じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 10月2日の夜明け前はよく晴れていて、南西の空に冬の星座が見えていた。また月の近くには木星、東の空の高いところには金星が異様なほどに明るく輝いていた。このほか、写真には写っていないが、東の空の低いところにはうっすらと水星も見えていた。

 写真上は金星。写真下は木星と月齢17.3の月。


2023年10月3日(火)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「歩いているときにアイデア」とデフォルトモードネットワークと宮沢賢治

 昨日に続いて、9月29日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。今回は
  1. 七五三はなぜ3歳5歳7歳?
  2. 歩いているときにふとアイデアが浮かぶのはなぜ?
  3. なぜ海の水はしょっぱいのに海の魚はしょっぱくない?
という3つの話題が取り上げられた。本日は、このうちの2.について考察する。

 さて、「歩いている時にアイデア」の疑問であるが、放送ではまず、
  • 「進化論」で有名なダーウィンは1日に4回散歩した。
  • ベートーヴェンは曲を思いついた時にメモができるようにペンと紙を持ちながら散歩していた。
という事例が挙げられた。

 さてそれはそれとして、放送では「あらゆる記憶が結びつくから」が正解であると説明された。枝川義邦さん(早稲田大学)によれば、
  • アイデアがひらめくのはその人が経験したことと読書などで得られた疑似体験や知識などが脳に蓄えられ結びついて生み出される。
  • 何かを食べたいと思いながら歩くのではアイデアは生まれない。歩きながらボーッとすることが大切。
  • 2023年4月29日で説明されたように、脳は寝ている時にデフォルトモードネットワークとなる。起きてボーッとしている時にも、脳は同じようなデフォルトモードネットワークになり、意識しないでも記憶の整理を行っている。
  • ボーッとしていてデフォルトモードネットワークが活発に働いている時に、創造的なアイデアが浮かびやすくなる。
  • アイデアが浮かぶときに重要な働きをしているのが脳の前頭前野である。前頭前野は、アイデアの選別、つまり必要な記憶か、いらない記憶かを選別し、必要な記憶は海馬から大脳皮質に送り記憶を蓄える。
  • 前頭前野は古い記憶を思い出す時にも働いている。大脳皮質から記憶が取り出せないときは“ど忘れ”となる。
  • 前頭前野がボーッとしている間にも、勝手に記憶が取り出されて結びつくことがある。その結果として、良いアイデアが生まれることがある。これがひらめきの正体。
  • 緑の中を歩いたり手足を動かすと創造性がアップするという研究結果もある。
  • 机に向かっているときはデフォルトモードネットワークの働きが弱くなり知っている記憶が優先されるため平凡なアイデアしか生まれない。


 ここからは私の感想・考察になるが、いろいろな知識を詰め込むだけでは良いアイデアが生まれないことは経験的にも実感できる。時折、煩瑣な日常空間から逃れて、大自然の中でボーッとする機会を織り込むことで、全体として質の高い知的生産活動を生み出すことができる可能性はあると思う。
 もっとも、いろいろと考えを巡らしている時よりもボーッとしている時のほうが、「ふっと思いついた」ことが強く印象づけられるので、主観的にそう思っているだけかもしれない。また知識の蓄積の無い一般人が単にボーッとしていても、何も生まれてこないかもしれない。忘れていたことを突然思い出す程度の体験はあるかもしれないが、それは断片的な記憶の復活であって、革新的なアイデアの創出ではない。
 あと、今回の話題では「歩いている時」という条件がつけられていたが、私が視聴した限りでは、
  1. 歩きながらボーッとしている
  2. じっとしていてボーッとしている
という2つの条件のうち、1.のほうがアイデアが生まれやすいのかどうかについては特段の説明は無かったように思われる。手足を動かしている時のほうが血の巡りがよくなるということだろうか。

 余談だが、宮沢賢治関連の番組などで、賢治がうつむき加減に歩き回っているような写真が紹介されることがあるが、2016年4月10日の日記に記したように、あの写真はベートーヴェンのマネをしているところであり、このことは弟の宮沢清六さんが語ったエピソードとして証拠づけられているらしい。賢治がじっさいにベートーヴェンのように散歩をしていたかどうかはよく分からない。団扇太鼓を叩いて歩き回っていたという目撃はあるらしいが。

 次回に続く。