じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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「なんでカモの親子は子どもが後ろに並んで泳ぐの?」についての『チコちゃんに叱られる!』での説明。親ガモが楽になる理由はこれで説明できるが、子ガモが親ガモの後を泳ぐ理由にはなっていないように思う。↓の記事参照。 |
【連載】チコちゃんに叱られる! 「子ガモが一列になって泳ぐ理由」は原因と結果を取り違えているカモ/スリップストリーム 昨日に続いて、2月7日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
放送では、カモの親子が【の】子どもが後ろに並んで泳ぐのは「親も楽だから」であると説明された。生物流体力学を研究している望月修さん(東洋大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。望月さんは、映像から私と同世代のように見えたが、こちらの紹介記事によると、1952年生まれの私より2年若い1954年のお生まれだそうだ。
ということで子ガモが楽になる理由は説明できた。では、親ガモが1羽で泳ぐより隊列を組んだほうが楽になるのはなぜか?これについては皇居・千鳥ヶ淵でスワンボートを漕ぐことにより検証された。1台だけで漕ぐ場合と比較して、後ろに2台が連なったほうが楽に漕げることが分かった。但しその違いは漕いでいる人の主観に頼らざるを得ない。あくまでエンタメであるが、実験では放送では裁判所で読む宣誓書を使って、楽に漕げたことが偽りではないと証言された。 この現象を理論的に説明する次のようになる。
ここからは私の感想・考察になるが、スピードスケートや自転車競技で一列に並ぼうとするのは、しばしば「先頭の選手の後ろにつくことで風の抵抗力を避けようとしている」と解釈される。同様にカモの親子の場合も「親の後ろを泳げば水の抵抗力が減るから」と思われがちである。しかし、『曳航式水路』の実験で示されたように、親ガモの模型を動かすと、その後ろに置かれた子ガモの模型は何の動力が無くても親ガモの後ろに吸い寄せられるように動いていた。子ガモは自力では動けないのだからそもそも水の抵抗などあるはずがない【水の抵抗が発生するのはあくまで動いたあとの話。動くという現象の原因にはならない】。となればやはりスリップストリームが生じていると考えるべきであろう。 スリップストリームは、渡り鳥の群れがV字形の編隊を作って飛ぶことにも影響している。こちらにもそのような説明があった。但し同時に「先頭の鳥が空気抵抗を一身に受けてくれるので、後ろの鳥たちはあまりいっしょうけんめい羽ばたかなくてもよい。」という記述もあり、分かりにくくなっている。念のためCopilotに「渡り鳥の群れがV字形の編隊を作って飛ぶのはスリップストリームを利用しているためですか、それとも空気抵抗を減らすためですか?」と尋ねたところ、以下のような解凍尾をいただいた。 渡り鳥がV字形の編隊を作って飛ぶのは、空気抵抗を減らしながらスリップストリームを利用するためです。V字形の編隊を組むことで、先頭の鳥が風を切り裂き、後ろの鳥たちはその後ろを飛ぶことで、エネルギーを節約できます。後ろの鳥は先頭の鳥が作り出した上昇気流(スリップストリーム)に乗ることで、空気抵抗を減らし、より効率的に飛ぶことができます。この編隊飛行は、長距離移動する際に特に役立ち、群れ全体のエネルギー消費を減らすために重要です。さらに「スリップストリームが発生すれば結果的に空気抵抗が減るということですか?」と尋ねたところ、 ●そうですね、スリップストリームが発生すると、結果的に空気抵抗が減ります。V字編隊を飛行する鳥たちは、先頭の鳥が風を切って進むことで、後ろの鳥たちが空気抵抗を減少させた状態で飛行できます。このため、後ろの鳥はより少ないエネルギーで飛べるようになるのです。 という回答をいただいた。 私がまだ分からないのは、ひとくちに「空気抵抗」と言っても、「前方から受ける風の強さ」と「気圧が低いことによる空気抵抗の現象」は別ではないかという点。例えばジェット気流に逆らって飛ぶ飛行機は前者の影響を受けるが、別段ジェット気流に逆らったからといって気圧が高いところを飛んでいるわけではあるまい。 あと、水面で発生するスリップストリームは二次元的であるが、空気の中で発生するスリップストリームは三次元的であるはずだ(飛行機が飛ぶ原理?)。この違いもイマイチ分からない。 飛行機が飛ぶ原理については、飛行機はなぜ飛ぶか?【2019年10月9日の日記参照】で説明されていたがよく分からないところがあった【こちらに参考記事あり。】 。 今回の話でふと思ったが、新幹線のような車両でもスリップストリームが回避できている可能性がありそう。新幹線の車両は先頭ばかりでなく最後部も流線形にできている。最後部が流線形なのは単に終着駅に着いたあとで最後部を運転席に切り替えれば車両の向きを変えずに速やかに運行できるからだと思っていたが、今回の話から類推すると、もしかして最後部が流線形であることでその後ろにスリップストリームが発生することを防いでいる可能性があるのではないかという気がした。なお「流線形」についてはこちらやウィキペディアなどに詳しい解説がある。 さらに高速で走る自動車でもスリップストリームの影響があるのではないかと思って検索したが、こちらにちゃんと詳しい解説があった。 ●高速道で大型車がとなりを通過すると、小型車は引っ張られるような感覚を覚えます。これは大型車の車体に発生している負圧(スリップストリーム)の影響です。 というのは何度か体験したことがある。 さてここまでのところではスリップストリームの話題を取り上げてきたが、元の疑問である、 ●なんでカモの親子は子どもが後ろに並んで泳ぐの? の説明として「親も楽だから」というのは必ずしも正解になっていないように思う。この問題は、
このうち1.については『インプリンティング』による説明が最も妥当と思われるが、今回の放送では一言も言及されなかった。親の後ろを追いかける習性は陸上でも見られるわけだから、今回のような水上でのスリップストリームだけでは説明できない。ま、好意的に言えば、「子ガモは親ガモの後をついていく」ということを当たり前だとしたうえで、「後をついて泳ぐ時、なぜ一列になるのか?」を解説したものと言えそうだ。 でもって、上記2.については、「子ガモはスリップストリームを利用して楽に泳げるから」と説明できる。しかし、「親も楽だから」というのは結果的に発生した利点であり、原因ではない。幼稚園の遠足のように「一列に並んで歩きなさい」と指示するなら別だが、そうではなく、 ●親ガモは単に前に進んでいるだけ、子ガモは単にその後をついていくがスリップストリームにより結果的に一列になるだけ。それによって結果的に親ガモも子ガモも楽になる。 と考えるべきであろう。エンターテインメント番組として意外性を出したかったという意図は分かるが、原因と結果を取り違えているような印象を与えているように思う。 次回に続く。 |