じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 半田山植物園の西の谷花壇では秋に咲いていたマリーゴールド【写真左下】が抜き取られ、一時的に更地になった【写真右下】。
 順路沿いの最初に位置する花壇では少なくとも年に3種の花が植えられており、今年の場合は、

●チューリップ→ヒマワリ→マリーゴールド

というローテーションになっていた。マリーゴールドの代わりにコスモスが植えられる年もある。

 残念に思うのは、まだ充分に花が観賞できる状態でも時期が来ると抜き取ってしまうことだ。もっともこの花壇では次の年の春のためにチューリップを植え付ける必要があり、いつまでもマリーゴールドを残しておくわけにはいかない。
 こういうローテーションで一年中何らかの花を咲かせておくのもアリだとは思うが、私自身はそれぞれの草花の発芽・成長・開花・結実の変化を観察できるイギリス庭園楓の多年草花壇のほうを好む。


2024年11月24日(日)





【連載】チコちゃんに叱られる! 「おそろいにしたくなるのは島国に移住した日本人の不安が高いから」という胡散臭い説明

 昨日に続いて、11月22日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. コンソメスープの「コンソメ」ってなに?
  2. 教室の窓が左側にあるのはなぜ?
  3. 仲よくなると「おそろい」にしたくなるのはなぜ?
という3つの話題のうち、残りの3.について考察する。

 放送では、仲よくなると「おそろい」にしたくなるのは「まだ仲よくないから」が正解であると説明された。臨床心理士の藤井靖さん(明星大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。なお藤井さんは、2022年12月2日初回放送の「心が折れるとは?【←実際は「心を折る」】の時にも登場されている。
  1. おそろいにすることで私たちは仲よしだよということを視覚的に確かめ合っている状態。つまり完全には仲よくなっていない。
  2. なぜおそろいにするかを知るには、まず仲よしとはなにかを理解する必要がある。アメリカの心理学者バーナード・マインスタインは、お互いが仲よくなっていく過程を、お互いが求め合う要素であるStimulus(刺激)、Value(価値観)、Role(役割)をピラミッド状に積み重ねた三段階で分類した(SVR理論)。これによって真の仲よしとは何かが分かる。
    • Stimulus:仲よしの初期段階で求めるのは刺激。初対面の相手の外見・性格・行動・社会的評価など表面的な魅力から相手を見定める。
    • Value:さらに仲よくなってくると、相手に求めるのは同じ価値観。考え方・興味などが自分に似ているかを重視。価値観を見定める状態。おそろいにするのはこの理論の第2段階。つまり仲よくなっていく途中の段階。おそろいにすることで相手と同じ価値観を持っている、私たち仲よしだねと、仲よしを目で確かめ合っている状態。
    • Role:仲よしの最終形。相手を理解し合いお互いの足りない部分を補い合う。息ぴったり、ツーカーの仲だと定義できる。
  3. 放送では自称「仲よしさん」5組に来てもらって話を聞いたが、心理学的な真の仲よしはそのうちの1組だけであった。
  4. 私たち人間は、S→V→Rという過程を経て仲よしの最終形のR(役割)を目ざすようにあらかじめインプットされている。【大昔から】人間は群れを作り、言葉を発しなくても互いに足りない部分を補う役割を獲得したことで、厳しい生存競争を勝ち抜いてきたと考えられている。
  5. 真の仲よしでないと生き抜いてはいかれない。親密度が深ければ深いほど「おそろいなので確認しあう」ことは不要になる。
  6. 真の仲よしでない段階でおそろいにしたくなる原因は不安。人には不安遺伝子というものがある。特に日本人は不安だらけの国民。不安遺伝子の保有率は、日本人80%、中国人72%、韓国人71%、フランス人46%、ドイツ人39%となっていて日本人が一番高い。【出典はこちらと思われるが、同一著者同一年の別の文献の可能性もあり未確認】】
  7. 日本人に不安遺伝子が多いのは地続きの大陸から海に囲まれた島国に移動したため、全体的に不安が存在し、さらに日本は自然災害が多いことが影響している。
  8. 今の仲よし状態もいつ解消されるか不安で不安で仕方がない。その不安を解消するために編み出されたのが「おそろい」。つまりまだ真の仲よしになっていない不安だらけの日本人が「私たち仲よしだよね」と確認しあって安心したいから。

 なお、上掲の「不安」に関連して、「“私はワクワクしている”と叫びながら変な踊りを踊れば不安は解消されるか?(2023年9月15日初回放送)」でヘンテコな踊りを踊っていたディレクターは現在は転職し、地方で彼女と仲よく暮らしているという余談があった。彼女とおそろいの服を着ている写真からみて、まだ不安は続いていると推測された。
 最後に藤井さんから、

不安遺伝子の多い日本人は、神経伝達物質・セロトニンが外国人に比べて少ない状態であると言われている。日光を浴びたり、ストレッチやウォーキングなど日常生活を少し見直すだけでセロトニンの量が増え、不安な気持ちになりにくくなる効果がある。

という補足説明があった。




 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、まず私自身、50年以上にわたって心理学に関わってきたが、「アメリカの心理学者であるバーナード・マインスタイン」というお名前や『SVR理論』についてはこれまで一度も耳にしたことがなかった。さっそくネットで検索してみたがウィキペディアには項目がなく、『SVR理論』についても出典をたどることができなかった。私の勉強不足なのか、単に私とは研究分野が違うからなのかは不明だが、いずれにせよ、諸説あるなかで、

●ある一人の心理学者がこう言ったから正解はこうだ。

というのでは何とも心許ない「説明」である。

 ネットで「SVR理論」を検索したところ、多くは恋愛関係の発展に関わる一般向けの説明であった。しかし、おそろいの服を着るのは、恋愛中の男女ばかりではあるまい。同性の友人、時には親子でおそろいの服を着ることもある。別段、S→V→Rというように発展しなくてもよいような関係も含まれているように思う。

 上掲の4.〜8.の説明はかなりあやしい。疑問に思った点を挙げさせていただくと、
  • 4.の「私たち人間は、S→V→Rという過程を経て仲よしの最終形のR(役割)を目ざすようにあらかじめインプットされている。」というが、大昔から現代に至までの集団はそのような仲よし関係で結ばれていたとは考えにくい。むしろリーダーを中心とした支配関係で成り立っていたのではないか。
  • 6.の外国人との比較だが、「不安遺伝子の保有率は、日本人80%、中国人72%、韓国人71%」という数値を見ると日本人が一番多いことは確かだが、10%にも満たない差だけから「日本人は不安だらけ」だとか「島国に移動したり自然災害が影響したために不安が高い」と解釈するのはトンデモであって全く根拠に欠ける。


 ということで、全般的に胡散臭さを感じざるを得なかった。

 ま、心理学にもいろいろな立場があり、私とは異なる立場であってもそれなりに役立っているのであればそれで構わないとは思うが、科学的な根拠が不確かな説は何年経っても発展せず、まことしやかな解釈の繰り返しに終わってしまうように思う。藤井さんの解釈への批判ということではなく、世間一般の俗説に対する警鐘として、
  • 大昔の人間にとって有用であった性質が遺伝子に記憶された
  • 脳科学用語を多用することによる権威づけ
という2点が含まれている説明は特に胡散臭いものであることを強調しておきたい。