階にも、“完成”という、仕事に内在化(ビルトイン)された結果が随伴していた。今でも、伝統工芸の職人にインタビューすれば、必ずといってよいほど、“作ることの喜び”が伝えられる。これに対して、オートメーション化された工場の労働者は、モニターに映し出された映像を見ながら、機械的にボタンを押す。この場合、自分が操作している生産物を直接見たり触れたりする機会はない。また、自分の操作が製品全体の完成にどういう貢献をしているのかさえ、はっきりと確認できない場合すらある。また、事務系の職員は、毎日、書類に数字を書き込み、判を押す。あるいは、パソコン画面に向かって、機械的に文字を打ち込む。ここにも、ビルトインされた行動の結果は見えてこない。
と述べている。

 以上述べてきたように、行動内在的強化随伴性と付加的強化随伴性の区別は重要ではあるが、これらは、手続的定義だけで区別しうるものではない。そもそも、
  • 行動内在的強化随伴性:行動に随伴して 誰かが関わらずに 自然に好子が出現したり嫌子が消失する。
  • 付加的強化随伴性:行動に随伴して 意図のあるなしにかかわらず 誰かによって 好子が提示されたり嫌子が除去される。
というのは、第三者側から見た観察事実である。行為主体(←当該の行動を実際に行っている人や動物)にはその違いが分からないこともある。

 本題から余りにも外れるので今回は概略だけを示すことにするが、少なくとも以下のような点について留意する必要があるように思う。
  • 「行動内在的強化」の中には、行動の量に比例して大きな結果が伴う場合がある。その場合、行動内在的であるから強化的であったのか、それとも、FRやVRといった率強化スケジュールであるがゆえに大きな強化効果をもたらしたのか、区別する必要がある。
  • 「公園内をジョギングをしながら周囲の景色を楽しむ」といった場合、走る行動と周囲の景色というのは、単線的な「行動→結果」ではなく、両者のスパイラル的な関わりが重要な意味を持っている。
  • 付加的強化随伴性は、対人行動、相互強化、集団行動、社会的強化の枠組で細かく分類する必要がある。
  • 賃金を好子とする付加的強化随伴性では、出来高払いのように労働の量が好子の獲得を増やす場合もあるし、労使交渉によって、賃金を上げることで増やせる場合もある。後者の場合は当然、労使交渉という行動自体も強化されていく。
  • 称賛や感謝も第三者からの付加的強化の1つではあるが、賃金や謝金とは本質的に異なる。その一部は、人間という種に生得的に備わった好子(生得的好子)であるかもしれないし、感謝してくれる相手から色々な好子が追加される(←「感謝のしるし」、「日頃お世話になっていることへのお礼」など)ことで習得性好子となっているのかもしれない。


 なお、2月2日の日記や本日の日記で強化スケジュールに言及したが、強化スケジュールというのは、「直前条件→行動→直後変化」という単線的な強化随伴性ではなく、一定の時間や複数反応のプロセスにおける特徴であり、厳密には、短期的ではなく、中期的の枠組で検討されるべきでものである。


 不定期ながら次回に続く。