| 
 
 【連載】チコちゃんに叱られる! 「台風を番号で呼ぶ理由」
 
 昨日に続いて、8月29日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
 
ひょっとこってなに?
日本が台風を番号で呼ぶのはなぜ?
なぜ新橋の「ん」は「m」?
 という3つの話題のうち2.について考察する。
 
 さて、台風の話題であるが、まずは1998年12月12日の日記にこのことに関連した記事があったので以下に再掲しておく。
 
12/13のNHKニュースによると、東アジア各国が台風に共通した名前をつけることになったという。これまで台風の名前は、日本独自の「1号、2号」といった番号のほか、欧米の人名がつけられていた。今回の取り決めでは東アジア各国がローテーションで発生順に名前をつけるといい、1番目はカンボジア、2番目は中国、日本は5番目のローテーションとなる。ローテーションにあたった時にどのような名前をつけるかはそれぞれの国により任されており、韓国では動物の名前、香港は女の子の名前、日本はなんと、星座の名前をつけるという。但し、これは公海上を通る船舶などへの案内に使われるものであり、日本国内向けには従来の発生順の番号で報道されることになるらしい。しかし、「やぎ座台風が北上中..」とか「水瓶座台風が各地に大水害をもたらしました...」なんて言われるようになったら、ちょっと変な気がする。国際的な取り決めではなぜ番号だけという案にならなかったのだろうか。
 ということで、当時の私の疑問は、
 
 ●国際的な取り決めでは、台風はなぜ番号ではなく名前で呼ばれているのだろうか?
 
 という点にあった。今回の放送内容に基づいてこのことを改めて考えてみるに、おそらく、
 
 ●台風の基準が国・地域で異なっている。なので発生順に番号をつけようとすると、国・地域で発生個数が異なるため、同じ番号が違う台風につけられて混乱する恐れがある。いっぽう名前で呼ぶことにすれば、同じ台風なら必ず同じ名前で呼ばれるし、名前がつけられなかった「弱い」台風については、必要に応じてそれぞれの国・地域で別の名前や番号で呼べばよい。
 
 という理由で、国際的な取り決めとしては番号をつけないことになったのではないかと思われた。もちろん、台風の基準を統一すれば番号をつけても混乱は起こらないだろうが、それぞれの国・地域における暴風雨災害には固有の特徴があり、無理やり統一してもメリットはない。
 
 ということで放送内容に戻るが、放送では「日本の台風にも名前はある!でも番号のほうが都合がよかったから」が正解であると説明された。台風に関する業務を担う福田純也さん(気象庁大気海洋部)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
 
 
そもそも台風とは、北西太平洋および南シナ海で熱帯低気圧が発達し最大風速がおよそ17m/s以上になったものとして定義されている。
台風は、東アジア、東南アジア、グアム、サイパンなどにも大きな被害をもたらすが、国際的に台風の情報を発表するのは日本の気象庁が担っている。
台風のほか、ハリケーンやサイクロンにも人の名前がつけられている。
日本で台風に番号がつけられるようになったのは1953年。もともと日本では台風に番号はなく単に「台風」、あるいは「九月二十四日の颱風」(1926年の新聞記事)というように上陸した日にちで呼んでいた。
終戦後は、『キャスリーン台風』(1947年)とか『ジェーン台風』(1950年)というように日本で報じられる台風には英語の名前が使用されていた。
しかし、当時、台風の命名権はアメリカにあったものの、台風の観測は各国で行うことになっていたため、アメリカが台風だと認めないと名前がつかないという問題があった。じっさい1950年から1951年の記録を見ると、アメリカの観測では『Anita』や『Delilah』という名前がついていたのに日本では台風でないとされた例や、逆に日本では台風であると観測したのにアメリカの観測では名前がつけられなかった例があった。
[※]デジタル台風の資料では1951年には21個の台風の記録があるが、うち4個は『NO-NAME』となっていて名前がつけられていなかった。
「熱帯低気圧が近づいている」よりも「台風が近づいている」と発表するほうが防災意識を高めてもらえる。
1953年からは日本では台風を番号で呼ぶようになった。1953年6月の新聞記事には「女性名やめ第何号 台風の呼び方変る」という見出しの記事があり、同じ面で台風第二号の被害が報じられていた。
気象庁としても、英語名を気にせず番号で呼んだほうが調査・整理しやすいというメリットがあった。この番号呼びは日本で広く浸透した。
国際的には2000年、それまでアメリか軍がつけていた英語名に替わってアジア名がつけられるようになったが、「ダムレイ」、「ティエンマ」、「キロギー」、「インニョン」、「コイヌ」、「ボラヴェン」、「サンバ」、「ジェラワット」、「イーウィニャ」、「マリクシ」というように、14か国・地域から挙げられた合計140個の名前を繰り返し使用することになっている。
アジア名については、
といったルールがあるとはいえ、それ以外の縛りがないので多様なカテゴリー・発音の名前になっている【日本では星座の名前】。音節が短く発音しやすい
アルファベットで9文字以内
他の国で不適切な意味を持たない
日本ではすでに番号づけが定着しているため、覚えにくく発音しにくいアジア名は一般には使われていない。
 ここからは私の感想・考察を述べる。冒頭にも記したように、台風の名前については過去日記にも記述があるように以前から知っていた。特に記憶に残っているのは『2004年台風23号でアジア名はTOKAGEとなっていた。
 
 放送では台風委員会にも言及された。リンク先にもあるように、2018年8月現在、14の国及び地域が加盟しているが、台風が頻繁に上陸する台湾は含まれていない。ChatGPTに理由を尋ねたところ、以下のような回答をいただいた【抜粋】。
 
 
上記の説明から「台湾は加盟できないのに、香港やマカオは加盟しているのはなぜか?」という疑問が生じるが、ChatGPTによれば、「一つの中国」政策(外交的な制約)
台風委員会は国連機関(ESCAP・WMO)の下部組織なので、国連での「中国代表権問題」の影響を受けます。
 1971年に中華人民共和国が国連代表権を得て以来、台湾(中華民国)は国連やその関連機関に加盟できなくなりました。
 そのため台湾は「独立の国家」としては台風委員会に参加できない状況です。
代替的な国際協力の枠組み
台湾は気象観測や台風情報で重要な位置にありますが、台風委員会の正式メンバーではないため、主に 世界気象機関(WMO)の技術的ネットワークや、米国・日本などとの二国間協力を通じて情報交換を行っています。
 例えば台湾中央気象署(CWB)は、非公式ながらも国際的に台風データを提供・共有しています。
政治的中立性の確保が難しい
台風委員会は「災害防止・科学協力」という技術的な枠組みですが、加盟には国連関連機関を通じた手続きが必要です。
 その過程で「国家承認」問題を避けることができず、中国の反対により台湾は加盟できないままとなっています。
 
 
 
とのことであった。台湾も防災上は極めて重要な地域ですが、中国は台湾を「中国の一部」と主張している一方で、台湾に国際機関で独自の加盟資格を与えることには強く反対しています。
香港やマカオは「中国に属している」と明確に位置づけられているので、中国政府が容認しているのに対し、台湾は「国家としての扱いになる」とみなされるため、中国が拒否しているのです。
 あと、「台風とは無縁のように思われるモンゴルはなぜ加盟しているのですか?」と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた【抜粋】。
 
台風そのものは来ないが「残骸低気圧」の影響を受ける
台風は日本や中国沿岸に上陸したあと、勢力を落として温帯低気圧に変わり、北東アジア内陸へ進むことがあります。
 この「台風の残骸低気圧」がモンゴルまで達し、大雨を降らせたり洪水や地すべりを引き起こすことがあるのです。
 つまり「台風の直接被害はないが、間接的な影響は受ける国」です。
 
気象観測網の一部として重要
台風の進路予測には、台風が変質して北方に移動する過程のデータが必要です。
 モンゴルはアジア大陸の北部に位置し、台風が温帯低気圧化したあとの挙動を観測する拠点として重要です。
 そのため WMO(世界気象機関)や ESCAP にとって「モンゴルを組み込むことで気象観測の精度が上がる」というメリットがあります。
 
国際協力・防災の枠組みとしての意義
台風委員会は「台風だけ」を対象にしているわけではなく、洪水や暴風雨など水災害全般の対策も活動範囲に含めています。
 モンゴルは毎年「夏の集中豪雨や洪水被害」に悩まされており、防災の国際協力に参加する意義があります。
 
 中学の時に地学・天文・気象の部活動に参加したこともあり、気象ネタには関心があるが、今でも違和感を覚えるのは、「熱帯低気圧が台風に変わった」という表現である。そもそも台風は熱帯低気圧であり、発達しても熱帯低気圧でなくなるわけではない。
 
 このことについてYahoo検索では以下のようなAI回答があった。
 
「弱い熱帯低気圧」とは、かつて気象庁が使用していた予報用語で、最大風速が17m/s未満の熱帯低気圧を指していました。
なお、台風の大きさを表す表現も変更されており、こちらに、この表現は、風が「弱い」だけで、雨量は台風に匹敵するか、それ以上になることもあるにもかかわらず、人々が「雨も弱い」と誤解し、警戒を怠る原因となることがありました。
 特に、1999年8月に神奈川県玄倉川で発生した水難事故では、「弱い熱帯低気圧」による大雨が原因で13人が死亡する大惨事となりました。この事故をきっかけに、気象庁は防災上の観点から、誤解を招きやすい「弱い熱帯低気圧」という表現を廃止することを決定しました。
 2000年6月1日以降は、「弱い熱帯低気圧」という表現は使われなくなり、最大風速が17m/s未満の熱帯低気圧は単に「熱帯低気圧」と呼ばれるようになりました。同様に、台風の強さや大きさを示す「弱い」「小さい」「並み」といった表現も廃止されました。これは、過小評価につながる表現を避け、人々の防災意識を高めるための変更です。
 
かつては、大きさを表す表現に「ごく小さい」「小型(小さい」「中型(並の大きさ)、強さを表す表現に「「弱い」「並の強さ」という分類が存在しましたが、1999年8月に発生した玄倉川水難事故(神奈川県足利上郡)を機に、「弱い」「小さい」といった表現が過小評価や誤解を懸念し、2000年6月より当表現が廃止されました
と解説されていた。 
 ちなみに私が中学・高校の頃には、
 
 ●6〜8月の台風は迷走型で弱いものが多い。9月に入り太平洋高気圧が東に後退すると、偏西風に乗って、大型の強い台風が日本に上陸しやすくなる。
 
 という感覚があったが、最近は地球温暖化による気候変動のせいか、6月〜8月でも日本を直撃する台風が多くなり、梅雨前線を刺激して大雨を降らせることが多くなってきたように思う。本州に上陸する台風は9月に多いなどというのはもはや通用しない。
 
 
 次回に続く。
 
 |