じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 11月1日の日記で、忠臣蔵の映画やドラマに登場する垣見五郎兵衛、もしくは立花左近について取り上げた。その後、手持ちのDVDをさらに整理していたところ、

忠臣蔵 (1958年の映画)

が見つかった。2020年12月30日の13時〜16時に当時のNHK-BSPで放送されたもので、配役は「大石内蔵助:長谷川一夫」、「岡野金右衛門:鶴田浩二」、「赤垣源蔵:勝新太郎」、「垣見五郎兵衛:二代目中村鴈治郎」などとなっていた。

 ウィキペディアによれば、この映画は、
戦後映画化された『忠臣蔵』の中で最も浪花節的かつ講談調で娯楽性が高く、人気の高い作品でリアリティよりも虚構の伝説性を重んじる風潮がまだ残っていて『忠臣蔵』の初心者が大枠を掴むのに適していると言われている。
と評されているという。

 この映画では、垣見五郎兵衛が大石に近衛家の道中手形を見せろと要求したのに対して、大石は浅野内匠頭が切腹の際に使用したと思われる短刀を見せる【写真上】。垣見五郎兵衛は短刀が包まれていた布に浅野家の家紋があることに気づき、大石にホンモノの道中手形を渡す【写真下】。

 大石が垣見五郎兵衛もしくは立花左近に見せた品として他の映画・ドラマでは、白紙の目録、位牌などがあるが、家紋入りの布に包まれた短刀はもっとも分かりやすい品であったように思う。


2024年11月10日(日)




【連載】あしたが変わるトリセツショー『がん対策』(6)がん検診はなぜ1〜2年おきなのか?/検診が先延ばしされる原因

 昨日に続いて、10月17日(木)に初回放送された、

がん対策

についてのメモと感想。今回から放送内容に戻る。

 放送では、がんは運次第という話題に続いて、細胞のコピーミスで生まれたがん細胞が「ちょい悪細胞」→「悪細胞」→「極悪細胞」へと変化する過程が解説された。
  • ちょい悪細胞:増殖
  • 悪細胞:不死、攻撃回避
  • 極悪細胞:移動、細胞攻撃、栄養を奪う
このうち、「ちょい悪細胞」は正常細胞によって追い出される。その瞬間は藤田さんたちが発表した論文で初めて明らかにされたという。

 しかし追っ手を逃れて逃げ切った「ちょい悪細胞」は、「悪細胞」、さらに「極悪細胞」へと進化する。すると体がもつ免疫の力が及ばなくなる。免疫細胞は通常であればがん細胞を攻撃するが、極悪化するとそれを跳ね返し、トゲを伸ばして永遠に増殖を続ける。

 ここで重要となるのが、早期発見のタイミングである。素朴に考えれば、「ちょい悪細胞」が「悪細胞」に進化する前の段階で発見し除去することが最善であるように思えるのだが、実はこの段階での発見は現代科学では難しいということであった。「ちょい悪」から「悪」への進化は約15年かかるものの発見は困難。これに対して「悪」から「極悪」への進化は約2年。まだ自覚症状が出てこないので自分で気づくことは難しいが、1年または2年に1回のがん検診を受けておけば、「極悪」化する前にギリギリで発見することができる。これががん検診の意義である。

 放送では、藤田さんから、がん検診を受けたことが無い男女20名を対象に以上のような内容の講義が行われた。講義終了直後のインタビューでは、「これは即【がん検診に】行かないと!とすごく思いました」(60代女性)とか、「いかに【がんを】早く見つけることの大切さ、これは検診以外に何ものでもない」(60代男性)といった声が聞かれた。
 ところが2週間後に追跡調査を行ったところ、じっさいにがん検診を受けた人【予約を含む】は何と3名だけであった。講義直後には検診の重要性を理解していた60代のお二人も、「うちは家族が多いもんでいつもバタバタしている状態で行きそびれている」(60代女性)とか「まだ準備の段階です。...今“心の準備”を進めている段階です」(60代男性)というように先延ばしをしていることが分かった。

 ここからは私の感想・考察になるが、

ある行動の意義を言語的に理解したとしても、その行動が適切に強化されない限りは、行動開始にはなかなか踏み切れないし、行動を始めても長続きしない。

ということは行動分析学でしばしば指摘されている。例えば「新年の決意」がすぐに挫折するのは、新しく始めようとしている行動を適切に強化する態勢が整っていないためである【←「根性が無い」とか、「自覚が足りない」という原因では決して無い】。とりわけ、
  1. ある程度手間がかかる行動【←新しく始める段階では、手順がややここしく面倒に感じるが、習慣化すれば大した手間ではないこともある】
  2. 行動した場合に結果が伴う確率がきわめて小さい場合。行動しなかったとしても大して変わらない。
といったケースでは当該行動を始めるのは困難であり先延ばしされやすい。
 例えば、自転車に乗るときにはヘルメット着用が義務化されているが、通常、自転車が衝突したり転倒するといった事故に遭う確率はきわめて小さいため、自然の随伴性だけで着用率が上がるとは考えにくい。シートベルト着用も同様であるがこちらのほうは罰則があるため守られやすくなっている。つまり、多くの人は、衝突事故の際の重傷や死亡という結果を避けるためにシートベルトを着用しているのではなく【←建前ではそう理由づけしているかもしれないが】、着用しないまま運転していると車自体から警報音が出たり取締で減点されたりするという結果が伴うからこそ着用をしていると言える。
 がん検診の場合も、例えば、検診を受けた人の国民健康保険料を減免するといった措置をとれば受診率を高める効果があるだろう。「検診を受けないと罰金」という対策では反発を招くだろうが、「検診を受ければ保険料減免」であれば受け入れられるかもしれない。検診で早期発見をすることは医療費の削減にも繋がるので、合理的な理由もあると言える。現状では自治体が定めた「がん検診」は保険適用外の自己負担の検診にくらべると少ない費用で受けられるように配慮されているが、この場合は、
  • 検診を受ける:少ない自己負担もしくは無料で受けられる。
  • 検診を受けない:負担ゼロ。
という違いだけなので検診を受ける行動は強化されにくい【もちろん検診を受ける最大のメリットは早期発見なのだが、確率が低いので強化子になりにくい】
 いっぽう、保険料の減免を実施した場合は、
  • 検診を受ける:保険料が少なくて済む
  • 検診を受けない:無変化(保険料は変わらない)
となるので、検診を受ける行動は確実に強化されるだろう。
 もっともこのあたりの議論は、検診の任意性や検診を受けること自体の危険性とも関わってくる。肺のレントゲン検査による被曝もあるし、胃や腸の内視鏡検査でもごく稀に事故があるという。ま、ワクチン接種に比べれば、【自治体で推奨しているレベルの簡易的な】検診のリスクは小さいと言えるだろうが。

 次回に続く。