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3月1日夕刻のNHKローカル番組で、岡山市のスギ・ヒノキ花粉の平均飛散数は、静岡市、松山市、東京・千代田区などと比較するとかなり少ないという紹介があった。飛散数は近くに人工林が多いかどうかばかりでなく、風向きによっても変わる。また千代田区のような大都市ではコンクリートのビルやアスファルト道路が多いため飛散した花粉が空気中に漂いやすくなっているというような話であった。 Bingに「主要都市のなかでは岡山市のスギ・ヒノキ花粉の平均飛散数は少ないと聞きましたが本当でしょうか?」と尋ねたところ、 岡山市のスギ・ヒノキ花粉の平均飛散数は少ないという情報は、日本気象協会の花粉飛散情報*1*2によると正しいようです。2023年3月4日現在、岡山市のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は「少ない」レベルで、今後1週間も「少ない」か「やや多い」程度に推移する見込みです*2。中四国地方では鳥取県米子市や愛媛県松山市などがスギ・ヒノキ花粉の飛散数が多く、岡山県岡山市は少なめである傾向があります*3。という回答であった。スギ花粉症の都道府県別有病率を見ても、岡山県はスギ人工林比率やスギ花粉有病率が低いことが分かる。 もっとも、現役時代、コロナ対策の防護服のような格好で通勤している同僚もいた。花粉が少なくても苦しんでいる人はおられるようだ。 なお、私自身は生まれてからこれまでのところ、花粉症と思われる症状が出たことは一度も無い。 |
【連載】対話型AIの可能性を探る(3)Bing初体験(3)行動分析学の基本概念について尋ねる(1)/AIの情報収集の対象 昨日に続いて、対話型AIを搭載した新しいBingの話題。 今回は、行動分析学の基本概念について尋ねてみた。なおChatGPTとのやりとりの記録は2月9日と2月10日の日記にあり。 ●スキナーが創始した行動分析学の基本概念に「随伴性」があります。随伴性とはどういうことですか? 随伴性とは、行動分析学で行動を説明する際に重要な考え方の一つです。1 随伴性とは、「行動とその直後の状況の変化との関係」12 という意味で、この状況の変化=環境が、人の行動を呼び起こしているようです。1オペラントとレスポンデントの区別が書かれていないものの、まあまあ妥当な回答であるかと思う。 ●行動分析学の概念である「ルール支配行動」について説明してください。 【Bing】「ルール支配行動」とは、言語的教示によって行動が制限されることをいいます1。例えば、他者からの依頼や命令に従ったり、他者の体験を利用して自分自身も同じ行動をとったりする場合です2。回答内容は簡素なものであったが、ChatGPTの的外れな回答よりはかなり正確。 もっとも、ここで気になったのが詳細情報であった。1.と2.の「jinjibu」というのは日本の人事部をいうWebサイト、また4.の「ousar.lib.okayama-u.ac.jp」というのは、なっなんと長谷川芳典の紀要論文であった。 なお、回答に加えて関連質問として「ルール支配行動と関係フレーム理論の関係は何ですか?」が勝手に生成されていた。それをクリックすると、 【Bing】関係フレーム理論とは、言語や認知の基礎となる関係反応のタイプや特徴を分析する理論です1。この理論によれば、ヒトは任意の刺激間に関係を付与する能力を持ち、その関係に基づいて刺激の機能が変化します1。 この回答もまずまず妥当であるように思われたが、詳細情報の3.にはまたまた長谷川芳典の紀要論文があった。 このことで思ったが、Bingが回答を生成する際に依拠している資料は、あくまでネット上で無料で公開されている情報に限られているようである。常識的に考えてみても、Bingが印刷媒体の専門書を読めるはずはないし、また、有料の学術誌の本文全体を、いちいちお金を払ってデータとして取り込んでいるようにも思われない。なので、ある学問分野の基本概念について尋ねた場合の回答は、おそらく、
いっぽう、査読つきの権威ある学術誌に掲載されているような論文は、無料で公開されていない限りは、AIの情報収集の対象にはならない[※]。となると、専門家集団での理解と、AIによって解説された一般向けの理解の間にギャップが生じる恐れもある。 [※]この点は未確認。出版社が検索エンジンなどの資料収集に限って無料で論文本文データを提供している可能性はあるかもしれない。また有料誌でも要約と引用文献表だけは無料で閲覧できる場合もある。 この問題の本質は、私が相当以前に論じた電子ジャーナルは私企業による知的資産独占支配というところにある。じっさい、最近では大幅な円安に伴うコスト増に伴って、図書館で閲覧可能な電子ジャーナルのタイトルを減らす動きも出ている。すでに隠居人となった私が声高に叫ぶものでもないが、本来、知的財産は【軍事技術への転用や特許がらみのものを除けば】すべての人々に公開されるべきものであり、出版社の金儲けの道具であってはならない。優秀な研究者が論文を投稿する際には、より一流とされる学術誌ではなく、その学術誌が無料で閲覧可能であるかどうかを基準にして投稿先を選んでもらいたいと思う。そのほうが、結果として、Bingなどの情報収集の対象となり、多くの人に閲覧され、多くの研究者に引用されることになるはずだ。 不定期ながら次回に続く。 |