じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
サーバーの容量事情により、写真ファイルはこちらに移しました。 | オポッサム。タスマニアで見た野生動物は、数種のワラビーとこのオポッサムだけだった。山歩き最終日に泊まったロッジではオージービーフがふるまわれたが、その時に使った焼肉用鉄板の上の僅かな肉片や油を舐めに来たようだ。 |
【ちょっと思ったこと】
センター試験の実施ミス 全国593会場、60万2887人が受験した大学入試センター試験は、おおむね無事に終了したようだ。そんななか、
この種のミスは、「試験監督は何年もやっている」という「ベテラン教員」の気のゆるみからおこりやすい。来年度は5教科7科目実施で時間割も変わるものと思われるが、重大ミスを起こさないためにも、些細な出来事を含めて防止策を講じてもらいたいものだ。 |
【思ったこと】 _30119(日)[教育]センター試験問題に今年もツッコミを入れる(1)ストレス症状や解消法は職種により異なるか? 毎年この時期に、センター試験問題についていろんなツッコミを入れることを楽しみにしている。もともとは英語問題のみであったが、最近では、総合理科や現代社会にも興味深い問題が出題されており見逃せない。ちなみに、これまでの記事は、
さて、例によって、まずは英語問題から。センター試験の英語では、ほぼ毎年、行動科学系の実験・調査を紹介する記事が出題されている。河合塾の速報サイトにアクセスしたところ、今回も予想どおり、第4問がストレスに関するものであった。 まず問題文の概略を箇条書きにすると
以上の記事で疑問に思ったのは、まず、職種が異なると、本当にストレス症状に違いがあるのかという点だ。数値が示されていないので統計的な有意差があるかどうかは定かではないが、いずれの職種でも、さまざまなタイプのストレス症状が出ており、「この職業ならこういう症状」と一概に決めつけることはできない。 次に、もし職種によるストレス症状の違いが有意であったとしても、仕事内容がそれらの違いの原因になっているかどうかは定かではないという点だ。まず、男女の比率が異なるだろう。男女の雇用機会が均等になりつつあるとはいえ、看護師は依然として女性が多いだろうし、管制官やプログラマーは男性のほうが多いかもしれない。もし過食が女性にありがちな症状であるとすると、「看護師だから過食」ではなくて、「女性だから過食」というように原因を帰属させるべきであろう。 ストレス解消法についても同じことが言える。職種が異なれば、肉体的な疲労の度合いや、休み時間の取り方も変わってくるだろう。例えば看護師や教員は、肉体的にもくたびれるし、なかなか自由な時間がとれない。スポーツをするほどの元気が無くなっているかもしれない。それに対して、管制官やプログラマーは、どちらかというと座りっぱなしの仕事が多い。それゆえ、体を動かすスポーツを好むかもしれない。 このほか職業の性質上、看護師や教員のほうがいろいろな人(同僚や患者や生徒など)と接触する機会が多いし、適性上、社交的な人が多いかもしれない。ならば、他者とのおしゃべりを好むことは当然である。 本文のあとの設問の中にもあったが、OPAの調査の主たる目的は、職業の種類とストレス症状の関係を調べるという点にあったようだ。記述的なレベルなら、ある程度の比率の差は見い出せるだろうが、職種が異なるからストレス症状が異なるとか、ストレス症状が異なるから解消法も異なっているかのような因果的な推測は、このデータだけからは難しい。 実際にグラフに示された比率の差は、そんなに顕著ではない。「あなたは○○の仕事をしているから、△△というストレス症状が起こりやすく、××で解消する傾向が大きい」などとは到底言えないのである。 ここに示された記事から言える真の結論は、 ●ストレス症状や解消法には個体差がある。職種が異なっていても、画一的に論じることはできない。 と訂正すべきであると思う。 このほか、英語の第3問では、コンピュータへの興味の男女差の話題が取り上げられていた。 コンピュータを教える時には、男の子と女の子で学習態度が異なる。男の子は、コンピュータの操作自体を面白がる。いっぽう女の子は、コンピュータを使ってどういうことができるのかに価値を見出した。つまり、コンピュータは、男の子にとっては目的、女の子にとっては手段というわけだ。本文最後ではいちおう「これを確証するにはさらに研究が必要だ」と断り書きがしてあるが、うーむ、どうかなあ。ジェンダーとかセクハラとかの議論が活発な現代、「男の子は○○、女の子は△△..」という固定観念を植えつけるのはどうかなあと思う。 上記のストレスの問題もそうだが、職業とか男女差というような集団でくくって平均値的に人間をとらえても真の因果関係は出てこない。例えば、それぞれの看護師はどういう状況でストレスを受けやすいのか、それはどこまで多様な症状をもたらすのかを個体本位で分析しなければならない。コンピュータの場合も、男女で分ける前に、子どもたちの行動がどういうところで強化されやすいのかを詳細に検討すべきである。男女を比較軸にすること自体が誤っており、そんなことを調べても何一つ生産的な結論は出てこない。 次回は、現代社会の問題を取り上げる予定。 |