じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 1月6日の午前4時17分(日本時間午前10時17分)に、シリア国境に近いトルコ南東部でマグニチュード7.8の大きな地震が発生し、震源に近いガジアンテプ市で大きな被害が出ているという。
 ガジアンテブ(ガジアンテッブ)は、2010年に東トルコを旅行した時に最初に宿泊した町であった。町の中や郊外には高層の集合住宅等が多数並んでいたが、建築・改装中の様子を見ると、耐震対策はできておらず、ホテル宿泊時に地震が起こったらひとたまりもないとヒヤヒヤしたものである。
 写真上はガジアンテプのホテルからの風景。改修工事中であった。写真下はガジアンテプ郊外に建ち並ぶビル群。
ガレキに埋まった人々の一刻も早い救出が求められる。

2023年2月8日(水)



【小さな話題】「餃子日本一は宮崎市、ラーメン日本一は山形市」という家計調査の危うさ

 2月7日の夕食時にテレビの電源を入れたところ、2022年1年間の1世帯当たりのギョーザの購入額で、宮崎市が「ギョーザ2強」の浜松市と宇都宮市を抑えて、2年連続で日本一になったというニュースが伝えられていた。このほか、納豆のランキングでは、福島市が日本一、納豆の本場と言われる水戸市は第4位であることも伝えられた。
 その後、NHKのサイトで同一の話題を検索したところ【私が視たのは民放のニュースであったが】、
7日朝に発表された、総務省の去年の家計調査によりますと、去年1年間の1世帯当たりのギョーザの購入額は、
▽1位の宮崎市が4053円
▽2位の宇都宮市が3763円
▽3位の浜松市が3434円で、
宮崎市が2年連続で日本一となりました。
餃子店などでつくる宮崎市ぎょうざ協議会の渡辺愛香会長のもとに、午前9時半ごろ、「日本一」の連絡が入ると、従業員たちは喜びを分かち合い、早速「2連覇達成」などと書かれたシールを、持ち帰り用のギョーザのパックに貼るなど対応に追われていました。【以下略】。
という記事があった。このほか、ラーメンにかける外食費用の日本一は山形市であり、こちらの記事には、
出前も含め去年1年間にかけた外食費用は、山形市は1世帯当たり1万3196円でした。これに対しおととし1位だった新潟市は1万2573円。【中略】
山形市役所では、町おこしなどに取り組んでいる「山形ブランド推進課」に担当職員が集まり、総務省の家計調査の発表を見守りました。
午前8時半に総務省のホームページに結果が公表されると、職員たちは山形市とライバル市の金額をホワイトボードに書き込んでいました。
そして、山形市の佐藤孝弘市長が、市役所内に待機していたラーメン店の店主らに日本一奪還を伝え、店主らは歓声を上げたり握手をしたりして喜びを分かち合っていました。
このあと、ラーメン外食費用日本一に返り咲いたことを知らせる横断幕も担当課に掲げられました。
【以下略】
と記されていた。

 この家計調査に基づくランキングについては、このWeb日記でも、

2015年4月20日日本一パンを食べる都市が京都である理由
2021年6月13日パン購入量日本一が岡山市である理由

というように2回ほど取り上げたことがあった。




 このランキングで、毎年よく分からないのは、根拠となるデータがどこに公開されているのかという点である。総務省統計局にはいろいろなデータが公表されているが、私が検索した限りでは、

家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2019年(令和元年)〜2021年(令和3年)平均)

というように2019年〜2021年3年間の平均値のランキングは閲覧できるものの、2022年単年でのランキングがどこに表示されているのかは見つけることができなかった。ちなみにその3年間の平均値では、餃子日本一は宇都宮市で3727円、いっぽう宮崎市は第3位の3413円となっていた。このほか、ラーメン(中華そば)については山形市が1位、パンは金額では神戸市、数量では岡山市がトップとなっていた。なお岡山市は、食パン以外のパンの項目では、金額、数量ともに日本一となっている。

 いずれにせよ、2022年のランキングがどこにあるのかは、まだ見つけることができていない。




 さて、私が疑問に思うのは、こうしたランキングの数値がどこまで信頼できるものなのかという点である。

 そもそも家計調査というのは全数調査ではないし、小売店や外食産業における売り上げ金額からの推定値でもない。ウィキペディアによれば、この調査は、調査方法は標本調査。全国約4,700万世帯の中から、約9,000世帯を抽出して調査されるということであるが、
下記の理由により家計調査に協力してくれる世帯はそう多くはなく、そのため、ある程度の時間的な余裕がある等のところでないと調査に協力しないため、結果として回答世帯に偏りが出てしまう。
  • 上述したとおり調査項目が家計簿並みに細かいため、手間がかかる。
  • さらに記入した調査票は回収されるので調査に協力している家庭には残らない。その為、家計簿をつけている世帯にとっては同じ物を二つ作らなければならず、負担となる。
 家計調査の問題点については2014年11月27日の日記でも取り上げたことがある。その最後のところで、
  • 家計調査に協力して家計簿を記入すること自体が、消費内容を変えてしまう恐れ。それまで大ざっぱにムダ買いをしていた家庭では、家計簿をきっちりつけることで節約が行われるかもしれない。
  • いくら調査拒否はできないと言っても、現実には、いろいろな理由を並べ立てて協力をしない人たちも居るはず。となると、無作為抽出とはいっても、結果的に、几帳面で継続性のある人たちだけの回答を集計している可能性がある。
と述べたように、調査対象者に選ばれたこと自体で消費内容が変わってしまう恐れがある。特に今回のようにランキングが話題にされるようになると、宮崎市の回答者はいっそう餃子を購入し、山形市の回答者はいっそうラーメンを食べに出かけるかもしれない。また、統計法【←統計の方法ではなく、「統計法」という法律】で虚偽の申告が罰せられることになっていると言っても、虚偽かどうかをいちいち調べることは不可能。なので、該当地域の回答者が、ランキング1位を守るために本当は1000円しか購入していないものを5000円と回答しても、虚偽であるとして罰せられる可能性はまずない。

 家計調査ランキングのもう1つの大問題は、公表されているランキング対象が、「都道府県庁所在市及び政令指定都市【都道府県庁所在市以外の政令指定都市(川崎市,相模原市,浜松市,堺市及び北九州市)】」に限られていることである。例えば、福島県喜多方市で喜多方ラーメン、広島県尾道市で尾道ラーメンがどれだけたくさん食べられたとしても、山形市を超えて日本一になることはできない。大都市間だけでランキング争いをしても、全国レベルでの消費向上にはつながらない。