じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 数日前、法界院駅近くの県道沿いのプラタナスの巨木が伐採されていた。倒木の恐れもなさそうなのになぜ根元から切り取ってしまったのかは不明。
 ちなみにこのあたりは道の両側にプラタナスが植えられているが、黄葉する前に剪定されてしまうことが多い。落ち葉の清掃に手間がかかるせいか、落葉する街路樹はあまり歓迎されていないようだ。



2024年10月9日(水)




【連載】血液型と出身県で病気リスクや体質が分かるか?(1)

 妻が録画していた「カズレーザーと学ぶ。」という番組の中に、

●血液型と出身県でわかる!最新タイプ別の病気リスク&太りやすい体質の県

というタイトルがあるのを偶然見つけた(初回放送9月10日)。タイトルだけ見るとかつて流行した血液型喧伝番組【こちらの資料集参照】の焼き直しか?という気もしたが、博識で定評のあるカズレーザーさんが血液型ステレオタイプを吹聴するはずがないと思い、再生・視聴した。




 前半に登場された深瀬浩一さん(大阪大学)は「理事・副学長・大学院理学研究科」という厳めしい肩書きで紹介されていた。
 深瀬さんの講義でまず、

最初で申し訳ないんですけど、血液型で性格が分かれるということに関して科学な根拠はないんです。

と明言された。但し、

血液型によって病気のかかりやすさに違いがあることが分かってきました。これは統計的に見ても本当。

と付け加えられた。

 続いて、受講生たちとのやりとりを含めて、次のような講義が行われた【要約・改変あり】。
  1. 海外では怪我をした時や兵役の時に血液型を調べるだけで、自分の血液型を知らない人が多いとい
  2. 血液型は全部で41種類の分け方あるが、一番有名なのはABO血液型。
  3. ABO型は抗原の違い。オーストリアの病理学者ラントシュタイナー(1868-1943)が輸血の不具合から発見。
  4. BB型者とBO型者は遺伝子のレベルでは違うが、血液成分は同じ。
  5. ABO以外の血液型で重要な血液型にRhがあるが、日本人のRhマイナス発現率は0.5%で非常に少ない。いっぽう、世界8か国(白人)の平均は15.8%。

 続いて、なぜ日本人だけ血液型占いが流行ったのか。血液型がどのように分かれたのか等について、次のようなやりとりがあった。
  • 血液型占い自体は戦前からあった。
  • 約50年前に『血液型でわかる相性』が出版されブームになった。B型はマイペース、A型は几帳面などといった今でも信じている人が多い特徴づけはこの時から始まった。
  • この本の影響を受けて、自分はこの血液型だからこういう人格だと思い込む人もいたのではないか。
  • 日本で流行した背景としては、日本人の血液型が満遍なく揃っている点がある。【放送で挙げられた比率は、A型40.00%、O型30.05%、B型220.00%、AB型9.95%となっていた、出典はこちら】。日本と同じような割合は東アジアに多い。
  • 海外では、O型の比率が最多となる地域が多い。
  • 人類の歴史としてはまずA型から始まり、約350万年前にB型が分岐、そのあと約250万年前に元のA型からO型が分岐した。
  • ベーリング海からアメリカ大陸に渡った人々は殆どがO型。
  • 近年の研究で、血液型が多様であることと病気のかかりやすさに関連があることが分かってきた。そのポイントは、血液型による抗原の違いにある。


 ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、ABO血液型とかかりやすい病気との関係については、2021年9月頃にこの日記でも取り上げたことがあった。
  • (1)新型コロナ感染率「血液型で異なる」科学的根拠 なぜ「O型は重症化しづらい」と言われるのか
  • (2)新型コロナ感染率「血液型で異なる」科学的根拠 なぜ「O型は重症化しづらい」と言われるのか
  • (3)「免疫学からみた血液型と性格」(1)
  • (4)「免疫学からみた血液型と性格」(2)
  • (5)「免疫学からみた血液型と性格」(3)
今回の放送内容も、基本的には変わっていないように思われた。

 今回の講義の冒頭で深瀬さんは、

最初で申し訳ないんですけど、血液型で性格が分かれるということに関して科学な根拠はないんです。

と断っておられた。それはそれで結構なことだとは思うが、大阪大学の理事・副学長がそのように明言されたからといって、この番組を毎回視ているような視聴者は「偉い先生がそう言われているのだから間違いないでしょう。」と信じてしまうほど単純ではない。できれば血液型性格判断の何が問題なのかを述べてもらいたかったところだ。
 ちなみに、2021年9月20日の日記に述べたように、私自身の主張は、
「あなたはX型者だからQという傾向を持つ」という予測が有用であるのは、「あなたはX型者であるかどうか分からない」という状態の時に比べて、「あなたはX型者である」という情報を得た時のほうが「Qという傾向を持つ」という予測が大幅に当たる場合に限られる。
という点にある。もっとも現時点では、血液型と性格との関係はもちろんのこと、血液型とかかりやすい病気との関係についてもそのような証拠は得られていないように思う。そのような有用性が確認できていない状態で「あなたはX型者だからQという傾向を持つ」を誇大に取り上げることは、ステレオタイプを助長し差別や偏見をもたらす恐れがあることに常に注意を払う必要があると考えている。

 次回に続く。