じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 京都旅行の2日目、北白川のラーメン屋で昼食をとった。店内には「昭和五十八年開店」という掲示があったが、確か、開店から数日間は全品半額セールをやっていて、深夜に毎日食べに行った記憶がある。
 1つだけ残念であったのは、店内至るところに灰皿が置かれてあったことだ。幸い、私が食事をしている時間には喫煙行為が無かったが、もし隣席でタバコでも吸われたとしたら、せっかくの懐かしいラーメンも台無しになってしまったことだろう。
 喫煙者の中には、灰皿が置かれてある店内ではタバコを吸うのが当然の権利であり、横からタバコは止めて欲しいと言おうものなら「灰皿があるのに何が悪いか!」と逆上する者さえある。しかし、灰皿があろうとなかろうと、店内での喫煙は、他のお客や店員に対して有害・有毒な煙を吹きかける迷惑行為であることには全く変わりがない。一方でそういう利己的な振る舞いをしながら、口先だけは「吸う人も吸わない人も心地よい共存社会」などと屁理屈を唱えているのはちゃんちゃらおかしい。


2019年5月31日(金)



【連載】

世界禁煙デー協賛企画(3)喫煙者不採用は差別か?

 昨日の続き。

 5月31日は「世界禁煙デー」の当日ということもあり、NHK「シブ5時」の中でも最近の喫煙対策の話題が取り上げられていた。私が視聴した時間帯に紹介されていたのは、
  • 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、募集要項の条件として、「非喫煙者もしくは入社時点で喫煙されない方」を明記。
  • ロート製薬では、採用面接の際に卒煙意向を確認。タバコを吸っていない社員には毎月500コイン、タバコを卒煙した社員には10000コインを支給。「コイン」は社内レストランで使用可。さらに検診のオプション追加。
  • 長崎大学では教職員採用にあたり喫煙者不採用を明記。
  • 熊本の崇城大学薬学部では、入学の条件として非喫煙を明記。
  • WHO(世界保健機関)の職員採用では「たばこをやめることを条件に採用」となっており、医師のカウンセリングや治療のプログラムを提供している。

 というような内容であった[]。
追記]6月5日放送のNHK「くらし☆解説でも、「受動喫煙対策強化へ 広がる?“喫煙者採用しません”」(堀家 春野 解説委員)という話題が取り上げられたが、5月31日の「シブ5時」と殆ど同一の内容であった。

 番組では紹介されていなかったが、大分大学でも教職員採用について、非喫煙者を優先して採用する方針を明らかにしている。但し、「喫煙者を排除するものではなく、喫煙者を採用した場合は、産業医による喫煙指導を受けさせる」としているとのことであった。

 こうした方針に対しては、教職員の一部から「個人の趣味、嗜好を判断基準にすることは疑問だ」という声も寄せられているというが、これは全くの見当違いと言わざるを得ない。喫煙は「個人の趣味、嗜好」ではなく、ニコチン依存という病気である。趣味、嗜好などと思っている人は、喫煙がなぜ習慣化するのか、その生理的メカニズムについてしっかりと学び直してもらいたいものである。

 喫煙者不採用が差別になるのかどうかについて、番組では、厚生労働省の「そのような採用条件を定めても法律違反にはならない(採用機関の裁量に委ねられている)」というような見解が紹介されていた。【←性別や出身地、年齢などを不採用条件とすることは原則的に禁じられており、就職差別にあたる。】

 ここからは私の見解になるが、喫煙者不採用という方針が妥当であるかどうかは、会社や教育機関において喫煙者を採用した場合にどのような不利益が生じるのかにかかっているように思う。要するに、勤務時間中に喫煙が職務遂行に支障をきたすのかどうかということである。

 5月29日の日記でも述べたように、分煙が実施されている職場では、ニコチン依存が重い職員は、頻繁に席を立って喫煙所に通うようになる。離席時間中にかかってきた電話や窓口の応対は別の職員が代行しなければならず、そのぶん負担がかかる。また、全面禁煙の職場では、敷地の外まででかけて行くのでさらに時間がかかるほか、建物の裏やトイレなどで隠れ喫煙をすることになる。いずれにしても労働生産性は大幅に低下する。

 では、裁量労働制の大学教員の場合はどうか、ということになるが、いくら裁量労働といっても、長時間の講義、会議などもあり、好き勝手に席を立つわけにはいかない。とりわけ、入学試験の監督業務、採点業務などでは長時間、室内にとどまる必要があり、喫煙のたびに敷地外まで出るなどということは許されない。またそのような場で長時間喫煙を我慢してニコチン禁断症状が出てくれば、致命的なミスを起こす恐れがある。

 「喫煙は業務の支障にならない」などと考えている人は、あまりにも考えが甘すぎる。チコちゃんに叱られるの決めセリフ:

「ボーっと生きてんじゃねーよ!」

については、一部に、「ボーっと生きていて何が悪い?」とか、「そんなこと知らなくても構わない」といった批判があると聞いているが、勤務時間帯(出勤から退勤まで)の喫煙行為については、

ボーっと吸ってるんじゃねーよ!

という言葉を浴びせられても当然であろうと思う。ボーッと生きるかどうかは個人の勝手だが、仕事を中断してボーッとタバコを吸うような行為は、組織全体の業務停滞に繋がるし、喫煙を終えて職場に戻ってきた時には肺の中に残留する有害・有毒成分を放出し続けるという点で、健康被害の元凶にもなりうる。チコちゃんに叱られるまでもなく、勤務時間中の喫煙は服務規程で禁じるべきであり、その規定を守れるかどうかを採用基準に盛り込むのは当然であるように思う。

 なお、「職場ではいっさい喫煙せず、自宅に戻ってから家族やご近所に迷惑をかけずに喫煙する」というだけの人も不採用にすべきかと問われれば、私は、不採用条件にはあたらない(採用しても構わない)と考える。もっとも現実問題として、勤務時間に一切タバコを吸わなくても仕事を続けられるような人であれば、とっくの昔に卒煙しているはずだ。

 次回に続く。