じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 この冬一番の寒波襲来により2月5日の岡山は、朝の最低気温がマイナス2.8℃【1日の最低気温は24時に記録したマイナス3.1℃】、日中の最高気温は4.7℃どまりとなった。雪は降らないものの寒風が吹き荒れ、最大瞬間風速は台風並みの24.4mを記録した【画像の赤枠】。

 この日はまた、1日の平均気温がマイナス0.3℃【画像の青枠】となり、この冬初めて氷点下となった。平均気温は毎時の気温の平均値であるため、朝方に相当の寒さになっても日中に気温が上がれば平均値はプラスになりやすい。
 気象庁の過去データをチェックしたところ、2月に平均気温がマイナスとなったのは2018年2月以来であり、この年は2月5日から7日にかけて3日連続で平均気温がマイナスになった。また2月7日には最低気温マイナス6.1℃を記録している。
 今年の2月もこの先まだまだ寒さが続くと予想されており、2018年2月の記録を更新する可能性もある。

2025年02月6日(木)





【連載】あしたが変わるトリセツショー『100歳×100人徹底取材!1万年の健康パワーSP』(5)他者に親切にすることが長寿の秘けつになるか?

 昨日に続いて、2024年12月26日初回放送【私自身が視聴したのは1月8日の再放送】された表記の番組についてのメモと考察。引き続き、3番目に挙げられた、

●究極  世界中の研究機関も注目する「究極の健康法 〜つながりを持つ〜」

という「秘けつ」について考察する。

 放送では沖縄県で半世紀にわたり100歳研究に身を捧げてきた医師・鈴木信さん(90歳)のカルテが紹介された。その数は1000人以上に上り、健康状態はもちろん、兄弟の数や血液型、味の好みに至るまで、徹底的に調査された。その結果たどりついた「究極の健康法」とは、『つながり』を持つことであったという。沖縄には古くから伝わる「模合(もあい)」という文化があった。元々は金銭的な助け合いのために始まった文化であったが、そこには“つながり”を確かめ合うという大事な精神が根づいていることに気づいた。
 番組の100人調査でも、社会的つながりを保持している百寿者が圧倒的に多く、「気兼ねなく話せる友人・家族がいる」と回答した人は94人にのぼっていた。

 放送ではさらにスティーブ・コールさん(アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の「人々が社会的なつながりを増やせば体内の炎症を抑えられる」という研究が紹介された。出典は以下の通り【無料で閲覧可能】。

Annie Regan, Megan M. Fritz a, Lisa C. Walsh a, Sonja Lyubomirsky a, Steven W. Cole (2022). The genomic impact of kindness to self vs. others: A randomized controlled trial. Brain, Behavior, and Immunity, 106,40-48.

この研究では、参加者をランダムに2群に分け【論文によればもう1群あり】、実験群は「他人に親切にする」ことによってつながりを増やし、対照群は「自分に親切にする」ことでつながりなしの状態を作り、炎症に関わる遺伝子の発現の違いを調べた。その結果、つながりを増やした実験群では、「炎症」をもたらす遺伝子の発現が抑えられることが判明。さらに東京大学の飯島勝矢教授らの研究でも、「社会的つながり」が希薄になることが、「フレイル(筋肉の衰えなど)」に至る最初のきっかけになることが分かってきたと解説された。

 放送では上掲の研究について、「つながりあり(他人に親切にする)」グループと「つながりなし(自分に親切にする)」グループで比較したとだけ紹介されていたが、ここでもう少し内容を吟味してくことにしたい。【訳はDeepLによる。一部省略・改変あり】
  1. 4週間の親切介入(kindness intervention)によって、逆境に対する保存転写反応(Conserved Transcriptional Response to Adversity:CTRA)として知られるストレス関連免疫反応遺伝子シグネチャーの発現を減少させることができるかどうかを検証した。
  2. 南カリフォルニアに住む成人182人を対象とした研究である。 4週間にわたって他人に12の親切な行為を行うか、4週間にわたって自分自身に12の親切な行為を行うか、あるいは日々の活動を記録する(すなわち中立的な行為を行う)かに無作為に割り付けた。
  3. 21歳未満、および抗うつ薬を服用している者を除外するためのスクリーニングが行われた。抗うつ薬を服用している者は除外した。データは暦年(夏を含む)を通して行われた。参加者には、すべてのタイムポイントを完了するための報酬として100ドルが支払われた。研究研究補助者は、筆頭著者の監督下ですべての研究手順を実施した。参加者は、オンライン調査プラットフォームであるQualtricsを利用して、自己報告式の評価を行った。
  4. 親切な行為のコード化:行われた行為が実験的に割り当てられたプロトコルに沿っているかどうかを判断するためにプロトコルを遵守しているかどうかを判定するために、3人の独立した訓練された判定者(学部生研究補助員)が、参加者が書いた各類型行為の説明を評価した。行為について、それがプロトコルの遵守にどの程度関与しているかを評価した(評価者間を評価した(評価者間ICC = 0.99)。行為の説明はまた、以下の点でも評価された。ICC=0.64)、他者との相互作用(ICC= 0.83)、他者の物理的存在(ICC = 0.92)、デジタルメディアの使用(ICC=0.79)、自己ストレス軽減行動(ICC=0.57)、参加者自己健康促進行動(ICC = 0.82)であった。
  5. 行動は以下の尺度で評価された。社会的相互作用、自己健康促進、自己ストレス軽減、および努力については、1(まったく)から5(大いに)までの尺度で評価され、プロトコールの遵守、他者の存在、参加者の自己健康促進行動(ICC = 0.57)、および参加者の自己健康促進行動(ICC = 0.82)については、1(はい)または0(いいえ)でコード化された。
  6. コントロール参加者を除外し、欠損データを取り除いた後 審査員は150人の参加者から合計1,244の行為をコード化した。評価者間の信頼性は中程度から優れている(Koo & Li, 2016)。は、スケールスコアの評価を平均化するか、二項対立のカテゴリのコンセンサスを決定することによって統合された。(例: 固守している)。
  7. 行為内容コードは、平均尺度評価またはカウント変数として調査期間にわたって集計された。またはカウント変数として集計された。二次分析の解釈を容易にするため努力とアドヒアランスの連続的尺度を含む二次中和分析の解釈を容易にするため遵守度カウント値は、高い(割り当てられた12種類の行為のうち11種類以上の行為が行われた)とそうでない(10種類以下の行為が行われた)として中央値分割した、
 ということで、もとの論文をザッと読んでみると、
  • 実験参加者は高齢者ではなく一般の成人。
  • 親切行為については自己報告と、判定者(学部学生)による評価に基づく。
ということが分かってきた。なのでこの研究をもって「他人に親切にするという形で社会的つながりを持っている高齢者は、自分に親切にする高齢者よりも健康的で長生きできる」と結論するのは少々飛躍があるのではないかと思う。

 スティーブ・コールさんは上掲の研究で「つながりあり」のグループで炎症遺伝子の発現が抑えられた理由について、

それは人間があらゆる動物の中で最も社会的な生き物だから。進化の歴史の中で、弱い人間たちは協力しあい大きな動物を倒し食料にしてきた。だからこそ私たちの体の機能も、誰かとつながりを持つときに最もよく働くよう進化した。つながりを持つことは健康長寿に絶対に欠かせません。

とコメントしておられた。ま、「つながり」があることが悪いと言うつもりはないが、このコメント自体は『チコちゃんに叱られる!』でたまに登場する進化心理学モドキ、進化生物学モドキと似たところがあり、そっくり受け入れるには少々抵抗がある。
  • 「大昔の人たちはつながりを持ち、互いに協力しあいながら生き延びてきた」というが、そうではなく、ボス(リーダー)や有力者を頂点として、その配偶者や子ども、さらには奴隷を含めて構成されていたかもしれない。サルの群れなどもそうだが、集団の構成を決定づける最大の要因は、いかにしてインセストを避けるかということにある。これは、子育てとその後の親離れ・子離れも同様。
  • 「他人に親切にする」ということと、「他人と交流しながら集団で暮らす」ということは意味が異なる。また「親切」といっても、相手方が感謝する行為が親切なのか、判定員が親切行為だと判定すればそうなるのか、あるいは自分が「親切なことをした」と勝手に思い込めばそれでよいのか、かなり曖昧なところがある。


 次回に続く。