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【連載】サイエンスzero「左?右?生命の不思議な“しかけ”」(1) 8月18日に初回放送された、NHK『サイエンスzero』、 ●左?右?生命の不思議な“しかけ” のメモと感想。 ちなみに、左右のミステリーをめぐる話題は2024年1月8日に初回放送された『ヒューマニエンスでも取り上げられており、以下に感想・考察がある。 【2024年1月8日放送】「“左と右” 生命を左右するミステリー」ということで、別番組とはいえ、今回の放送でどこまで新しい情報が提供されるのかが注目された。 放送ではまず、国や文化が違っても、右利きが9割、左利きが1割という比率は変わらないこと、そのことが科学者にとって大きな謎になっている紹介された。ちなみに、番組MCの浅井理アナは左利き。井上咲楽さんは右利きで、両親と4姉妹のうち3人も右利きだが、4女だけは左利きで芸術的な才能があるらしい。 放送では続いて、田村大也さん(京都大学)によるゴリラの研究が紹介された。田村さんの調査フィールドはガボン共和国の熱帯雨林。この森にはニシローランドゴリラが生息している。ゴリラの利き手の研究をすることで、利き手の起源について新しい知見が得られると期待されている。 人の利き手の起源に関するこれまでの有力な説は言語の獲得であった。 ●Stuart J. Leask and Timothy J. Crow (2001).Word acquisition reflects lateralization of hand skill. Trends Cogn Sci, 5(12), 513-516. で論じられたように、脳で言語をつかさどるのは左脳であり、左脳は右半身に指令を出すことから、言語を獲得した人は右利きになったと考えられてきた。 しかし、2009年、 ●T. Humle and T. Matsuzawa (2009).Laterality in Hand Use Across Four Tool-Use Behaviors Among the Wild Chimpanzees of Bossou, Guinea, West Africa. American Journal of Primatology, 71, 40-48. という研究で、右手で茎を持ってシロアリを釣り上げて食べる行動が見られたことから、道具の使用が利き手起源ではないかと言われるようになった。 田村さんの研究はそれよりもさらに遡ったところに利き手の起源を見つけようとするものであった。ゴリラは言語を持たないし、野生下では道具も使わない。それでもなお利き手を示すのであれば、右利きの進化的起源は言語や道具使用より前の行動ということになる。田村さんが2年半かけて、ゴリラがアフリカショウウガの髄を食べる行動を調査したところ、群の21頭のうち、右利き7割、左利き3割であることが確認された。このことから利き手の起源は、言語や道具の使用よりもっと前の摂食時における『両手協調操作』にあるのではないかという可能性が示唆された。 次回に続く。 |