じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 明け方に目が覚めた時は、ベランダから空を眺めるようにしているが、薄雲に覆われていたり、すでに空が明るくなっていたりして、星空が見えることは滅多に無かった。5月10日の朝は、久しぶりに晴れていて、東の空に木星と金星(木星の左下)が見えていたが、撮影をしているうちに雲に隠されてしまった。5月7日に比べると、木星と金星の見かけの位置はだいぶ離れてきたようだ。

2022年5月10日(火)



【連載】チコちゃんに叱られる!「子どもが秘密基地を作りたがる理由」と、もうウンザリのトンデモ「進化心理学」

 昨日に続いて、5月6日に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 小学生が黄色い帽子をかぶるのはなぜ?
  2. ライオンのオスにたてがみがあるのはなぜ?
  3. 【CO2削減のコーナー 「あなたの常識をくつがえすかも!?子どもの大発見!」】太陽が西から昇って西に沈む場所がある
  4. なぜ子どもは秘密基地を作りたがる?
という4つの話題のうち、最後の4.について考察する。

 子どもが秘密基地を作りたがる理由について、岡村さんは「どうしても入ってほしくない領域というのが子どもの頃からある。自立、...」と答えたが、チコちゃんから「ボーッと生きてんじゃねーよ!」と叱られてしまった。このほか、インタビューでは「怒られたとき逃げる場所みたい」、「おやつを守るため」などと答えていたが、正解は「命を守る練習がしたいから」であるとされた。

 明治大学で進化心理学を研究している石川幹人教授によれば【長谷川により一部要約改変あり。「石川説」を紹介したナレーション部分を含む】、
  1. 子どもたちが秘密基地を作りたがるのは、本能的に命を守る練習をしているから。
  2. 人間を初め生き物には、命の危険が迫ったときにとる行動が3種類あり、それは「戦う・逃げる・隠れる」である。この3つのどれかを選んで行動に移し、自分の命を守ろうとする。
  3. もちろん人間にも、命を守ろうとする遺伝情報が備わっているので、危険に対する準備をしないと気が済まないようになっている。
  4. 【ナレーション】子どもたちは、本能的に命を守る予行練習をするが、まだ体が発達していないため、力が弱く、走るのが遅い子どもにとって、命を守るには、「戦う・逃げる」ではなく、敵に見つからないように隠れることが最も生き残れる方法。
  5. 子どもにとっての命を守る練習は、隠れる練習。つまりは秘密基地遊び。
  6. 【ナレーション】秘密基地を作る時、大人を敵に見立てたり、架空の敵を作ったりして隠れたりしませんでしたか。これは、自分たちが設定した世界で、命を守る練習をしているのです。
ということで、放送ではこのあと、埼玉県ふじみ野市の「ふじみ野どろんこ保育園」、神奈川県秦野市の一般家庭、東京都杉並区の公園の片隅にある植木の陰、の3箇所で作られている「秘密基地」が紹介されていた。




 ここからは私の感想・考察になるが、石川先生の「進化心理学」による「説明」はチコちゃんの番組では、 というように少なくとも2回あったが、いずれもエビデンスに乏しく、大昔の人間にとって適応的と考えられている行動が「遺伝情報」に「刷り込まれて」、現代人の行動の原因になっているという、コジツケに過ぎないように思われた。今回の「秘密基地」の「説明」も同様のロジックであった。この論法で言えば、
  • 子どもたちがかくれんぼをするのは、本能的に命を守る【=隠れる】予行練習
  • 子どもたちが鬼ごっこをするのは、本能的に命を守る【=逃げる】予行練習
  • 子どもたちが喧嘩をするのは、本能的に命を守る【=戦う】予行練習
  • 子どもたちがジャングルジムに登るのは、本能的に(木に登って)食物を得るための予行演習
  • 子どもたちが甘いお菓子を好むのは、本能的に(カロリーの高い甘味のある)食物をより多く摂取するための予行演習
  • 子どもたちがボール投げをするのは、本能的に(石を投げて獲物を捕まえる)狩りをするための予行演習
  • 子どもたちがアクションゲームに熱中するのは、本能的に命を守る【狩りをしたり敵と戦ったりする】ための予行演習
というように、大昔の人たちがやっていた適応的な行動にこじつけることで何でもかんでも「説明」できてしまう。しかし、これらは「こじつけ」の域を出るものではなく、例えば、上掲のような行動の個体差(頻繁に行動する子どもと、そうでない子どもの違い)を説明できない(まさか、遺伝情報の差で説明するのではあるまいな)。

 今回の「秘密基地遊び」についても、科学的に分析をするのであれば、まずは、どのくらいの年齢の子どもがどういう場所でその遊びをしているのか、本当に「秘密」であり「隠れる」ことが目的となっているのかについて、しっかりと調査する必要がある。私の孫たちもそうだが、子どもたちは小型のテントを作ってやると、とても喜んで、テントの中におもちゃを持ち込んだり、中に入って出てこなかったりすることがある。これは「隠れる」というより、自分たちの家を作るという遊びであって、どうみても命を守ろうとする予行練習とは思えない。似たような行動は、大雪になった時につくる「かまくら」遊びでも見られる。
 また、岡村さんの「どうしても入ってほしくない領域というのが子どもの頃からある。自立、...」という解答は不正解とされたが、ある程度の年齢になると、親に干渉されない空間を作ろうとするようになる。
 要するに「秘密基地遊び」といっても、秘密にする必要のあるものから「おうち遊びごっこ」のようなものまでいろいろなタイプがあり、「本能的に命を守る練習をしているから」などと一口でこじつけられるようなものではない。

 チコちゃんの番組では、本来は諸説があるにもかかわらず、視聴者の受けを狙って意外性のある「説明」だけを「正解」とするような傾向が散見されるが、今回のようなトンデモ「進化心理学」的コジツケはもうウンザリ。もう少し、クリティカルシンキングの目を養うような多角的なアプローチを重視してもらいたいところだ。