【連載】
関係反応と関係フレームをどう説明するか(5)文脈とは何か?(3)言語行動と文脈(1)
関係フレーム理論における文脈概念を理解するため、少なくとも、
- 「Crel」や「Cfunc」の違いをちゃんと説明できること。
- そのような枠組みで行動を分析することがなぜ有用なのか(そのような枠組みを使用しないアプローチに比べてどういう利点があるのか)についてちゃんと説明できること。
が必要ではないかと思うがが、昨日も述べたように、2時間×8週の私の担当授業の中でどこまで詳しく取り上げられるかどうかは分からない。
いっぽう、今回の授業は言語行動を取り上げることになっていたので、1回目から2回目の授業では、言語行動と関連づけながら文脈についていくつかお話をさせていただいた。その要点は、
- コミュニケーションは、「特定の文脈」+「文脈に適合した言葉の使用」によって成り立つ。(但し、コミュニケーション自体は、言葉を使わない動物の間でも交わされている。→『動物コミュニケーション』)
- 文脈フリーの(文脈から独立した)言語行動の理論はありえない。あったとしても形式的な分類に終わってしまい、少なくとも、効率的な言語学習訓練の開発には寄与しない。
- 英語では、主語や目的語などによって文脈が明示される。
- 日本語は、当事者のあいだで文脈を共有・共感する方向でコミュニケーションが交わされる。主語や目的語(と学校文法で言われている語)は文脈を明示するために必要な時だけ付加される(というか、そもそも主語を不可欠とする欧米言語の枠組みで日本語をとらえること自体に問題がある。)
このうち1.は、「発話、ないしは表現は、文脈との関連でのみ理解されうる」という点でまさに文脈主義に一致している。3.と4.については、今年の8月から9月頃に連載した内容【まだ未完】に関連したものであり、金谷武洋先生の著作を大いに参考にさせていただいている。
授業では、まず、文脈について一般的な理解を深めるために、文脈が分からないと何のことか理解できないという事例をいくつか紹介した。
- これは何について書かれた文章か?
手順は全く簡単である。まず、物をいくつかの山にまとめる。もちろん、量によっては一山でも良い。...【以下略】
→「洗濯について」という文脈でないと何の話か分からない。
- DHMO(ジハイドロジェン・モノキサイド)とは何か?
この物質は、常にわれわれの生活を脅かし、多くの人々の命を奪っている恐怖の物体である。
無味無臭、無色透明の化学物質である。液状のDHMOを口や鼻から吸引すると、窒息してしまう。それによる死亡事故は非常に多い。...【以下略】
→「水について」という文脈でないと、大量破壊兵器か環境汚染物質ではないかと誤解してしまう。
- 字間が殆ど無い(文字と文字の間の隙間が殆ど無い)「13」は、直前に数字ばかりを見たあとでは「13」に見えやすく、アルファベット大文字ばかりを見たあとでは「B」に見えやすい。
- 質問調査の中に、
タバコは好きですか? 「嫌い 1…2…3…4...5 好き」
という質問があった場合、それが嗜好品に関する質問項目の1つなのか、定期健康診断の質問項目の1つなのかによって回答傾向が異なることがある。
- 質問調査の中に、
あなたは背が高いほうですか?「低い 1…2…3…4...5 高い」
という質問があった場合、どのような準拠集団(クラス、家族、留学先)に依拠して相対判断するのかによって回答傾向は異なる。
以上の例は、文脈概念とは違う枠組みでも説明できるが、「文脈との関連でのみ理解されうる」という文脈主義の根拠としてはそれほど外れていないと思っている。
不定期ながら次回に続く。
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