【小さな話題】『アンパンマンのマーチ』をめぐる2つの謎と『善人』の定義(2)「みんなの夢」とはどんな夢?
昨日の日記の続き。
今回は、『アンパンマンのマーチ』の歌詞に登場する「夢」について考察する。
この歌の歌詞の中には、
- いけ! みんなの夢 まもるため【いけ! 悲しみを消すために】
- 忘れないで 夢を
- いけ! みんなの夢 まもるため【いけ! 泣いてるひと救うため】
というように1番と2番で合計3回、「夢」という言葉が登場している。やなせたかしの当初の歌詞では「忘れないで 夢を」の1回だけだったので、アニメ化の際に初めて「みんなの夢」に書き換えられたと言ってもよいかもしれないが、いずれにせよ、そもそも守るべき夢が何であるのかがハッキリしないとアンパンマンはどういう活動をすればよいのかも分からなくなってしまう。
常識的に言えば「みんなの夢=平和で飢えや病気の無い暮らし」ということになるかもしえないが、幼児がそういう夢をいだいているとは考えにくい。
また、昨日も述べたように、
- そもそもみんなが共通していだく夢はあるのか?
- 個人個人の利己的な夢を寄せ集めたものは「みんなの夢」と言えるか?
といった疑問が残る。以上をふまえてChatGPTに歌詞の中の「みんなの夢」とは何かについて尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
いいところに目をつけられましたね。
「アンパンマンのマーチ」の歌詞の後半に出てくる **「みんなの夢」** は、とても抽象的に書かれていて、特定の夢を指すわけではありません。ですが、曲の背景やアンパンマンというキャラクターのテーマを踏まえると、次のように解釈できます。
- 子どもたちにとっての夢
* 「大きくなりたい」「強くなりたい」「楽しく遊びたい」「友だちが欲しい」など、**日常的で純粋な願い**。
* アンパンマンはそれを壊す敵(ばいきんまん)から守り、安心できる世界を作ろうとする存在。
- 社会全体に共通する夢
* 歌詞には「みんなの夢を守るため」という表現がありますが、ここでいう「夢」は **平和・安心・幸せな暮らし** を象徴していると考えられます。
* 特に原作者やなせたかしさんは、戦争体験から「平和でみんなが笑って暮らせる世界」を強く願っていました。したがって「みんなの夢」はその延長線にあると解釈できます。
- 哲学的な広がり
1番が「なにをして生きるのか」という問いを投げかけるのに対し、後半の「みんなの夢」は**その答えのひとつ**を示しているとも言えます。
つまり、「自分のためではなく、みんなの夢を守ることこそ、生きる意味になる」というメッセージ。
- ## まとめると
「みんなの夢」とは具体的に一つの夢ではなく、
* 子どもたちの小さな願い(遊びたい、友だちがほしい)
* 社会全体の大きな願い(平和、安全、幸せ)
* 生きる意味を支える理想(みんなのために生きる)
――この三層が重なった、**人々の幸せや希望を象徴する言葉** と考えられます。
ChatGPTにはさらに、やなせたかしさんが実際に語っていた「夢」や「正義」についての言葉をいくつか紹介しながら、歌詞の「みんなの夢」とどう結びつくかを整理してもらった。
◆## やなせたかしさんの「夢」「正義」に関する言葉
- 正義とは「人を助けること」
- 正義というのは、決してかっこいいものじゃない。
- 自分のことを後回しにして、困っている人を助けることだ。
- それが本当の正義なんだ。
- やなせさんは「強い者が悪を倒す」という単純な勧善懲悪ではなく、**「弱い人を助けること」こそ正義**だと考えていました。
- これは「みんなの夢」を守るためにアンパンマンが行動する姿と直結しています。
- 自分の夢より「みんなの夢」
- 自分の夢はなくてもいい。
- みんなの夢を守るために生きることが、大きな生きがいになる。
- この思想はまさに「アンパンマンのマーチ」の歌詞そのもの。
- アンパンマンは自分を犠牲にしてでも、空腹の人に顔を分け与えます。つまり「自分の夢」よりも「みんなの夢」を優先する生き方を体現しているのです。
- 戦争体験と平和への願い
- 戦争を体験して、食べ物がなくて、飢えが一番つらいと知った。
- だからアンパンマンは、食べ物を分け与えるヒーローにした。
- やなせさんにとって「夢」とは単に将来の希望だけでなく、**飢えないこと、平和に暮らせること**という切実な願いでもありました。
- 「みんなの夢」とは、人間らしく生きるための最低限の幸せを守ること、とも解釈できます。
◆## 歌詞とのつながり
- **「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」** → 哲学的な問い
- **「みんなの夢を守るため」** → やなせさんの答え
* 自分の夢を追うのではなく、人の夢・人の幸せを守ることこそ、生きる意味になる。
◆## まとめ
「みんなの夢」とは単なる子どもの夢ではなく、やなせたかしさんが自身の戦争体験から抱いた**平和への祈り、人間の幸せを守る願い**そのもの。
それをヒーローとして体現しているのがアンパンマンであり、歌詞全体がやなせさんの人生哲学を映しているといえます。
最後に、「アンパンマンのマーチ」の歌詞を
子どもの視点 / 大人の視点 / やなせ哲学の視点 で三段階に読み解いた表を作ってもらった。
◆ポイント整理
- 子どもの視点 → 素直に「助けてくれる」「守ってくれる」ヒーローの歌。
- 大人の視点 → 生き方や社会の責任を考えさせられる歌。
- やなせ哲学の視点 → 「正義=人を助けること」「夢=みんなが平和に生きること」という人生観の凝縮。
つまり、「アンパンマンのマーチ」は、
- 子どもには「元気をくれる歌」
- 大人には「人生の問いを投げかける歌」
- やなせさんにとっては「自身の思想を託した歌」
として三重構造になっているといえます。
さすがAIだ!と言いたいところだが、上掲の「三段階分析」はChatGPTが独自に考え抜いた結果ではなく、おそらく、ネット上で公開されている様々な論考を収集した上で整合性を保つように要約されたものではないかと推察する。とはいえ、同じ歌詞で歌っても、子どもと大人では視点が異なるという指摘はなるほどと思った。
ところで私がイマイチ受け入れがたいのは、「自分の夢より「みんなの夢」という自己犠牲的、利他的な考え方である。
- 自分の夢はなくてもいい。
- みんなの夢を守るために生きることが、大きな生きがいになる。
- パンマンは自分を犠牲にしてでも、空腹の人に顔を分け与えます。つまり「自分の夢」よりも「みんなの夢」を優先する生き方を体現しているのです。
と指摘されていたが、ここで屁理屈をこねると、アンパンマン自身の夢は「みんなの夢を守ること」であるからして、別段、「自分の夢」よりも「みんなの夢」を優先しているわけではない、「みんなの夢を守る」という自分の夢を最優先しているだけのようにも思える。
このことに関してはこんなパラドックスが考えられる。
- 太平洋の孤島に100人が住んでいた。
- 島民の自分の夢は「みんなの夢を守ること」だった。
- ある時、その島民に「人を殺すことが夢だ」という島民が出現した。
- その新しい島民によって全員が殺された。最後に残った「人を殺すことが夢だ」という島民はもはや夢を果たすことができなくなり、自分を殺した。こうして島民は全滅した。
私がここで言いたいのは、「みんなの夢を守る」という自己犠牲的な夢をいくら称賛したとしても、夢の中身が空虚であれば何の意味も持たないということだ。島民全員が「みんなの夢を守る」という夢を持つのではなく、島民のうち少なくとも1人は、それ以外の夢を持たなければならない。
次回に続く。
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