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4月7日の岡山は前日夜から15時頃まで雨が降り続き、積算降水量は40ミリとなった。その後、日没の頃には雲が切れて、19時過ぎの西の空には金星と水星が輝いていた。
水星は4月12日に東方最大離角となるが、金星が遙かに高いところに見えているため、水星と金星が接近することはない。 |
【連載】チコちゃんに叱られる!『食パンを焼くとおいしくなるのはエントロピー増大の法則』とChatGPTの反論 4月7日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
さて、食パンの話題であるが、私は、過去の放送:
●「『エントロピーの法則』があるため」に「もっちり、ふんわり感」が生じる。 という新たな説明があった。山田昌治先生(工学院大学)によれば、「もっちり感」が生じるのは、パンの中のデンプンが水分を取り込むためである。パンを焼くと表面の水分が(一部は蒸発するが)中心に集まってくるようになるが、これはエントロピー増大の法則によるもの。すなわち、パンを焼くと表面は高温で中心部は低温となって温度差が生じる(整理された状態)。そうするとエントロピー増大の法則によって熱は高音部分から低音部分に移動する。熱は(パンや空気を)伝わるよりも、水分を伴うと早く移動できる、つまり表面の温まった水分がパンの中心に集まるようになり、もちもちの水分となる、と説明された。 放送ではエントロピー増大の法則の例として、
ここからは私の感想・考察になるが、エントロピーに関してはこのWeb日記でも何度も取り上げたことがあり、いくつか抜粋すると、
エントロピー増大の法則は自然界の全ての存在に適用されるが、それに抗うように整理整頓を続けているのは生物であると言える。このあたりは福岡伸一先生がしばしば強調されており、たぶんそうだろうとは思う。但し、 ●エントロピー増大則で大事なのは「断熱系」という言葉で、エントロピー増大則は無条件で成立するわけではなく、断熱系、すなわち外界と熱のやりとりがない環境でのみ成立する。 という点に留意する必要があり、こちらの日記で指摘したように、熱力学におけるエントロピー増大則をそれ以外の諸現象と結びつけるには慎重な配慮が求められるように思われる。でなければ、あくまで喩え話、あるいはメタファーとしての使用にとどめるべきであると思う。 今回の放送でも例示された「整理整頓された部屋が乱雑になっていく」というのは喩え話であって、 机の上のモノが乱雑化するのは、あくまでそれを使っている人の行動の結果である。エントロピー増大則が働くのは、その机が何百年、何千年も経った時の経年変化の範囲であるが、その場合でも、机の上に溜まるホコリとか、外からの紫外線、さらに空気の流れ、酸化、引力などの働きを考慮するべきである。いっぽう、使っている人の行動によって机の上が乱雑化するのはエントロピー増大則とは関係が無い。机の上で作業をする時に、その時その時で机の上のモノを邪魔にならないように動かす時、本来の置き場所と異なるところへランダムに動かすために乱雑になる。なので、机の上にディスプレイとキーボードしか(もしくはノートパソコン1台のみしか)置かれていなければ、乱雑化することは決して無い。というように考えるべきであろう。 元の話題に戻るが、今回の放送では、
●パンが焼かれると、その熱で水分子が活発化してパン内部のほうに移動するため、もっちり感が増す というように説明することも可能ではないかと一瞬思われた。しかし、焼く前のパンの水分は、外部と内部では均一化しており、むしろパンの外側のほうが乾燥しているような気もする。であると、熱で活発化すればするほど、パン内部の水分子はより乾燥した外側のほうに移動するはずでこれでは「温かくなった表面の水分がパンの中心に集まる」ことを説明できない。やはり、熱の移動に伴って水分も移動すると考えるべきなのだろうか、よく分からない。 ということで、ChatGPTに ●食パンを焼くと、パンの外側の水分が中心部に移動して「もっちり感」が増すと言われています。なぜ水分は中心部に移動するのでしょうか? と質問したところ、 食パンを焼く際に、高温で焼くことによって表面が乾燥し、パンの内部から水分が蒸発しています。この過程により、パンの内部の水分濃度が高くなり、外側の水分が内側に移動します。という回答をいただいた。さらに、 ●この現象にはエントロピー増大の法則が働いていますか? と尋ねたところ、 この現象にはエントロピー増大の法則が働いています。という回答をいただいた。 上記のやりとりで気づいたが、私は「パンを焼く」というのを「買ってきたパンをトースターで焼く」という意味で使っていたが、ChatGPTのほうは、パンを作るという意味で「焼く」と理解していたようであった。そこで、 ●買ってきたパンをトースターで焼く場合、パン内部の水分はどのように移動しますか? と尋ねたところ、 買ってきたパンをトースターで焼く場合、外側の表面が高温で焼かれるため、表面から内部に向かって水分が移動します。具体的には、高温によってパンの表面の水分が蒸発し、その水蒸気が内部に向かって移動します。と説明してくれた。 さらに、 ●この場合の水分の移動は、エントロピー増大の法則に従っていますか? と尋ねたところ、 トースターで焼いたパンにおいても、内部から外部への水分の移動や水分濃度の均一化が起こり、その過程にはエントロピー増大の法則が働いています。と回答された。しかしここで指摘されているのは、「内部から外部への水分の移動や水分濃度の均一化」であって、放送内容とは逆方向の移動になっている。熱エネルギー自体は外部から内部に移動するだろうが、水分子はやはり内部から外部に移動するのではないだろうか? ますます分からなくなってきた。 ということで、もう1つ、 ●トースターでパンを焼いた場合、パンの外側から内部に向かって水分が移動するという説がありますが、これは本当でしょうか? と尋ねたところ、 トースターでパンを焼く場合、パンの外側から内部に向かって水分が移動するという説は一般的には正しくありません。実際には、トースターで焼いた場合、パンの表面から水分が蒸発して表面が乾燥し、表面と内部の水分の差が増えることで、内部から表面に向かって水分が移動する傾向があります。という回答をいただき、今回のチコちゃんの説明は否定されてしまった。 次回に続く。 |