じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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【インドネシアその46】キンタマーニ犬か、ただの野良犬か?

 昨日の日記で「バトゥール山外輪山でキンタマーニのコーヒーを味わう」という話題を取り上げたが、キンタマーニはコーヒーのほか、キンタマーニ犬(キンタマーニ・ドッグ)としても知られている。リンク先によれば、キンタマーニ犬の特徴は、
スピッツタイプの犬種で、目はアーモンド形で中くらいの大きさである。立ち耳・垂れ尾又は巻き尾でショートコート、毛色はブラック、ホワイト、アプリコットなどがある。体高は雄40〜55cm、雌45〜50cmの中型犬。性格は愛情深く忠実、勇猛果敢で、見知らぬ人に対しては心をなかなか開かず、激しく吠えることもある。ただし、半野良生活をしている犬は殆んどが人になれているため、吠えない個体も少なくない。しかし、機嫌の悪いときに触ろうとすると噛まれることもあるので、スキンシップを図るならば、犬の表情をよく見てから触るべきである。
となっていた。
 写真は、バリ島のウルン・ダヌ・バトゥール寺院の境内で見かけた2匹の犬。画像検索したところ、いずれもキンタマーニ犬によく似ており間違いないと思うが、ただの野良犬の可能性もある。ま、バリ島の寺院内にキンタマーニ犬でない犬がうろついているとしたらそのほうが珍しいかもしれない。

※Googleレンズでは、写真上の子犬は「バンゲーオ犬(Bang Kaew Dog)の子犬と考えられます。/原産地と歴史: タイ北部ピチット県のバーンゲーオ村が原産で、300年以上前に地元の寺院で飼育されていた僧侶の犬が祖先とされています。」と判定された。また白い犬のほうは「画像に写っているのは、ホッキョクグマまたは大型の白い犬種(例:マレンマ・シープドッグやグレート・ピレニーズ)である可能性があります。」と判定された。いくらなんでもホッキョクグマはないだろう。

2025年09月2日(火)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「ひょっとこの口の向き」/「向かって左、右」

 昨日の続き。8月29日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。今回は、大幅に脇道にそれるが、放送で取り上げられたひょっとこの口の向きと、「向かって左、向かって右」という表現について考察する。

 さて、放送では、ひょっとこの口の曲がり方には、左向き、右向き、正面、口の部分無しといったパターンがあるとして、以下の例が紹介された。
  • 大林ひょと子:左
  • 日向ひょっとこ夏祭り:左
  • 茨城県・石岡囃子:右
  • 東京都・江戸里神楽:真ん中
  • 福島県・高柴デコ祭り:無い(お面の口の部分が空いている
また、ChatGPTで調べてもらったところ、以下のような情報が集まった。
  • 神楽で使われる「ひょっとこ」のお面は、**ほぼ例外なく横向き**。
  • 「左向きか右向きか」は地域差があり、石見神楽や出雲神楽では両方見られ、岩戸神楽では右向きが多いなどの傾向がある。
  • **正面口のひょっとこ**は、神楽よりも「ひょっとこ踊り」などの民俗舞踊に多い。


 ここまでのところで新たに2つの疑問が生じた。
  1. ひょっとこのお面の口先の左右の向きに地域差が出たのは、面師の作風か、それとも祭祀的な理由か?
  2. 左右の向きは、「向かって左、向かって右」という場合と、当事者からみて「左、右」という場合では正反対になるが、今回の放送やChatGPTの回答では特に断り無しに「向かって」を前提としていた。この「前提」は暗黙の了解事項になっているのだろうか?
 まず1.について、ChatGPTからは以下のような回答をいただいた。

いいところに注目されましたね。
ひょっとこのお面の「口の左右の向き」の地域差は、学術的に厳密な統一説明があるわけではありません。ただ、民俗学や面の研究者が指摘する要因を整理すると、だいたい次のような理由が重なっています。

◆## ひょっとこの口の向きに地域差が出た理由
  1. **火吹き男の由来と方角信仰**
    • ひょっとこは「火男(ひょっとこ)」=火吹き竹をくわえて火を吹く男に由来するとされます。
    • 火やかまどは家の中で位置が決まっており、**火を吹く方向(左に吹くか右に吹くか)が地域で固定**していた可能性がある。
    • 特に神楽は神事と結びつくため、\*\*「東を向いて吹く」「南を向いて吹く」\*\*など、方角信仰と関係した面作りになったと考えられます。
  2. **面師(お面を作る職人)の作風**
    • 面は各地域の面師が手彫りで作ったため、**左右どちらを向かせるかは工房ごとの伝統や美意識**に依存しました。
    • その工房の型が神社や神楽座に伝わり、次第に「この地域では右口」「この地域では左口」と固定化したと考えられます。
  3. **舞い手の利き手との関係**
    • 神楽では舞い手の多くが右利きです。
    • **右利きだと左口の方が竹や扇をくわえやすい**、あるいは逆に**右口の方が観客から見やすい**といった実用的な理由で左右が決まったケースもあります。
  4. **地域ごとの神楽の役割の違い**
    • ひょっとこは単なる道化役だけでなく、**火を扱う・竈を守る・滑稽に舞う**といった役割が地域で異なります。
    • その役割の違いに応じて「左口の面が縁起よい」「右口の面が見映えがよい」と地域で受け継がれていった可能性があります。
  5. ## まとめ

    **左右の違いに全国統一の規則はなく**、
    • 方角信仰
    • 面師の作風
    • 舞い手の利き手
    • 地域ごとの役割の違い
    といった要素が組み合わさって、結果的に地域ごとに「右向きが多い」「左向きが多い」といった傾向が生まれたと考えられます。

 ということで、左右の向きに関しては必ずしも一貫した法則性は無さそうに見えた。なおこのWeb日記では過去に、 について考察したことがある。

 さらに、大分の日田「ひょっとこ踊り」や宮崎の「ひょっとこ祭」)でなぜ正面口が好まれたのかについて尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。

いいご質問です。神楽では横口が主流なのに、日田(大分)の「ひょっとこ踊り」や宮崎の「ひょっとこ祭」では **正面口のひょっとこ** が主役として広く定着していますね。これにはいくつかの理由が考えられます。

◆## 正面口が好まれた理由
  1. **舞踊・祭礼の「見せる芸能」だから**
    • 神楽におけるひょっとこは「火吹き男」=実用的な姿を模した面なので横口が自然でした。
    • 一方、「ひょっとこ踊り」や「ひょっとこ祭」は観客に笑いを届けることが第一目的。
    • 横口だと横顔で表情が分かりにくい場面があるため、**正面から見ても滑稽さが伝わる正面口**が選ばれたと考えられます。
  2. **笑いを強調するためのデフォルメ**
    • 正面で口を尖らせる形は、子どもや観客にも「おかしな顔」と一目で分かる。
    • 横向きだと「火を吹く意味」は伝わっても「笑い顔」としての直感的なユーモア性は弱い。
    • 踊りの主眼が「可笑しさ」にあるため、**分かりやすい正面のデフォルメ**が普及した。
  3. **地域的な独自発展**
    • 日田や日向では、ひょっとこは「火男」というより「道化役」「笑い神」として信仰され、豊作や夫婦和合の象徴にもなりました。
    • このため「火吹き男」としてのリアリズムは薄れ、**観客に向けて笑わせる顔=正面口**が主流化したと考えられます。
  4. **観客参加型の祭りとの相性**
    • 日田や宮崎のひょっとこは、踊り手がユーモラスな動きをして観客を巻き込みます。
    • 正面口だと観客と「目が合う」「顔を突き合わせる」効果が強く、**参加型の祭礼に適していた**のも理由です。

  5. ◆## まとめ
    • **神楽 → 火吹き男の名残 → 横口**
    • **踊り・祭礼 → 観客に笑わせることが主目的 → 正面口**

    つまり、日田や宮崎で正面口が好まれたのは、ひょっとこが「神事の道具」から「笑いを届けるキャラクター」へと変化した結果だと考えられます。


 次に2.の疑問:

左右の向きは、「向かって左、向かって右」という場合と、当事者からみて「左、右」という場合では正反対になるが、今回の放送やChatGPTの回答では特に断り無しに「向かって」を前提としていた。この「前提」は暗黙の了解事項になっているのだろうか?

についてのChatGPTの回答は以下の通り【要約・改変あり】。。


◆### 基本の考え方
**「左向き」「右向き」=お面を正面から見た時(=観客から見た時)の向き** → つまり、観客が見て「口が左に尖っている」なら「左向き」、右なら「右向き」と表現するのが一般的です。
### 例
* 観客から見て口が左に突き出している → **左向き**
* 観客から見て口が右に突き出している → **右向き**

◆### 注意点
* 面師や地域によっては「お面をかぶった人から見ての左右」で表現する場合もあり、その場合は逆になります。
* ただし民俗学や神楽面の研究論文・図録では、**観客から見た向きで統一**されることが多いです。

 最後に、外国でどう表現されているのか尋ねてみた。回答は以下の通り。


とても鋭いご質問です。
「左向き」「右向き」という言い方は、日本語に限らず世界の言語で**どの立場から見た左右か**がしばしば問題になります。結論から言うと、**「向かって(観客・見ている人から見て)」が暗黙の前提になることが多い**のですが、分野や文化によって例外もあります。
  1. 日本語の場合
    • 美術・工芸・舞台芸能の分野では **観客から見た向き** が暗黙の前提。
      * 例:「能面の口が右に寄っている」=観客から見て右。
    • ただし職人や演者の現場では「かぶる人から見た左右」を使う場合もあり、混乱が起きやすい。
  2. 英語の場合
    • **Art / Theatre / Iconography** では、日本と同じく **viewer’s perspective(見る人の視点)** が前提。
      * 例:art catalog に "head turned to the left" とあれば「観客から見て左」。
    • * ただし解剖学・工学・地図学などでは **object’s own perspective(対象自身の左右)** が基準。
      * 例:anatomical left/right は患者本人から見た左右。
  3. 中国語の場合
    • 美術や民俗芸能の文脈では **観者的角度(観る人の角度)** が普通。
    • 医学や武術の文脈では **本人基準**(自分の左=左手側)が基本。
    • よって日本と同じく、文脈で使い分けが必要。
  4. 西洋美術史的な習慣
    • 古典絵画や彫刻のカタログでは、ほぼ一貫して **viewer’s left/right(観客から見ての左右)**。
      * 例:「the figure holds a sword in his right hand」=絵を見ている人が右にある手。
  5. ## まとめ
    • **芸能・美術・図像学 → 観客(見る人)基準が暗黙の了解**
    • **医学・解剖学・工学 → 対象物自身の左右が基準**
    • 日本以外でも同じく、分野によって基準が変わるので「left/right」というだけでは誤解が生じやすく、学術的な場面では必ず **"viewer’s left" / "proper right"** のように注釈をつけるのが普通です。



 次回に続く。